コーヒータイム -Learning Optimism-

本を読むということは、これまで自分のなかになかったものを取りこみ、育ててゆくこと。多読乱読、英語書や中国語書もときどき。

DXとはなんぞや?について学ぶための入門書〜亀田重幸他『いちばんやさしいDXの教本』

なぜこの本を読むことにしたか

なぜわたしはこの本を読むために時間を使うのか。

①世界の見方を根底からひっくり返す書物、

②世界の見方の解像度をあげる書物、

③好きだから読む書物

この本は②。私が働いている会社が最近よくDXのことを話題にして、専任担当者までおいたけれど、そもそもDXとはなんぞ? ということを知るために読んだ。

 

本書の位置付け

デジタルトランスフォーメーション(DX)の初心者向け解説書。著者たちが実際に会社でDXをすすめてきた経験やノウハウに基づき、業務を変え、社風を変え、データを中心に会社を運営していくステップ、たどるべきフェーズ、それぞれの段階にひそむ罠について、わかりやすく説明しているのが特徴。本書の中心テーマは「デジタルデータを利用した新たな価値の創出」である。

 

本書で述べていること

①デジタイゼーション(Digitization、アナログ情報や業務のデジタル化)、②デジタライゼーション(Digitalization、ビジネスフロー全体のデジタル化)に続く段階として、③DX(Digital Transformation)は新しい価値を創出する段階。

経済産業省が2018年12月に発表した「DX推進ガイドライン」によれば、DXとは「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズをもとに、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」と定義されています。

一言で表せば、「ITを使って変化を起こし、売り上げや利益を伸ばす仕組みをつくること」といってよいでしょう。

DXを進めるうえで注目したいのは、ビジネスで活用できそうな重要なデータを握っているかどうかであり、社内業務流れの見える化、社内アンケートやインタビューなどで課題特定ができる。仕様策定、稟議書作成、システム開発、テスト、リリースなどの具体的業務についても、本書でひとつひとつ丁寧に説明している。

 

感想いろいろ

著者らはDXの失敗原因を「壮大すぎる」「自前が大好き」「広がらない」の3つに分けているけれど、首がもげそうになるほどうなずいた。

それな。ほんとそれな。

社内に各部署の独自開発システムやデータベースが乱立して、活用されないまま放置されたり、開発部署以外存在自体知らなかったり、どうすればアクセスできるのかはっきりしなかったりするのがオチですよ本当。

プロジェクト準備中に「スローガン」「DX専任組織」「分厚い計画書」を見かけたら要注意です。

DXプロジェクトを開始した際に「ウチは変わってるから」「自社システム」「オンプレ」という言葉を見かけたら要注意です。

DXが「ある部署だけ」「ある業務だけ」という状態を見かけたら要注意です。

全部当てはまっていてもう苦笑いするしかない。まあ株主総会や株式市場へのアピールとしてあえて派手にぶちあげている可能性もあるけれど。

とはいえコロナ禍でテレワークするにあたり、承認に上長捺印が必要になる文書がどんどん「電子サインでもOK」「PDFをメール添付送付でOK」になってきたのはとても助かる。

著者はまた「従来のシステムは、いかに機能を盛り込むかで業務効率化を目指すものだったのに対し、DXを目指すシステムは、いかにデータを活用して業務効率化を図るかで設計する」と書いているけれど、ここにも落とし穴が潜んでいると思う。気づけば議論が機能中心となってしまい、全体像を見落としてしまうのはよくあることだから、わかりやすく全体像と目標を示した1枚のスライドを用意して、常にふりかえるのは悪くないやり方だと思う。

DXの根幹は「データドリブン」、すなわち得られたデータをもとに次の意思決定、アクションを起こしていくという考え方である、という指摘は目から鱗であった。私のいる会社でDXを進めるにあたり、この発想でものを考えたことはなかったと思う。プロジェクト進捗報告のためのダッシュボードを自動作成する仕組みが(結果として)該当するかもしれないが、ダッシュボードの入力情報をさらにビッグデータ(というほどのデータ量ではないが)として解析、今後に活かすのは、たぶんやっていない気がする。この考え方を知れたのは本書のおかげ。

データドリブンでは意思決定の一部をITに任せることで、人間の意思決定を後押しし、人間が決断することのストレスを軽減しているのです。

デジタイゼーションでアナログデータをデジタルデータに変え、デジタライゼーションでデータ収集の流れをつくり、ビッグデータを収集し始めることでデータドリブンに意思決定ができ、会社を変革できる、というわけです。

経済産業省が出しているDX推進のきっかけになったレポートを参考までに。

DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~(METI/経済産業省)