コーヒータイム -Learning Optimism-

18歳のわが子に読書をすすめるために、まずわたしが多読乱読しながらおすすめを探しています。英語書や中国語書もときどき。

<英語読書チャレンジ 4/100> Karen McQuestion “The Moonlight Child”

思いつきで英語の本100冊読破にチャレンジ。ページ数100以上、ジャンルはなんでもOK、最後まできちんと読み通すのがルール。期限は2023年3月末まで。

Karen McQuestionはアメリカの人気小説家だけれど、彼女の作品を読むのはこれが初めて。Amazonで高評価であり、満月に照らされた煙突のある家が描かれた表紙がとても美しいので興味を抱いた。

読んでみるとなかなか面白い。英語表現はわかりやすくて日常会話表現がたくさんあり(“Heading out now.” =「いってきます」、“Thanks, but no thanks.” =「けっこうね、でも結構よ」)、場面描写はしっかりしてイメージしやすい。虐待や薬物乱用などの社会問題をとりあげながら、説明しすぎずほのめかす程度にとどめ(しかし分かる人にはゾッとする)、小説としての面白さと両立させているバランス感覚も見事。おそらく小中学生がメインの読者層だと思うが、全体的に勧善懲悪の物語であり、善とされるものと悪とされるものとが、わかりやすく対照的に描写される。

 

小説は18歳で失踪した娘モーガンの帰りを3年間待ち続ける母親の描写から始まる。ここから一転、主人公シャロンの視点にうつることで、これから始まる物語がモーガンの失踪と関連することを示唆する。

シャロンは善良で親切、おっとりした性格のシングルマザー。定年退職後、アメリカ中部、五大湖に面するウィスコンシンの高級住宅街で一人暮らしをしている。シャロン自身はそれほど裕福ではなく、家はもともと来客用コテージであったものでさほど広くないが、彼女はここでの生活に満足している。シャロンの裏庭はシュゼットとマシュー・フレミングの家に面している。働きざかりで10代の一人息子をもつフレミング家との交流はあまりないが、変わったところのないごく普通の家庭に思えた。

月食を見るために遅くまで起きていた冬の寒い夜、シャロンはフレミング家のキッチンで5、6歳の女の子が洗い物をしているのを窓越しに見る。翌日、企業関連法規専門の弁護士をしている40代の娘エイミーから連絡があり、CASA(Court Appointed Special Advocates。ボランティア団体であり、メンバーは定められた研修を受け、虐待や育児放棄で傷ついた子どもたちの保護観察などを行う)対象となっているニキータという少女をしばらく預かってほしいと依頼される。シャロンニキータに自分が見たものを相談し、二人はフレミング家の秘密を探りはじめるーー。

 

この小説は章ごとに視点が切り替わる。それぞれの登場人物の過去、考え方、行動、現状をどう見ているかを重ねることで、ひとつの出来事をさまざまな面から立体的にながめる。これはバージニア・ウルフが《ダロウェイ夫人》で試みた「人物の主観的心情描写をひたすら重ね合わせることで物語を浮かび上がらせる」手法に似ている。

読み進めていくと、アメリカらしい価値観がこれでもかと詰めこまれているのがわかる。シャロンは愛情深いながら芯が強く、ほんとうの祖母のように、若者らしい迷いをみせるニキータを導く。ニキータは逆境から這い上がり、勇気ある行動により彼女を支援してくれる人々を勝ち取り、自立への一歩を踏み出す。フレミング家の息子ヤコブは太っちょのいじめられっ子ながら、親切心と正義感をもち、弱きものを救うために力を尽くす。フレミング家に隠されていた少女ミアは無垢で従順な存在として、ついにほんとうの家族にめぐり合う。エイミーをはじめとする専門家たちは親切で思いやりがあり、ニキータやミア、さらにはヤコブのあるべき権利が侵害されないよう全力でサポートする。一方、冷酷で無慈悲な人々には、それ相応の報いが与えられる。読後感はさわやかだ。

……ひねくれ者の私は、つい、似たようなテーマでも読後感最悪といわれる『隣の家の少女』を読みたくなってしまうが、後悔しない自信がないため、心に余裕があるときに読む用にとっておくつもり。