コーヒータイム -Learning Optimism-

18歳のわが子に読書をすすめるために、まずわたしが多読乱読しながらおすすめを探しています。英語書や中国語書もときどき。

<英語読書チャレンジ 9 / 365> A.Bourgogne “Be Bilingual - Practical Ideas for Multilingual Families”

思いつきで英語の本100冊読破にチャレンジ......しようと思ったけれど目標を365冊にすることに。ページ数100以上、ジャンルはなんでもOK、最後まできちんと読み通すのがルール。期限は2025年3月20日

本書タイトルは直訳すれば『バイリンガルになるー多言語家庭のための実用的アイデア』。

なぜこの本を読むことにしたか

なぜわたしはこの本を読むために時間を使うのか。

①世界の見方を根底からひっくり返す書物、

②世界の見方の解像度をあげる書物、

③好きだから読む書物

この本は②。タイトル通り、バイリンガルを育てるために今すぐ実践できることを、著者の実体験をもとにつづる。

 

本書の位置付け

著者の母親はスウェーデン語とフィンランド語を流暢に操るバイリンガルで、父親はフィンランド語話者。父親は伝統的なフィンランド家庭出身であり、スウェーデン語は好まれず、著者は家ではフィンランド語のみを話したという。著者が産まれた1970年代当時、子どもをバイリンガルとして育てることは言語発達を遅らせると考えられていたという事情もある。

著者自身はフランス人の夫をもち、バイリンガリズム修士課程で研究した。その結果、バイリンガルは子どもの発育に悪影響を及ぼさないと考え、自分の娘たちにはバイリンガルになってほしいと望むようになった。

しかしさまざまな家庭と交流する中で、一般家庭の親は難解な学術書を読みこなせないし、理論はわかっても実際に何をどうすればいいのかわからないことに著者は気づいた。著者は自分が学び、研究してきた、バイリンガルについての学術研究の内容をやさしく解説し、実践的なやり方にまで落としこむため、本書をまとめた。

 

本書で述べていること

本書のプロローグに結論が述べられている。

「子どもの非日常言語(子どもが暮らす環境で日常的に使われる言語以外の言語)の習熟度は、親がかけた労力にそのまま比例する」

身も蓋もないが、ふだん使われない言語を身につけるのはそれほど大変であり、親は子どもをその言語が話されている国(たいていは両親いずれかの出身国)に頻繁に連れて行ったり、その言語の話者と引き合わせたり、本を読み聞かせたり、音声教材を使用したりと、さまざまな工夫と労力をかける。

 

バイリンガルはあなたの家庭にとってどういうものか? この質問は大変重要である。あなたが定めたゴールが実現方法を決めるからだ。バイリンガルが複数言語を同じ状況で使うことはめったになく、使い分けるのが普通で、求められる習熟度はちがう。日常的に使用される現地の言葉が支配言語になることがほとんどだ。

子どもが自発的にある言語を使うようになるためには、だいたいの目安として、起きている間の少なくとも30%以上の時間(週25時間程度)この言語にさらされる必要があるとの研究結果がある。書き言葉を学ぶならさらに時間をかけなければいけない。

会話が理解できればいいのか?

とりあえず話せるようになってほしいか?

複数言語を流暢に話してほしいか?

さらに踏み込んで、読み書きができてほしいのか?

まずはそれぞれの言語に望むレベルを決める。かけなければならない時間がだいたい予測できる。それが家族にとって現実的かどうかも。バイリンガルになるには意図的にある言語を日常生活でたくさん使用しなければならず、それが習慣化するし、子どもはある年齢になればーーいつかは専門家でも意見が分かれるがーーネイティブなみの発音を身につけるのが難しくなる。耳が聞き慣れない音を拾えなくなるためだ。

次に忘れてならないのは、言語はあくまでコミュニケーションのための手段であること。とくにトリリンガル以上を目指す家庭ではなおさら気をつけなければならない。

 

具体的方法としては、①家族それぞれで話す言語を固定する(たとえば父親は英語で母親は日本語)、②場所により使う言語を固定する(たとえば外では地元言語を話すが家では両親の言語にする)、③時と場合で使い分ける(たとえば学校では公用語だが学校の外では地元言語)がよく使われる。①が最もよく使われるけれど、子どもが言語にさらされる時間をのばすために②を取り入れるなど、家庭により柔軟に使い分かればよい。

 

感想いろいろ

著者は言語学者の研究とともにバイリンガルトリリンガルの家庭の実例をたくさん紹介しており、非常に読みやすい。

おどろいたことにトリリンガル家庭はかなり多いらしい。両親が国際結婚して、国外に住んでいるような場合である。作中にはイタリア人の父親とフィンランド人の母親がスイスのフランス語圏に住むという例がでてきた。スイスではイタリア語とフランス語のコミュニティをみつけるのが容易であり、彼らの子どもはこの2言語を母語同然に操る。(うらやましい!)

一方、フィンランド語も流暢でコミュニケーションには充分だが、子どもがフィンランド語への興味を失わないよう、かなり工夫しなければならなかったという。フィンランドに頻繁に里帰りする、フィンランド母語にするほかの家族とつきあう、フィンランドにいる親戚と定期的にSkypeで会話するなど、時間もお金もとられることが多い。

They may pick up words and get used to the sounds of the language, but they don’t learn to speak it unless people interact with them in that language, and they need it for communication.

ーー子どもたちは(両親の会話から)単語を拾いあげ、発音に慣れるかもしれない。しかし、(まわりの人々が)その子とその言語でかかわり、コミュニケーションのためにその言語が必要になるのでなければ、話せるようにはならない。

Try to increase input for the minority languages, but don’t forget the importance of a solid foundation in their strongest language, which will help them with the two others as well.

ーー(日常生活で使わない)非主要言語を学ぶ機会は増やすようにしたいが、子どもが一番得意な言語について、きちんとした土台を築くことも忘れてはならない。ほかの2つ以上の言語を学ぶにあたり、助けになるからだ。

さまざまなアプローチがでてくるが、私としては、地域社会では言語A、家庭では言語B、特定活動(テレビ、読書、海外旅行など)は言語C、というアプローチが一番実践的に思う。

 

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同じくバイリンガル子育てに奮闘する父親による経験談。ブログ記事参照。

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