コーヒータイム -Learning Optimism-

18歳のわが子に読書をすすめるために、まずわたしが多読乱読しながらおすすめを探しています。英語書や中国語書もときどき。

<英語読書チャレンジ 20 / 365> P. Dashupta “Very Short Introductions: Economics”

英語の本365冊読破にチャレンジ。ページ数は最低100頁程度、ジャンルはなんでもOK、最後まできちんと読み通すのがルール。期限は2025年3月20日

本書は未邦訳(だと思う)。タイトルはそのまま『経済学』。

なぜこの本を読むことにしたか

なぜわたしはこの本を読むために時間を使うのか。

①世界の見方を根底からひっくり返す書物、

②世界の見方の解像度をあげる書物、

③好きだから読む書物

本書は②。経済学という学問がどういうものなのか説明するための小冊子であり、私がこれを読むのは投資勉強のためである。

 

本書の位置付け

本書はオックスフォード大学出版局から出ているVery Short Introuctions(VSI)シリーズのうち『経済学』をとりあげた1冊。VSIは難解なテーマを初学者向けに解説する入門書として書かれたものであり、わかりやすく読みやすい。

 

本書で述べていること

Economics in great measure tries to uncover the processes that influence how people’s lives come to be what they are. The discipline also tries to identify ways to influence those very processes so as to improve the prospects of those who are hugely constrained in what they can be and do. The former activity involves finding explanations, while the latter tries to identify policy prescriptions.

なかなか和訳しにくいが、ようするに経済学の目的は、人々の生活のあり方がどのようにしてある状況になるのかを解き明かし、困窮している人々の境遇を改善するための政策立案に役立てることにある。遠回しに "those who are hugely constrained in what they can be and do." ーー「職業や能力に著しく制限がある人々」という言いまわしをしているが、ようするにーー経済学的にいえばーー生きていくためのお金を充分稼ぐことができず、生活保護などの福利厚生のお世話になる必要がある人々のことだ。

19世紀以前の経済学は文章による論述が中心で、ある特異なできごとが、ある時代、ある地域で起きたのは(たとえば産業革命が18世紀にイングランドで起きたのは)なぜなのかを問うものであった。20世紀後半から、統計数字と数学モデルを用いて、異なる時代、異なる地域で起こるできごとの背後にある共通点や要因をさぐる研究が増えてきたという。

経済的活動をするにあたり、社会制度は重要な役割を果たす。信用、所有権などがそれだ。なかでも信用は大変重要である。信用が保たれる仕組みを説明するための理論としてナッシュ均衡(Nash equilibrium)がある。「自分以外のプレイヤーが全員『約束を守る』戦略をとるであろう」「ならば自分も約束を守るほうが得をする」とプレイヤー全員が考えることがそれである。

本書の後半では、すぐれた財産としての【知識】に焦点をあてる。【知識】は【科学 (science)】と【技術 (technology) 】に区別することができ、前者は私有財産(たとえば特許)、後者は公共財産としてとりあつかわれる。欧米諸国の優越性は先進技術によるものが大きいとされており、科学者や技術者たちにどのように研究開発に力を入れてもらうかが本書後半のメインテーマ。

 

感想いろいろ

先進国と発展途上国のちがいをもたらすもののひとつとして "institution" (制度) が考えられる、という話からはじまり、経済活動を行うにあたり信用(すなわち商売相手がお金を持ち逃げしないという信頼)が大切である、先進国は法律により信用を守らせるが発展途上国は社会規範に頼ることが多い、というふうに論理展開していくのはいかにも欧米らしい。

信用を裏切られたとき、先進国は裁判所に訴え出ることができるけれど、発展途上国はコミュニティの規範を破ったことによるコミュニティ構成員からの罰ーーいわゆる村八分などーーに頼らなければならない。規範を破ったことがまず知れ渡らなければならないため、発展途上国ではプライバシーがあまり重視されず、だれもがコミュニティ構成員を監視できる状態にある、という、なかなかおもしろい説明があった。たしかに相手を信用できなければどこまでも監視するしかないわけで、従業員監視にどこまでコストをかけるかはすべての会社経営者が頭を悩ますところ。しかし、相互監視がうまくいくのは家庭や小さな村程度で、人口1000万人を越えるような都市部ではどうあっても無理だし、しかもコミュニティ全員が参加するような組織犯罪には無力である(だから発展途上国には汚職が多い)。

 

あわせて読みたい

なぜ欧米諸国はほかの地域を植民地支配し、イギリスで産業革命が起きたかという点を考察した本。読書感想もおいておく。

『銃・病原菌・鉄(上)』(ジャレド・ダイアモンド著) - コーヒータイム -Learning Optimism-

『銃・病原菌・鉄(下)』(ジャレド・ダイアモンド著) - コーヒータイム -Learning Optimism-

マジの経済学教科書はもっと分厚いけれど読み応えがある。

なぜ最低賃金が安いままなのか理解するために『マンキュー入門経済学』 - コーヒータイム -Learning Optimism-