コーヒータイム -Learning Optimism-

本を読むということは、これまで自分のなかになかったものを取りこみ、育ててゆくこと。多読乱読、英語書や中国語書もときどき。

【おすすめ】<英語読書チャレンジ 78 / 365> W. Stixrud & N. Johnson “The Self-Driven Child” (邦題『セルフドリブン・チャイルド』)

英語の本365冊読破にチャレンジ。原則としてページ数は最低50頁程度、ジャンルはなんでもOK、最後まできちんと読み通すのがルール。期限は2027年10月。20,000単語以上(現地大卒程度)の語彙獲得と文章力獲得をめざします。

子育ては試行錯誤の毎日であった。

  1. 親に自分の考えを否定されまくりマイクロマネジメントよろしく日常生活から進学先まですべて指図された記憶しかない(もちろん親の考えを無理矢理押しつけられるまでがセット)
  2. 逆に言うことを聞いてもらえた記憶はない
  3. 口下手で考えを言語化するのがどうも苦手
  4. 基本思考がネガティブ後ろ向き
  5. 人づきあいが苦手

と三拍子どころか五拍子揃うわたしが、

  1. 子どもをありのまま受け入れたい、条件付きでない愛情を与えたい、自己肯定感を育みたい、自分自身のやることをコントロールできるのだという自信をもってもらいたい
  2. 子どもの言うことをちゃんと聞きたい
  3. 子どもに自分自身の考えを表現するのにじゅうぶんな言葉(理数系言語含む)を教えたい
  4. 子どもにポジティブに前向きになってほしい
  5. 人と積極的に交流してそれを楽しんでほしい

と、それまでの自分自身が受けてきた影響を全否定するようなやり方に挑戦するのだから、それはそれはしんどい。そもそもなにをどうすればいいのか自分の中に参照事例がない。だから手当たり次第に子育て本や心理本を手に取るしかなかった。

この本はその中の一冊。マイクロマネジメントが大嫌いなのに親のやり方を知らず繰り返してしまうわたしにはきっと役立つと思い読んだ。邦訳タイトルは『 セルフドリブン・チャイルド 脳科学が教える「子どもにまかせる」育て方』。

読み進めた中で一番刺さったのは【親にできるのは、子どもを支配することではなく、子どものモチベーションをうまくみつけだして、子どもが自分であれこれするのをサポートしてあげること】という考え方。わたしのやり方は【子どもを支配すること】が前提にあると気付かされたのは痛かった。【脳科学的には、状況をコントロールできないと感じるときに多大なストレスがかかる】のに、わたしはそのストレスを毎日我が子に強いていた(なんならわたしがイライラしているときは逆に我が子に気を遣わせた)のだから。

なぜこの本を読むことにしたか

なぜわたしはこの本を読むために時間を使うのか。

①世界の見方を根底からひっくり返す書物、

②世界の見方の解像度をあげる書物、

③好きだから読む書物

本書はわたしにとっての①が満載。大当たりといえる。

 

本書の位置付け

本書は育児本に分類されるが、神経科学と発達心理学の重要研究についてさわりを知るにも役立つ。

本書のメッセージは、「親の役割は、子供が望まないことを強制するのではなく、判断力が身につくように、自主的に考え、行動する方法を子供に教えることだ」ということである。ただし子供に全部丸投げするのではなく、【充分な情報にもとづく判断】をすることが肝要で、必要な情報を子供に与え(もちろん前提として与えられた情報を理解できるだけの言語能力と基礎的考え方を教え)、判断を下すサポートをするのは親の役割である。

研究によれば、状況をコントロールできていないと感じるときに脳は過大なストレスを受け、長期間にわたればうつ病摂食障害などになることもあるという。このような状況を避けるべき、子供たちの健全な精神を育むために、強制一方の育児をやめるために、親が具体的に取りくむべきことについても紹介する。

 

本書で述べていること

Without a healthy sense of control, kids feel powerless and overwhelmed and will often become passive or resigned. When they are denied the ability to make meaningful choices, they are at high risk of becoming anxious, struggling to manage anger, becoming self-destructive, or self-medicating. Despite the many resources and opportunities their parents offer them, they will often fail to thrive.

(意訳)健全なコントロール感(注: 物事や自分自身をコントロールしているという感覚)がなければ、子どもたちは自分が無力で、打ちのめされたと感じ、しばしば受身になり、諦めてしまう。自分自身で意味ある選択をする能力がなければ、子どもたちが心配性になり、怒りを制御することに苦労し、自暴自棄になり、沈んだ気分を癒そうとして酒や薬物乱用に手を出すリスクが高まる。そうなれば親がいくら資源や機会を与えたところで、子どもたちは成功から遠ざかりかねない。

脳科学的にいえば、判断能力を司る大脳の前頭前皮質(prefrontal cortex)が成熟するのは25歳前後、感情を司る部位が成熟するのはさらに遅れて32歳前後になる。

しかしもちろんそれまで大人が代わりに判断しなければならないというわけではない。逆だ。前頭前皮質をどんどん使うことで判断能力を鍛えることができる。とくに思春期には大脳が著しい成長をみせる。親の役割は子どもに判断材料を提供すること、子どもの判断や選択を尊重してサポートすること、そして、子どもが "enjoy = 楽しむ" ことを親業の最優先事項に据えることである。

感想いろいろ

この本を読んでいて、思い出したことがある。長らく忘れていた記憶。わたしは母親に「間違わせて」と頼んでいた。たぶん高校生のころ。どちらかが泣いていた気がする。両方かもしれない。

母親はわたしが「間違い」をしないよう先回りして全部決めたがる人で、わたしは「間違えてもいいからわたしに決めさせて、お母さんが決めないで」と訴えかけていた。結局それが聞き届けられることはなかったと思う。母は相変わらず高圧的で支配的で、わたしは相変わらず無気力で諦観的だった。

社会人になってから何年か経ち、上司に「あなたは人の言うことを聞き入れない」というようなことを言われた。「あなたは自分で間違えなければ学ばないタイプだ」と。そうかもしれない。わたしは間違える権利を奪われていたのだから。

この本にでてくる親御さんたちは、わたしの母親によく似ている。子どもの判断力を信用せず、子どもの代わりに「間違えないように」決めたがる。本人たちはそれが子どものためになると信じて疑わないだろう。だが子どもの立場から言わせてもらえば、親から毎日毎日言葉や態度で【あなたは信用するに値しない、私の言うことだけ聞いていなさい】というメッセージを伝え続けられるは、あらゆるメリットを吹き飛ばしてあまりある。

あわせて読みたい

子どもに必要なのは罰則ではなくお手本をみせてやることだと述べた『子どもは罰から学ばない』も良書。読書感想をおいておく。

<英語読書チャレンジ 77 / 365> P. Dix “When the Adults Change, Everything Changes: Seismic Shifts in School Behavior” (邦題『子どもは罰から学ばない』) - コーヒータイム -Learning Optimism-

子どものやることに腹立たしい思いをするとき、実は自分自身がしたかったのにできなかったことを思い起こしているせいかもしれない、という鋭い指摘を提起した良書『自分の親に読んでほしかった本』も。

<英語読書チャレンジ 75 / 365> 【おすすめ】 P. Phillipa “The Book You Wish Your Parents Had Read” (邦題『自分の親に読んでほしかった本』) - コーヒータイム -Learning Optimism-