コーヒータイム -Learning Optimism-

本を読むということは、これまで自分のなかになかったものを取りこみ、育ててゆくこと。多読乱読、英語書や中国語書もときどき。

<英語読書チャレンジ 91-92 / 365> 趣味で読む全米防火協会 (NFPA) 規格 - NFPA59 / NFPA59A

英語の本365冊読破にチャレンジ。原則としてページ数は最低50頁程度、ジャンルはなんでもOK、最後まできちんと読み通すのがルール。期限は2027年10月。20,000単語以上(現地大卒程度)の語彙獲得と文章力獲得をめざします。

今回は『キャプテン・ソルティの消防隊のための賢者の書』を読んだときに趣味で調べた海外消防事情や、アメリカの消防関連基準であるNFPA  (National Fire Protection Association、全米防火協会) Codesの続き。関連記事はこちら。

<英語読書チャレンジ 39-40 / 365> B.Gaskey “ Captain Sally’s Book of Fire Service Wisdom” - コーヒータイム -Learning Optimism-

<英語読書チャレンジ 52-54 / 365> 趣味で読む国際防火基準 (International Fire Code、IFC) / NFPA 10 / NFPA 30 - コーヒータイム -Learning Optimism-

<英語読書チャレンジ 55-56 / 365> 趣味で読む全米防火協会 (NFPA) 規格 - NFPA13 / NFPA 72 - コーヒータイム -Learning Optimism-

<英語読書チャレンジ63-65 / 365> 趣味で読む全米防火協会 (NFPA) 規格 - NFPA20 / NFPA22 / NFPA24 - コーヒータイム -Learning Optimism-

<英語読書チャレンジ 88-90 / 365> 趣味で読む米国石油協会 (API) 規格 - API RP 2001 / API RP 2218 - コーヒータイム -Learning Optimism-

 


NFPA 59: Utility LP-Gas Plant Code

Utility LP-Gas Plantは、公益事業液化石油プラントのこと。液化石油ガスを気化し、下流のガスパイプライン事業者に供給するための設備がこれにあたる (*1)(*2)。この規格ではとくに腐食対策に力を入れて記述している(*3)。消防設備についてはなぜか "shall be determined by an evaluation"、すなわち評価をしたうえで決めなければならないとしており、消防設備の種類によっては自動起動でなければならないとしている。きびしい。

(*1) タイトルに”Utility”(公営)とあるが、地方自治体などの公営設備のみではなく、10以上のユーザーがあるガスパイプライン事業者にガス供給していれば対象になる模様。アメリカでも民営化の波があり、”Utility”はかつての名残だろうか?
(*2) NFPA59の規制が適用されるプラントは基本的にNFPA58の対象外だが、設備容量が4000ガロン (15.14 m3) 以下であればNFPA58も参照しなければならない。
(*3) 改訂版ごとにどのような内容が追加・削除されたのか、理由とともに冒頭にまとめられている。腐食対策の記述が追加されたのは2012年版から。時代の変遷を感じ取ることができるとともに、規格は生きものなのだと実感する。

NFPA 59A: Standard for the Production, Storage, and Handling of Liquefied Natural Gas (LNG)

液化天然ガス設備について、設備配置、機器等設計、排水設計、消防設備、必要となる検証等について包括的に定めた設計規格。NFPA 59"A"とあるように、もともとはNFPA59の付属規格。液化天然ガスの専用設備が増えるにつれて、改訂が重ねられ、内容充実してきた(*1)

構成はNFPA101にすこし似ている。5章と19章に設備立地を決めるにあたり必要となる安全評価要求があるが、それぞれの章で方法論が異なる。AHJ (Authorities Having Jurisdiction、管轄権限を持つ当局) が認めるならば、19章規定をもって5章規定を代替できる (*2)

5章では、万一事故が起きたときには、❶自動停止 (automated surveillance and detection) ができるならば自動停止するまで、❷手動停止ができるならば10分間、❸停止装置がないならば容器が空になるまで、漏洩がつづくと考える(*3)。対象となる "Hazardous Fluid"は、”A liquid or gas that is ignoble, toxic, or corrosive”と定義されているので、実質、LNG生産設備内で使用されるいわゆる有害物質全てが対象。

(*1) 2~3年に1度改訂版が出されているのに、なぜか関連法規で「NFPA59A 2001年版に従う」と明記されているせいで、2001年版と最新版の両方を参照せねばならない困った規格でもある。
(*2) 章番号からもわかるように、19章は近年追加された比較的新しい安全評価方法論を扱う。漏洩事故が起こっても、プラント敷地境界まで規定値以上のガスや熱や爆風圧がとどかないかどうかが評価される。万一規定値をオーバーすれば、プラント敷地を拡大するか、設備規模を縮小しなければならなくなりかねない。いずれも投資判断に直接影響する。
(*3) アメリカのLNG産業黎明期、クリーブランドでタンクからのLNG漏洩により数百人が死傷する重大事故が起きている。このためかLNG関連規制は厳しくなりがち。また前出の安全評価のほか、すべての設備でFire Protection Evaluation (火災評価)やらSecurity Assessment (保安評価)やらの提出が求められる。