コーヒータイム -Learning Optimism-

18歳のわが子に読書をすすめるために、まずわたしが多読乱読しながらおすすめを探しています。英語書や中国語書もときどき。

[テーマ読書](未完 28 / 100)世界最高の文学100冊を読んでみた

ノルウェー・ブック・クラブが選出した「世界最高の文学100冊」(原題:Bokkulubben World Library)というものがあることを知り、全作読んでみることにした。

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目標は2030年までに全作読破。英語原著はできるだけ原文で読みたいけれど英語以外でも可。ルールはこれだけ。さらにせっかく読むのだから、読む前と読んだあとで自分の思考がどう変わったかをメモしておくと最高。

以下、選出された100タイトル。「ドン・キホーテ」が最高傑作であることを除けばとくに順番は定めていないらしいので、ウェブサイトで公開された順番そのまま。メモがないものは未読。

 

Chinua Achebe (b. 1930)
Things Fall Apart (Nigeria)(邦題《崩れゆく絆》)

ブログ記事参照。わたしたちが生まれ育ち、あたりまえだと信じている地域社会のありかたが、いかに簡単に崩れゆくか、なぜ崩れゆくか、植民地化前後のナイジェリアでの出来事を通して、考えさせずにはいられない傑作。わたしたちのやり方を、ほかの社会との相対的視点から見る必要があることを、いつでも思い起こさせてくれる名著。
ナイジェリアとイギリスの価値観が出会うとき〜チアヌ・アチェべ《崩れゆく絆》 - コーヒータイム -Learning Optimism-

Hans Christian Andersen (1805-1875)
Fairy Tales and Stories (Denmark)(邦題《アンデルセン童話集》)

子供の頃、最初に買ってもらったシリーズものがアンデルセン童話全集。全16冊。有名な人魚姫などの物語は1冊目にまとめてあったため、1冊目だけよく読んでボロボロになった。2冊目以降は大人向けの話が増えてきて、『雪の女王』『パンを踏んだ娘』『世界一の美しいバラの花』『食料品屋の小人の妖精』は何度も読み返した。子供の頃は意味がよくわからなかった。けれどいまならわかる。ある程度人生経験を積んでからわかるようになるのが、アンデルセン童話の魅力だと思う。

 

Jane Austen (1775-1817)
Pride and Prejudice (England) (邦題《高慢と偏見》)

ジェーン・オースティンの傑作恋愛小説。学生時代に読んだときには、娘たちに金持ちの夫をあてがってやろうと目の色変える主人公エリザベスの母親のあさましさにドン引きしたが、主人公一家が所属するジェントリ階級の女性は働くことができず、ほとんど財産も相続できず、裕福な男性に嫁がなければ生活が立ちゆかなくなる時代背景を知るにつれ、逆に資産家であるダーシーを拒むエリザベスこそがある意味変人だったのかもしれないと考えるようになった。頭の回転が速く、はっきりと物を言い、己の間違いから目をそむけないエリザベスは、わたしが想像する「いい女」のイメージにかなり影響を与えている。

 

Honoré de Balzac (1799-1850)
Old Goriot (France)(邦題《ゴリオ爺さん》)

初読時は主人公である没落貴族の末裔ラスティニャックが、ゴリオ爺さんの娘のひとり、ニュシンゲン夫人にあからさまに取り入るさまにドン引きした。しかし、当時のパリでは貴婦人たちがお気に入りの若者ーー美貌で聡明、野心あふれる者達ーーを恋人扱いし、見返りに出世を支援することがよくあったと知り、カルチャーショックを受けた。病死したゴリオ爺さんの墓前でラスティニャックが「成り上がってやる、勝負だ」などと独白したその足で、ニュシンゲン夫人との晩餐会に出かけるというラストシーンがなんとも気味悪く、貧乏で才気煥発な若者が、父親を金蔓としか思わず、金が尽きれば病死するにまかせるような女におべっかを使わなければ出世できない皮肉が忘れられなかった。社会の現実というものを考えるいいきっかけになったと思う。

 

Samuel Beckett (1906-1989)
Trilogy: Molloy, Malone Dies, The Unnamable (Ireland) (邦題: 三部作《モロイ》《マロウンは死ぬ》《名付けえぬもの》)

 

Giovanni Boccaccio (1313-1375)
Decameron (Italy)(邦題《デカメロン》)

 

Jorge Luis Borges (1899-1986)
Collected Fictions (Argentina)(邦題《伝奇集》)

 

Emily Brontë (1818-1848)
Wuthering Heights (England) (邦題《嵐が丘》)

エミリー・ブロンテの《嵐が丘》は英国文学史上最高傑作だと名高いけれど、初読時は異様にねちっこい性格の主人公ヒースクリフも、彼が執着する(あれを愛情とは思えなかった)キャサリンも狂気じみているとしか思えなかった。姉のシャーロット・ブロンテの名著《ジェイン・エア》初読時も、自分を世話する大人にいい顔すれば食べものをもらえるのにそうせず、変なプライドで意地張っているようにしか見えないジェインが好きになれなかった。ブロンテ姉妹の作品は、わたしにとって、喉に刺さった小骨のように不快感を残すけれど、なぜか忘れられない。ジェインやキャサリンのようになりたくないという意味で、思考に影響しているとは思う。

 

Albert Camus (1913-1960)
The Stranger (France)(邦題《異邦人》)

 

Paul Celan (1920-1970)
Poems (Romania/France)

 

Louis-Ferdinand Céline (1894-1961)
Journey to the End of the Night (France)(邦題《夜の果てへの旅》)

 

Miguel de Cervantes Saavedra (1547-1616)
Don Quixote (Spain)(邦題《ドン・キホーテ》)

 

Geoffrey Chaucer (1340-1400)
Canterbury Tales (England) (邦題《カンタベリー物語》)

 

Joseph Conrad (1857-1924)
Nostromo (England)(邦題《ノストローモ》)

 

Dante Alighieri (1265-1321)
The Divine Comedy (Italy)(邦題《神曲》)

 

Charles Dickens (1812-1870)
Great Expectations (England)(邦題《大いなる遺産》)

 

Denis Diderot (1713-1784)
Jacques the Fatalist and His Master (France)(邦題《運命論者ジャックとその主人》)

 

Alfred Döblin (1878-1957)
Berlin Alexanderplatz (Germany)(邦題《ベルリン・アレクサンダー広場》)

 

Fyodor M. Dostoyevsky (1821-1881)
Crime and Punishment (Russia) (邦題《罪と罰》)

The Idiot (Russia)(邦題《白痴》)

The Possesed (Russia) 邦題《悪霊》)

The Brothers Karamazov (Russia) (邦題《カラマーゾフの兄弟》)

ブログ記事参照。物語の主軸はフョードル・カラマーゾフ殺害事件と容疑者ドミートリー・カラマーゾフの心理過程だけれど、わたしとしては、彼の弟イワン・カラマーゾフが創作した物語詩〈大審問官〉が最重要課題。

【おすすめ】読まずに死ねない〜ドストエフスキー《カラマーゾフの兄弟》 - コーヒータイム -Learning Optimism-

 

George Eliot (1819-1880)
Middlemarch (England)(邦題《ミドルマーチ》)

 

Ralph Ellison (1914-1994)
Invisible Man (USA)(邦題《見えない人間》)

 

Euripides(ca. 480-406 BC)
Medea (Greece)(邦題《メディア》)

中野京子著「怖い絵」シリーズでメディアの絵が紹介されたことをきっかけに知った。夫であるイアーソーンに裏切られたメディアが、滾る怒りのままにイアーソーンが結婚しようとしていた王女とその父親である国王を焼き殺し、さらにイアーソーンとの間にもうけた子供二人までみずからの手で殺して、駆けつけたイアーソーンを「おまえのせいだ!」と痛罵して去る、という物語は、いざとなればここまでする女の怖さを凝縮して顔面めがけてたたきつけられるようで、鳥肌が立った。

 

William Faulkner (1897-1962)
Absalom, Absalom! (USA)(邦題《アブサロム、アブサロム!》)
 
The Sound and the Fury  (USA)(邦題《響きと怒り》)

 

Gustave Flaubert (1821-1880)
Madame Bovary (France)(邦題《ボヴァリー夫人》)

A sentimental Education (France)(邦題《感情教育》)

 

Federico García Lorca (1898-1936)
Gypsy Ballads (Spain)(邦題《ジプシー歌集》)

 

Gabriel García Márquez (b. 1928)
One Hundred Years of Solitude (Colombia)(邦題《百年の孤独》)

ブログ記事参照。要約できないと感じた作品はこれが初めて。七代100年にわたるある家族の一代記が、現実と幻実を入り混ぜながら書かれていく。この作品をきっかけにコロンビアの近現代史やおとぎ話に興味をもった。

要約はできない。全文読むべし《百年の孤独》 - コーヒータイム -Learning Optimism-

 

Love in the Time of Cholera (Colombia)(邦題《コレラの時代の愛》)

 

Gilgamesh (ca. 1800 BC)
Mesopotamia(邦題《ギルガメシュ叙事詩》)

 

Johann Wolfgang von Goethe (1749-1832)
Faust (Germany) (邦題《ファウスト》)

ブログ記事参照。初読時はグレートヒェンを妊娠させて不幸のどん底に落としておきながらのうのうと魔女の夜会に参加するファウストのことを最低野郎だと思っていたが、彼が選んだ「時よ止まれ、お前は美しい」という場面があまりに衝撃的で、ファウストが生きることをどう思っていたのか考えずにはいられなかったが、わたしにはまだわからない。

ゲーテ《ファウスト 第1部》 - コーヒータイム -Learning Optimism-

ゲーテ《ファウスト 第2部》 - コーヒータイム -Learning Optimism-

 

Nikolaj Gogol (1809-1852)
Dead Souls (Russia)(邦題《死せる魂》)

 

Günter Grass (b. 1927)
The Tin Drum (Germany)(邦題《ブリキの太鼓》)

 

João Guimarães Rosa (1880-1967)
The Devil to Pay in the Backlands (Brasil)

 

Knut Hamsun (1859-1952)
Hunger (Norway)(邦題《飢え》)

 

Ernest Hemingway (1899-1961)
The Old Man and the Sea (USA)(邦題《老人と海》)

老漁師の目に映る海の描写がすばらしくて、海に近いところで生まれ育った思い出がよみがえって泣きそうになる。貧困にあえぐ老漁師はある日、これまでにないほど大きい、漁船よりもまだ体長があるカジキに餌を食わせることに成功するが、なお体力衰えないカジキを相手に、老漁師の孤独な闘いが始まる。少年は涙を流し、疲労の極致にいたった老漁師は眠る。人は自然の摂理のなかにあり、老いること、力弱ること、奮いたつこともまた自然の摂理であるということを思い出させ、恐れることではないという気持ちにさせてくれる作品。

Homer (ca. 700 BC)
The Iliad (Greece)(邦題《イーリアス》)

大学時代にひまをもてあまして図書館で読んだ。トロイア戦争終盤、ある事件をきっかけにギリシャ勢の勇士アキレウス(アキレス腱の語源)と総大将アガメムノーンが喧嘩し、アキレウスが戦場放棄してテントにこもってしまうという、3000年近く前に書かれたとは思えないほど人間臭く共感しやすい物語。ギリシアの神々が各陣営にわかれて人間の戦争に肩入れするのが面白い。アガメムノーンとアキレウスの喧嘩場面は現代にもそのままありそうで、何千年経過しても人間変わらねーなーと心底思ったことを覚えている。


The Odyssey (Greece)(邦題《オデュッセイア》)

子どもの頃、児童向け文学全集で読んだ。オデュッセウスが航海中、部下6人を怪物に食わせるか、船ごと破壊されるかという残酷な二択を迫られ、嘆きながらも部下6人の犠牲を選んだところ。ここが一番衝撃的だった。子どもの頃は、オデュッセウスが下した選択のせいで部下が死ななければならないのかと理不尽に思ったものの、大人になってからは、「効率良く味方を殺す」ことができなければ全滅するしかないときもあるのだと知った。早々に現実の冷酷さを思い知らされたといえる。

 

Henrik Ibsen (1828-1906)
A Doll's House (Norway)(邦題《人形の家》)

 

The Book of Job (600-400 BC) (Israel)(邦題《ヨブ記》)

 

James Joyce (1882-1941)
Ulysses (Ireland)(邦題《ユリシーズ》)

 

Franz Kafka (1883-1924)
The Complete Stories (Bohemia)

The Trial (Bohemia)(邦題《審判》)

The Castle (Bohemia)(邦題《城》)

 

Kalidasa (ca. 400)
The Recognition of Sakuntala (India)(邦題《シャクンタラー》)

 

Yasunari Kawabata (1899-1972)
The Sound of the Mountain (Japan)(《山の音》)

ブログ記事参照。久しぶりに心洗われるような小説を読んだ。戦後間もない日本に生きる家族の哀愁を描きながら、流れゆく日常生活の〈あはれ〉、ふと目を止めなければそのまま過ぎ去るかもしれないきらめきを、川端康成はいたるところにこめている。コロナ禍で在宅が長引き、すっかり気にすることも少なくなってしまった日々のうつろいを、もう一度掬いあげようと思わせてくれる、そんな小説。

流れゆく時からふと汲みあげた小説〜川端康成《山の音》 - コーヒータイム -Learning Optimism-

 

Nikos Kazantzakis (1883-1957)
Zorba the Greek (Greece)(邦題《その男ゾルバ》)

 

D.H. Lawrence (1885-1930)
Sons and Lovers (England)(邦題《息子と恋人》)

 

Halldór K. Laxness (1902-1998)
Independent People (Iceland)

 

Giacomo Leopardi (1798-1837)
Complete Poems (Italy)

 

Doris Lessing (b. 1919)
The Golden Notebook (England)(邦題《黄金のノート》)

 

Astrid Lindgren (1907-2002)
Pippi Longstocking (Sweden)(邦題《長くつしたのピッピ》)

 

Lu Xun (1881-1936)
Diary of a Madman and Other Stories (China)(邦題《狂人日記》他)

ブログ記事参照。数千年続く専制君主制度のもと、それに対応するためにおかしなふうに歪みながら、それを批判せずに受け入れている一般民衆たちの目を覚まし、考えさせ、戦わせるために、あえて社会の歪みを誇張する形で書かれた小説群。辛亥革命から民主化運動、共産主義台頭に続く、激動の20世紀に突入したばかりの中国にあった歪みは、21世紀になったいまでも完全に消え去ってはいない。このことを常に思い出させてくれる。
家畜の安寧に甘んじるなという叫び〜魯迅《小説集・呐喊》 - コーヒータイム -Learning Optimism-

 

Mahabharata (ca. 500 BC) (India)(邦題《マハーバーラタ》)

 

Naguib Mahfouz (b. 1911)
Children of Gebelawi (Egypt)

 

Thomas Mann (1875-1955)
Buddenbrooks (Germany)(邦題《ブッデンブローク家の人々》)

The Magic Mountain (Germany)(邦題《魔の山》)

 

Herman Melville (1819-1891)
Moby Dick (USA)(邦題《白鯨》)

 

Michel de Montaigne (1533-1592)
Essays (France)

 

Elsa Morante (1918-1985)
History (Italy)(邦題《イーダの長い夜 ― ラ・ストーリア》)

 

Toni Morrison (b. 1931)
Beloved (USA)(邦題《ビラヴド》)

 

Shikibu Murasaki
The Tale of Genji (Japan)(《源氏物語》)

日本人なら説明不要の超有名古典だけれど、通読できた人はそれほどいないと思う。わたしもあらすじはわかるけれど読み通せたのはほんのわずか。けれど、《源氏物語》をきっかけに王朝文化に興味をもつようになったのだから、影響ははかりしれない。

あなたの知らない平安時代へようこそ〜山本淳子『平安人の心で「源氏物語」を読む』 - コーヒータイム -Learning Optimism-

 

Robert Musil (1880-1942)
The Man without Qualities (Austria)(邦題《特性のない男》)

 

Vladimir Nabokov (1899-1977)
Lolita (Russia/USA)(邦題《ロリータ》)

 

Njals saga (ca. 1300)  (Iceland)

 

George Orwell (1903-1950)
1984 (England)

ブログ記事参照。不快極まりないディストピア。これ以上説明する気にもなれない。けれど私はこの本を忘れることができないだろう。目を背けたい真実を突きつけられるからこそ不快極まりないのだから。

身震いするほどの不快感〜ジョージ・オーウェル《1984》 - コーヒータイム -Learning Optimism-

 

Ovid (43 BC-17 e.Kr.)
Metamorfoses (Italy)(邦題《変身物語》)

 

Fernando Pessoa (1888-1935)
The Book of Disquiet (Portugal)

 

Edgar Allan Poe (1809-1849)
The Complete Tales (USA)

ブログ記事参照。世界最初の推理小説といわれる《モルグ街の殺人》をはじめ、ゴシックホラー、科学的知見のあるSF小説などについて原型を打ち立てた。ポーの小説を読んでいて「あ、この展開見たことある」と感じたことが何度もあったけれど、ポーの小説こそが始まりなのだと考えると、彼がいなければ小説業界はさぞつまらないものになっていただろう。

さまざまなジャンルの小説の原型を打ち立てた傑作たち〜エドガー・アラン・ポー《全集》 - コーヒータイム -Learning Optimism-

 

Marcel Proust (1871-1922)
Remembrance of Things Past (France)(邦題《失われた時を求めて》)

 

François Rabelais (1495-1553)
Gargantua and Pantagruel (France)(邦題《ガルガンチュワとパンタグリュエル》)

 

Juan Rulfo (1918-1986)
Pedro Páramo (Mexico)(邦題《ペドロ・パラモ》)

 

Jalal ad-din Rumi (1207-1273)
Mathnawi (Iran)

 

Salman Rushdie (b. 1947)
Midnight's Children (India/England)(邦題《真夜中の子供たち》)

 

Sheikh Musharrif ud-din Sadi (ca. 1200-1292)
The Orchard (Iran)

 

Tayeb Salih (b. 1929)
Season of Migration to the North (Sudan)

 

José Saramago (b. 1922)
Blindness (Portugal)(邦題《白の闇》)

 

William Shakespeare (1564-1616)
Hamlet (England)(邦題《ハムレット》)

"Frailty, thy name is woman." "To be or not to be, that is the question."などの名台詞がとても多い、シェークスピア最高傑作のひとつ。復讐者ハムレットが、結局は自分自身が殺したポローニアスの娘、愛するオフィーリアを自殺で失い、息子レアティーズの復讐によって死亡するという連鎖的結末がひどく皮肉。なんともいえない後味悪さ。


King Lear (England)(邦題《リア王》)

あどけない子供時代にはじめて触れた「善人が報われない」お話が《リア王》だった。読んだ当時は言葉にできなかったけれど、「理不尽」「不条理」ということを感じたのは《リア王》が人生最初だった。とはいえ、たかだか末娘コーディリアが父親リア王への愛情を美辞麗句で飾り立てなかったくらいのことで、激怒して絶縁宣言するリア王がその後受ける仕打ちは、自業自得だといまでも思う。


Othello (England)(邦題《オセロー》)

恐怖。オセローが狡賢いイアーゴーの作り話に騙されて、新妻デズデモーナが浮気したのではないかと疑い始める瞬間がとてつもなく怖い。オセローがムーア人(北西アフリカのイスラム教徒のこと。とはいえオセロー自身はキリスト教に改宗している)で肌黒く、年配であることから、ヴェネツィア出身の若く美しい白人女性であるデズデモーナが本気で愛してくれているのか自信をもてなかったことが、彼女の浮気を疑った根本的原因である。そこを容赦無くえぐる悪魔のごときイアーゴーのやり口は、人間に疑いの心を起こさせ、操り、間違いをおかさせるのがいかに簡単かを見せつけているよう。恐怖にわななきながら一気読みした。

 

Sofokles (496-406 BC)
Oedipus the King (Greece)(邦題《オイディプス王》)

父親を殺し、母親を娶り、そのことが発覚してみずからの両眼を突いて失明したオイディプス王の衝撃もさることながら、フロイトが「父殺しは人がもつ根源的欲望である」などと説明したおかげで、空恐ろしいほどの影響をもつようになってしまった。スター・ウォーズからエヴァンゲリオンシリーズまで、息子が父親を越えようと悪戦苦闘する物語は星の数ほどあるけれど、オイディプス王はこれらの物語に〈核〉を与えたのだろう。

 

Stendhal (1783-1842)
The Red and the Black (France)(邦題《赤と黒》)

 

Laurence Sterne (1713-1768)
The Life and Opinions of Tristram Shandy (Ireland)(邦題《トリストラム・シャンディ》)

 

Italo Svevo (1861-1928)
Confessions of Zeno (Italy)

 

Jonathan Swift (1667-1745)
Gulliver's Travels (Ireland)(邦題《ガリヴァー旅行記》)

子どもの頃、児童向け文学全集で読んだ。「一本の麦、一本の草しか生えぬ荒れた地に、二本の麦、二本の草を生やすことができる人物……そういう人物こそ、つまらぬ政治の書物を何十冊も読んだ者よりも王にふさわしい」という巨人国の国王の言葉がひどく印象的で、それがわたしの読書経験の根底にあると思う。読書は必要だ、だが実践に勝てるものではない、と。

 

Lev Tolstoj (1828-1910)
War and Peace (Russia)(邦題《戦争と平和》)

ブログ記事参照。これは長編小説ではなく、ナポレオンのロシア侵攻という歴史事件を、分解し、解析し、歴史をつくるのは英雄ではなく無数の意志をもつ無数の人々であるという視点から再構築するという挑戦そのもの。主人公のひとりピエールがヘタレすぎるが、流されやすく、思いこみが激しく、常に自分の代わりにものごとを決めてくれる人を探しているようなピエールのふるまいは、わたしにも身に覚えがあることばかりでいたたまれなくなる。

歴史に人々が流されるか、人々が歴史をつくるか〜トルストイ《戦争と平和》 - コーヒータイム -Learning Optimism-


Anna Karenina (Russia)(邦題《アンナ・カレーニナ》)

ブログ記事参照。不倫の恋のあげくに身の破滅を招いたアンナ・カレーニナに同情する気にはなれなかったが、結婚生活というものを考えるにあたっていい参考になるのは確か。
男と女の視線がからみあうとき《アンナ・カレーニナ》 - コーヒータイム -Learning Optimism-


The Death of Ivan Ilyich and Other Stories (Russia)(邦題《イワン・イリイチの死》)

ブログ記事参照。中年過ぎればめちゃくちゃ刺さる。だが目が離せない。自分はこうなりたくないと必死にならざるを得ない。

【おすすめ】最後まで読むには勇気がいる〜トルストイ《イワン・イリイチの死》 - コーヒータイム -Learning Optimism-

 

Anton P. Tsjekhov (1860-1904)
Selected Stories (Russia)

ブログ記事参照。さまざまな短編小説と戯曲の多くは「ここではないどこか」「いまの生活ではないなにか」を求める人々の苦難と葛藤を描写している。これも中年過ぎればめちゃくちゃ刺さる。「いま、ここを離れればきっとなにもかもうまくいく」という夢が、家庭、子供、仕事……などにとりこまれてしだいに消え失せ、ついには何者にもなれないまま、いまの境遇を受け入れざるを得なくなるから。
ここではないどこか、いまの生活ではないなにか〜アントン・チェーホフ《チェーホフ全集》 - コーヒータイム -Learning Optimism-

 

Thousand and One Nights (700-1500) (India/Iran/Iraq/Egypt) (邦題《千夜一夜物語》または《アラビアン・ナイト》)

子どもの頃、「イスラム教」という言葉すら知らないときに児童向け文学全集で読んだ。私がはっきり覚えているのは海の信心深い人魚アブドーラと陸の信心深い人間アブドーラの物語。人魚アブドーラは、人間アブドーラの信心深さを好ましく思い、友情を育むが、人間アブドーラが、人間たちは葬式で泣くのだと語ることで人魚は激怒する。うろ覚えだがこんな言い分だったと思う。

「死ぬことは神さまに生命をお返しすることですよ!海ではみんな死ぬことを喜ぶのです。お葬式は、お祭りですよ!神さまに生命をお返しすることを悲しむなんて、それでよく信心深いと言えたものですね!おおいやだ!おまえさんとは、もう、これっきり!」

かんかんに怒って海に帰ってしまう人魚の言い分が、子どものころの私には全然理解出来なかった。いまでも理解出来るとは言いがたい。ただ、〈千夜一夜物語〉に繰返し出てきて、あこかれをもって語られる繁栄都市バグダッドを、幼い日の私は記憶にとどめた。

Mark Twain (1835-1910)
The Adventures of Huckleberry Finn (USA)(邦題《ハックルベリー・フィンの冒険》)

ブログ記事参照。黒人奴隷と交流すること自体が恥ずべきことだと考えられていた南北戦争前後、白人少年ハックルベリー・フィンが逃亡奴隷のジムとしだいに心を通わせながらも宗教的良心に苦しむところは、いかにその時代の価値観から逃れることが困難であるのかをわたしたちに見せつける。無自覚にすりこまれる価値観だからこそ恐ろしい。そのことを自覚させてくれるすばらしい物語。

黒人として、友達として〜マーク・トウェイン《ハックルベリー・フィンの冒険》 - コーヒータイム -Learning Optimism-

 

Valmiki (ca. 300 BC)
Ramayana (India)(邦題《ラーマーヤナ》)

 

Vergil (70-19 BC)
The Aeneid (Italy)(邦題《アエネーイス》)

 

Walt Whitman (1819-1892)
Leaves of Grass (USA)(邦題《草の葉》)

 

Virginia Woolf (1882-1941)
Mrs. Dalloway (England)(邦題《ダロウェイ夫人》)

ブログ記事参照。パーティを開催しようとするダロウェイ夫人とそのまわりの人々の「意識の流れ」をそのまま追いかけ、組みあわせ、重ねあわせることにより、できごとを描述しようとする新手法小説。「ウォーリーをさがせ!」のような楽しみ方ができるおもしろさがあるが、ストーリー重視の私にはやや物足りない。

「意識の流れ」という新手法〜ヴァージニア・ウルフ《ダロウェイ夫人》 - コーヒータイム -Learning Optimism-


To the Lighthouse (England)(邦題《灯台へ》)

 

Marguerite Yourcenar (1903-1987)
Memoirs of Hadrian (France)(邦題《ハドリアヌス帝の回想》)