和菓子好きにはたまらない、日本全国のすばらしい和菓子を写真付きで紹介した一冊。
著者は旅を中心とするフリーライターで、四〇年に及ぶ日本全国取材の旅で、のべ五〇〇〇種類もの銘菓を口にしてきたという。その著者が選ぶ、忘れられない和菓子。
定番中の定番から知る人ぞ知る銘菓まで、饅頭から落雁までなんでもあり。手元に薄いお抹茶とこの本を用意しておけば、これだけでお茶の時間を楽しめてしまいそうだ。
そんな著者が選んだ和菓子の中から、いつか食べてみたいものをピックアップした。
本書のトップバッターを飾る和菓子。見ためは皮が半透明のお饅頭。中身は白餡。
皮と餡の区別がつかないほど、食感も甘さも溶け合う餅菓子で、真っ白で透き通るような皮は、赤ん坊の耳たぶほどやわらかい。
【上り羊羹(愛知県名古屋市・美濃忠)】
この本で初めて名前を聞いた和菓子だが、蒸し羊羹にかけてはこれの右に出るものはないという。見ためは美しい薄小豆色の、さほど密度が高いとは思えない羊羹で、実際、水分が多めで、舌の上でゆっくりとろけるという。
栗そのものの濃厚な美味しさを味わえる、栗に目がない私にとっては見逃せない和菓子。見ためは栗羊羹だけれど、寒天を一切入れないため羊羹とは呼ばないのだという。
栗好きには見逃せない和菓子そのに。栗そっくりの饅頭で、餡と大粒の栗が丸ごと一個入れられ、窯で焼き上げられている。祝いごとには欠かせない菓子として地元ではお馴染みらしい。
たまたま百貨店の京都フェアで見つけて、その独特な見ためをおもしろがって買い、食べてみてすっかりファンになった和菓子。どら焼きといっても普通のどら焼きのように銅鑼の形はしておらず、棒状である。もちもちの皮はほのかにしっとりとした甘みをもち、中身のこしあんは京菓子らしい上品で控えめな甘さ。毎月二〇日〜二二日だけ販売するという物珍しさも嬉しい。