コーヒータイム -Learning Optimism-

本を読むということは、これまで自分のなかになかったものを取りこみ、育ててゆくこと。多読乱読、英語書や中国語書もときどき。

2020-02-01から1ヶ月間の記事一覧

女性読者は心臓を日本刀で刺されたような衝撃を受けるだろう〜チョ・ナムジュ『82年生まれ、キム・ジヨン』

韓国社会で一大ベストセラーになったこの小説を遅ればせながら読んでみた感想。 「これ、女性読者には心臓を日本刀でぶっ刺されたような衝撃を与えそうだけど、男性読者には響くんだろうか」 ストーリーは至極単純だ。主人公キム・ジヨンは夫と1歳になる娘…

アメリカ発、子どもを成功者にするために必要なこと〜Paul Tough “How Children Succeed”

How Children Succeed: Grit Curiosity and the Hidden Power of Character 作者:Paul Tough 発売日: 2012 メディア: ハードカバー 成功する子 失敗する子 ― 何が「その後の人生」を決めるのか 作者:ポール・タフ 出版社/メーカー: 英治出版 発売日: 2014/09…

どこまでがフィクションですか?と聞いてみたい、是非〜有川ひろ『イマジン?』

どこまでがフィクションですか? ーーと、真っ先に原作者の有川ひろさんに聞きたい。是非聞きたい。 内容としては、大ヒットした映画『カメラを止めるな!』に似ている。映像制作会社に勤める主人公とまわりのスタッフが経験するさまざまな撮影現場を通して…

ロシア語通訳として見聞きした世界〜米原万里『心臓に毛が生えている理由』

『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』の著者のエッセイ集。ロシア語通訳として政府高官やメディア取材に同行することがよくある著者ならではの視点から、日本との文化的違いが浮き彫りになるワンシーンを切り取った文章が多い。とくに著者の本業である通訳にか…

冷戦下のソビエト学校から〜米原万里『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』

おそらく、冷戦時代のヨーロッパの共産主義陣営、そこで暮らす共産党員たちの子どもの喜怒哀楽や運命を、同級生の視線からノンフィクションにまとめた本はほかにないのではないだろうか。 著者の米原万里氏は日本共産党の幹部を父親にもち、父親のチェコスロ…

現代日本社会でも役立つ「全体主義」の解説書〜仲正昌樹『悪と全体主義 ハンナ・アーレントから考える』

ハンナ・アーレントという名前を最初から知っていたわけではない。新型コロナウイルスの感染者が乗船していたことで横浜港に留めおかれていた豪華客船ダイヤモンド・プリンセス号、その内部感染管理がメチャクチャだとYouTubeで実名告発した岩田健太郎医師。…

英国貴族の執事たる者の矜持〜カズオ・イシグロ『日の名残り』

ノーベル文学賞を受賞したことで、日本で一躍脚光を浴びたカズオ・イシグロ氏の代表作。 一読してみたところ、日本でいう王朝平安文学のイメージに近い。優美な衣装を身にまとい、雅なあそびに興じる貴族たちに仕える使用人が、筆をふるい、華やかな日々を思…

仕事はしょせん人生の一部、日本はしょせん世界の一部〜谷本真由美『世界のどこでも生きられる!―外籠もりのススメ』

久しぶりに読書時間をとった。 Twitter上でMay_Roma(谷本真由美)をフォローしてからかなり経つが、その中でも本書のもととなったCakesの連載「世界のどこでも生きられる」はとても気に入っている。最近だとハリーとメーガンのイギリス王室脱退事件を解説し…