コーヒータイム -Learning Optimism-

本を読むということは、これまで自分のなかになかったものを取りこみ、育ててゆくこと。多読乱読、英語書や中国語書もときどき。

<英語読書チャレンジ 98 / 365> H.R.Wakefirld “Strayers from Sheol”

英語の本365冊読破チャレンジを再開。原則としてページ数は最低50頁程度、ジャンルはなんでもOK、最後まできちんと読み通すのがルール。期限は2027年10月。20,000単語以上(現地大卒程度)の語彙獲得と文章力獲得をめざします。

久しく英語原書を読んでいなかったからリハビリ。

本書はいわゆる幽霊譚の短編集。英国特有のもってまわった言いまわしや嫌味皮肉満載なのでその方面でもどちゃくそ好み。(“Do I detect a hesitant note in your tone? You mean what you say, I trust?” -- The Triumph of Death)


The Triumph of Death - 幽霊屋敷住まいの性悪女Miss Pendleham、彼女の同居人Amelia、大家にあたるRedvale夫婦のお話。カカア天下のRadvale夫人がいい味出してる。Ameliaは虐待されてるわ! あなたが助けなくては! クリスチャンとして男として勇気出しなさい! と夫に詰め寄る場面はいっそコミカル。Miss Pendlehamはなにがしたかったのやらよくわからないが、因果応報。

Ghost Hunt - これまで 30人の自殺者を出したという呪われた屋敷を探索するMignon教授と、その様子をラジオ番組で実況中継するリポーターTony Weldonのお話(物語が書かれたのは20世紀前半。ラジオ放送はいまでいうYouTuberか)。一転してコミカル要素無しでとにかく怖い。"Let’s end it all in the river!"

The Third Shadow - 著名な登山家であるSir Andrewが、およそ35年前、登山仲間であるBrownとともにアルプスを登攀したときに彼の身に起こった身の毛がよだつできごとを話す。途中でオチが読めてしまうけれど、登攀描写はなかなか面白い。Brownが結婚した女性(悪妻)の名前はHecate Quornで、ギリシャ神話で冥府とつながりがある女神ヘカテの名前を使用している時点である意味お察し。

The Gorge of the Churels - インドの北部パンジャブ地方に住む英国人のPrinkle一家が、現地人のMr. Senとともに、難産で生命を落とした女性たちの霊魂が集うという谷間に無謀なピクニックに出かけるお話。古い時代の英国文学(児童書含む)はたいがいインド人を迷信深い未開の民扱いしているが、この話も例外ではないためあまり気持ち良くない。Mr. Senも内心嫌悪感があり、“The word Churel is a typical example of the poor superstitious Indians’ ineradicable tendency to charge vague and fearful notions with materialist implications.”と、わざと難解単語満載で思いきり皮肉を言う。

Mr. Ash’s Studio - 道路工事の騒音に耐えかねて、小説を書くための静かなスタジオを借りたMr. Horrocksが、Mr. Ash's Studioと呼ばれるそこで見たのは、物置部屋に突っこまれた小さな包みに群がる赤い蛾の群れ(この時点で嫌な予感しかしないが、作者はわざわざ "Beautiful colour. They must be feeding on something." と書き添えている)。本作の幽霊騒動を引き起こした張本人は英国人夫とペルシャ人妻の混血であるが、こちらは前作のインド人のように見下されるニュアンスが薄く、ペルシャの神秘扱いにとどまる。

 

 

 

<英語読書チャレンジ 97 / 365> Foster, Thomas C. “How to Read Literature Likes a Professor” (邦題『大学教授のように小説を読む方法』)

英語の本365冊読破チャレンジを再開。原則としてページ数は最低50頁程度、ジャンルはなんでもOK、最後まできちんと読み通すのがルール。期限は2027年10月。20,000単語以上(現地大卒程度)の語彙獲得と文章力獲得をめざします。

久しく英語原書を読んでいなかったからリハビリ。

本書の内容は『千の顔を持つ英雄』に通ずると思う。すなわち、読み継がれるすぐれた物語は必ずそれより以前の文学作品と繋がりをもつことで「より大きな物語の一部」を形成するものであり(本書で挙げるのは聖書、神話、おとぎ話や昔話、シェイクスピアなど)、ある一定のお約束がみられるというもの。本書ではお約束を【シンボル】【パターン】から解説する。ちなみに文学教授というものは、そうでないことが立証されない限り、ある記述にはなんらかの象徴的意味があるものと仮定して読み進める習性をもつ、らしい。

Memory. Symbol. Pattern. These are the three items that, more than any other, separate the professorial reader from the rest of the crowd.

【パターン】は、小説や漫画になじみがあればだれでも思いつくお約束展開のこと。たとえば青春物語には主人公とヒロインとライバルの登場はほぼ必須で、主人公がなんらかのイベントを持ち前の能力と善性でクリアしながら、ライバルより強くなり、ヒロインに好かれていくのがド定番。イベントクリアには表向きの動機(ヒロインに好かれる)と真の動機(自己理解、人間的成長)があるのも超・ド定番。これがパターンの威力。

お約束展開ほどでなくても、ちょっとした場面描写からさまざまな背景を読みとることができる。たとえば、食事を共にすることは、相手とよい関係を築きたいとほのめかすための定番手法だ。著者はユーモアたっぷりに「パンを分け与えるような相手の頭をかち割ろうとはしないものさ」と書く。もちろん鴻門の宴 (*1) や、アリババの宴 (*2) のような例外もあり、友好的でない食事場面についても本書で言及される。

Here’s the thing to remember about communions of all kinds: in the real world, breaking bread together is an act of sharing and peace, since if you’re breaking bread you’re not breaking heads.

わたしが目から鱗だったのは、いつの時代でもタブー視され正面切って描写することがかなわないものごとがある中で、それを暗喩や隠喩や物語構成そのものに埋めこんで一見無害な文学作品に仕立てて後世に残す工夫もまた磨かれてきたという指摘。この点では洋の東西を問わない。ヴィクトリア朝以前はあからさまな性や死の描写がなされることはほとんどない。中国ではこの手の作品でもっとも有名なのは間違いなく《紅楼夢(*3) であろう。

(*1) 史記項羽劉邦を食事に招き、酒席で殺そうとした故事。

(*2)  伝アラビアンナイト。アリババに財宝を横取りされ、部下を殺された盗賊頭が商人に化け、なにも知らないアリババに夕食に招待されたのをいいことに、食事の席で隙をみて彼を殺す計画をたてる。だがアラビアには「塩を一緒に食べた人は友である」という風習があり、アリババを仇と狙う盗賊頭は塩気のある食事には手をつけられず、塩断ちを申し入れた。このため、賢い女奴隷モルギアナに正体を見破られた。

(*3) 《紅楼夢》は、乾隆帝の祖父にあたる康熙帝の時代に繁栄をきわめながら、その後政争に巻きこまれて没落した名家の直系子孫が、政権批判をすれば一族郎党もろとも処刑される状況の中、己と己の一族に起こったできごとをきらびやかな貴族恋愛物語に伏流させる形で書いた不朽の名作。豊富な中国古典素養に基づき、歴代帝王の身に起きたできごとを現代になぞらえる定番手法をはじめ、さまざまな引用と伏線に満ちる。後半部分が散逸していることもあり、いまでも汲めど尽きぬ謎解きの対象として人気が高い。また、当時庶民の視線にふれることがない貴族生活を事細かに描写しているため、その方面の資料としても興味深い。

The more we become aware of the possibility that our text is speaking to other texts, the more similarities and correspondences we begin to notice, and the more alive the text becomes.

Symbols, though, generally don’t work so neatly. The thing referred to is likely not reducible to a single statement but will more probably involve a range of possible meanings and interpretations.

[テーマ読書](未完 33 / 50+)家庭文庫

2024年総集編。

夏休み中にダイソーの「お助け本棚」をリビングに設置してささやかな家庭文庫を築いた。リビングではスマホを手にとらないことを誓う。スマホをさわる気が起きないほど珠玉の文庫を集めたつもり。

 

●B-001 岩波文庫『育児の百科 (上中下) 』

ブログ記事参照。子育てが辛くなったときにパラパラめくると、とりあえず頭冷えるきっかけになる。

【おすすめ】一家に一冊、育児の百科事典『育児の百科』 - コーヒータイム -Learning Optimism-

●B-002 講談社文庫『新世界より (上中下) 』

貴志祐介さんの小説全般についてはブログ記事参照。人間の罪深さをこれほどまでに浮き彫りにする〈悪鬼〉〈業魔〉が天才的すぎる。しかしこれで圧倒的に面白いのだから何度も読み返したくなる。

恐れを抱かずにはいられない人間の宿命〜貴志祐介『天使の囀り』 - コーヒータイム -Learning Optimism-

●B-003 講談社文庫『ワイルド・スワン (上中下) 』

ブログ記事参照。正直読み返すのが辛いけれど、手元に置かなければならないと思わせる、血の涙が滲むノンフィクション。

【おすすめ】語ることを禁じられた時代の記憶《ワイルド・スワン》 - コーヒータイム -Learning Optimism-

●B-004 新潮文庫『本所深川ふしぎ草紙』 / ●B-005 PHP文芸文庫『〈完本〉初ものがたり』

宮部みゆきさんの本所深川を舞台にした岡っ引きシリーズはブログ記事参照。

弥次さん喜多さんならぬ北さん喜多さん〜宮部みゆきが本所深川を舞台に贈るシリーズ物『きたきた捕物帖』他 - コーヒータイム -Learning Optimism-

●B-006 PHP文芸文庫『まんぷく 時代小説傑作選』 / ●B-007 ハルキ文庫『ふんわり穴子天』

宮部みゆきさんの『初ものがたり』から「お勢殺し」を収録した『まんぷく 時代小説傑作選』には、江戸の季節料理やお菓子を題材にした美味しい短編小説がたっぷりつまっている。そのうちの「初鮎」が気に入り、出典元である坂井希久子さんの居酒屋ぜんやシリーズ『ふんわり穴子天』も買った。シリーズ後半は、無理矢理なシリアス展開がほのぼの料理場面とあわなくなり、食い合わせがわるい感じがしてきたのだが、前半ののびやかな江戸庶民料理はなかなか魅力的。

●B-008 新潮文庫『幻色江戸ごよみ』 / ●B-009 同『堪忍箱』 / ●B-010 同『かまいたち

同じく宮部みゆきさんの本所深川を舞台にした短編集。『幻色江戸ごよみ』はあれほど火消しにあこがれたのにいざとなると恐怖で足が竦み逃げ出した文次の心の弱さに忍びよる「だるま猫」、『堪忍箱』は苦労人お春の亡き母親がかつて心揺らいだ「砂村新田」、『かまいたち』はまじめに働く宿屋の夫婦が宿泊客の怪しくもうまい儲け話にしだいに欲をかきたてられる「師走の客」がいっとう好き。

●B-011 実業之日本社文庫『絶対零度のテロル』

知念実希人先生の天久鷹尾シリーズはなかなか面白いけれど、この本に一番心惹かれたのは『機械仕掛けの太陽』のセルフオマージュに思えるこの言葉。

「もし致死性ウイルスのパンデミックが起きたら、私たちはN95マスクと防護服を身に纏って、有機物でできた殺人マシーンとの戦争の最前線に立つ。それが私たちの職業、医者という仕事なんだ」
知念先生自身が医師であること、医師が感染症患者を診療するなかでみずから感染することが決してめずらしくないことがこの言葉に凄みを添える。

●B-012 新潮文庫『白銀の墟 玄の月(一二三四)』

ブログ記事参照。苛烈な冬を思わせる重厚さ。

【おすすめ】小説ではなく人生そのもの『白銀の墟 玄の月』 - コーヒータイム -Learning Optimism-

●B-013 新潮文庫百年の孤独

ブログ記事参照。要約不可能、全文読むべし。

要約はできない。全文読むべし《百年の孤独》 - コーヒータイム -Learning Optimism-

●B-014 角川文庫『図書館戦争』 / ●B-015 同『図書館内乱』 / ●B-016 同『図書館危機』 / ●B-017 同『図書館革命』 / ●B-018 同『別冊図書館戦争1』 / ●B-019 同『別冊図書館戦争2』

有川浩先生の図書館戦争シリーズは表現の自由についての必読副教材にすればいいと思う。

実質的に検閲合法化と言える〈メディア良化法〉が成立し、言葉狩りが正当化された日本で、表現の自由を守るために武器をとった図書館特殊部隊と良化隊員の「火器まで使用した内戦」を縦軸に、図書館特殊部隊の人間模様を横軸にした物語は、作者の「ひとつだけ大きな虚構以外はとことん現実を書く」という主義を反映して、とことんリアルでとことん泥臭い。(そういえば映画『シン・ゴジラ』もおなじ考え方で製作された)

登場人物自身に「図書館特殊部隊は武器をとったことで正義の味方ではありえなくなった」と言わせながら、「表現の良し悪しは国民自身に判断をゆだねるべきであり、判断機会そのものをとりあげてしまう検閲には賛成できない」という姿勢をつらぬく。そこにあるのは揺らぎやすくも決して折れない、読み手への信頼だと思う。

●B-020 創元SF文庫『銀河英雄伝説1 黎明篇』 / ●B-021 同『銀河英雄伝説2 野望篇』 / ●B-022 同『銀河英雄伝説外伝1 星を砕く者』 / ●B-023 同『銀河英雄伝説外伝2 ユリアンのイゼルローン日記』

ブログ記事参照。特別好きな数冊を買った。

【おすすめ】歴史好き必読のスペースオペラ〜田中芳樹『銀河英雄伝説』 - コーヒータイム -Learning Optimism-

[テーマ読書]読まずに死んだらもったいない小説 - コーヒータイム -Learning Optimism-

●B-024 角川文庫『営繕かるかや怪異譚』

ブログ記事参照。一番好きな3作目はまだ文庫化されていない。とても楽しみ。

古色蒼然としたものたちに息づくモノたち〜小野不由美『営繕かるかや怪異譚』シリーズ - コーヒータイム -Learning Optimism-

●B-025 新潮文庫華麗なる一族  (上中下)』

1970年代、改革開放直後の中国の若者が「資本主義とはどういうものか」を学ぶためにこの小説を読んだといわれる。

主人公の万俵大介は、冷徹な銀行家として辣腕をふるう一方、家では妻妾同棲という倒錯した生活を送る。金融再編成の波が押し寄せるなか、オーナー頭取をつとめる阪神銀行がほかの都市銀行と合併させられるかもしれないという情報をつかんだ大介は、 永田大蔵大臣をはじめとする政財界とのつながりを駆使し、逆に上位銀行を呑みこむ「小が大を食う」合併をもくろむ。何度読んでも(大介なりに理由あることとはいえ)親子の情さえ切り捨てる冷徹極まりないやり方、それぞれの思惑のなまなましさに慄然とさせられる。

[NEW!] ●B-026 文春文庫『大地の子 (一二)』

1980年代、比較的開放的な雰囲気があった中国で、日中協力のもとNHKでドラマ化され、終戦50周年の1995年に放送70周年記念番組として放送された。現在の中国ではもう撮影許可が降りないだろう。

主人公の松本勝男の父は陸軍に召集され、 祖父、母、妹とともに、満州に入植した満蒙開拓団の一員としてソ連国境に近い開拓地で暮らしていた。しかし、1945年8月9日のソ連対日参戦により避難を余儀なくされ、祖父と母、末妹が死に、残された勝男もショックのあまり自身の名前すら忘れる。中国残留孤児として中国農民にもらわれるが、厄介者扱いされ、紆余曲折の果て、優しい養父に引き取られ、陸一心という中国名をつけられる。ようやくささやかながら幸せになろうとしていた一心を襲ったのが文化大革命であった。日本人であるというだけで冤罪を着せられた一心は、労働改造所(強制労働収容所)送りになる……。

目を覆いたくなるほどの悲惨な出来事が続くが、これがすべて実際の歴史的背景に基づくというから恐ろしい。ソ連参戦、国共内戦、中国残留孤児、長春卡子、文化大革命、労働改造所……戦慄するキーワードが並ぶ。読むときは覚悟のほどを。

[NEW!] ●B-027 角川文庫『怖い絵』/ ●B-028 同『怖い絵 死と乙女篇』 / ●B-029 同『怖い絵 泣く女篇』

中野京子による大人気シリーズ。幽霊や妖怪が描かれているから怖いのではなく、名画の時代背景や土台となる物語を理解してその怖さを読み解こうという試み。

『怖い絵』冒頭で紹介されたドガの〈踊り子〉を扱う一章を読んで、私はこのシリーズの虜となった。現代の私から見たドガの〈踊り子〉は、素晴らしい芸術的踊りをものしたバレリーナの絵。だが中野京子さんの解説によれば、当時のドガが生きた上流階級から見た〈踊り子〉は、まともな上流家庭の貴婦人であれば絶対出さない腕と足をだらしなくさらした労働階級の娼婦予備軍が、金持ちのパトロンのゴリ押しでバレエを踊らせてもらっている絵であったという。この差!

『怖い絵 死と乙女篇』では表紙を飾る〈皇女ソフィア〉と〈怒れるメディア〉が、 『怖い絵 泣く女篇』では同じく表紙作〈ジェーン・グレイの処刑〉と〈パリスの審判〉がいっとう好き。どれも絵画自体は美しいけれど、背後にある物語は戦慄必至。

[NEW!] ●B-030 文春文庫『名画の謎 陰謀の世界史篇』/ ●B-031 同『名画の謎 対決篇』

同じく中野京子による大人気シリーズ。『陰謀の歴史編』ではギリシャ神話の時代から薔薇戦争のリチャード3世、近代の産業革命までの時代の流れを名画にのせて縦横無尽に紹介。『対決編』では類似のテーマなのにちがう着目点や表現方法が光る名画をペアでとりあげてその比較検討を。どちらも読みごたえたっぷり。『陰謀の歴史編』では〈ラオコーン〉が、『対決編』では〈ムーラン・ド・ラ・ギャレット〉がいっとう好き。

[NEW!] ●B-032 ちくま文庫アフガニスタンの診療所から』

ブログ記事参照。部族の掟が生きる地にて。

想像力を求められる読書〜中村哲『アフガニスタンの診療所から』 - コーヒータイム -Learning Optimism-

[NEW!] ●B-033  文春文庫『生涯投資家』

ブログ記事参照。某発展途上国出身の知人曰く「優良株だの優良企業経営権だのは天竜人どもに献上されるものと相場が決まってるのさ。そこに外様が手を出そうとすればそりゃ大火傷だろうよ」だそう。

フジテレビ買収を決めた信念『生涯投資家』 - コーヒータイム -Learning Optimism-

 

[テーマ読書](未完 5 / 70)中国最高の現代小説70作品を読んでみた

2024年総集編。

2019年、中国政府が建国70周年を記念して、中華人民共和国最高の現代小説70作品を選出した。中国語を学ぶのによいし、政府がどのような価値観を推奨しているかを学ぶのにとてもよい。

目標は2030年までに全作読破。以下、選出された70タイトルとその作者。基本的に原文そのまま。邦訳があるものはそのタイトルも併記した。

 

1《風雲初記》


2《鉄道遊撃隊》


3《保衛延安》


4《三里湾》


5《紅日》


6《紅旗譜》


7《我們播種愛情》


8《山郷巨変》


9《林海雪原》


10《青春之歌》


11《苦菜花》


12《野火春風闘古城》


13《上海的早晨》


14《三家巷》


15《創業史》


16《紅岩》

未邦訳。1949年まで続いた第二次国共内戦(政権をめぐる国民党と共産党の内戦)の代表的な歴史小説。1961年に出版されてたちまちベストセラーとなった。作者らはその時期、共産党員として内戦に身を投じており、半自伝小説でもある。

舞台は1948年の重慶。当時政権をにぎっていたのは共産党と対立する国民党。迫害されていた共産党員たちが、新聞を地下出版する、国民党軍にゲリラ的襲撃をしかけるなどしてひそかに活動範囲を広めながら、国民党政府を打倒しようと地下活動するさまが主な内容。ちなみに軍事作戦は、小説終盤の集団脱獄をのぞいて正面切って描かれることはほぼなく、登場人物たちの会話や、捕らえられ監獄に収容された者の証言などとして間接的に語られる。

物語の半分近くは、当時重慶に実在していた政治犯監獄〈スラグ洞収容所〉〈白公館収容所〉を舞台にしているが、これは作者らが実際にそこに収監されており、集団脱獄にも加わったためである。

小説が書かれた動機は、監獄生活を通して知りあったすぐれた人々のこと、監獄内で繰り広げられていた政治闘争のことを後世に伝えるためである。共産党員たちは(寝返った者をのぞけば)英雄的存在として描かれ、共産党への忠誠心の深さ、どれほど心身を痛めつけられようとも理念をまげない心の強さ、大義のためなら己の生命をもかえりみない献身精神などが強調されている。一方、敵役となる国民党構成員は、政治犯を劣悪な監獄にとじこめて拷問や飢餓で虐待しながら、アメリカの政治顧問にはへこへこして取り入ろうとするなさけない姿として描かれる。

 

17《艶陽天》


18《大刀記》


19《万山紅遍》


20《東方》

 

21《青春万歳》


22《許茂和他的女児們》


23《冬天里的春天


24《沈重的翅膀》


25《黄河東流去》


26《蹉跎歳月》


27《新星》


28《鐘鼓楼》

 

29《平凡的世界》


30《第二個太陽》

 

31《紅高粱家族》

ブログ記事参照。

リアルな出来事に芸術的視点をまぶした印象派絵画のような小説〜莫言『赤い高粱』『続・赤い高粱』 - コーヒータイム -Learning Optimism-


32《雪城》

 

33《浴血罗霄》

 

34《穆斯林的葬儀》

 

35《九月寓言》

 

36《白鹿原》

 

37《長恨歌

 

38《馬橋詞典》

 

39《抉择》

 

40《草房子》

 

41《中国制造》

ブログ記事参照。

世紀末、中国長江沿いのある都市でのものがたり〜周梅森《中国製造》 - コーヒータイム -Learning Optimism-

 

42《尘埃落定》

 

43《突出重囲》

 

44《李自成》

 

45《歴史的天空》

 

46《亮剣》

 

47《茶人三部曲》

 

48《東蔵記》

 

49《雍正皇帝》

 

50《日出東方》

 

51《省委書記》

 

52《水乳大地》

 

53《狼図騰》

 

54《秦腔》

 

55《额尔古纳河右岸》

 

56《藏獒》

 

57《暗算》

 

58《笨花》

 

59《我的丁一之旅》

 

60《我是我的神》

 

61《三体》

ブログ記事参照。

SF小説、謎解きミステリー、哲学的思考実験としてもすばらしい〜劉慈欣『三体』 - コーヒータイム -Learning Optimism-

 

62《推拿》

 

63《湖光山色》

ブログ記事参照。

病めるときはそばにいたのに、健やかなるときはそばにいられなくなる〜周大新《湖光山色》 - コーヒータイム -Learning Optimism-

 

64《大江東去

 

65《天行者》

 

66《焦裕禄》

 

67《生命册》

 

68《繁花》

 

69《黄雀記》

 

70《装台》

[テーマ読書](未完 36 / 100)世界最高の文学100冊を読んでみた

2024年総集編。

ノルウェー・ブック・クラブが選出した「世界最高の文学100冊」(原題:Bokkulubben World Library)というものがあることを知り、全作読んでみることにした。

Bokklubben World Library - Wikipedia

目標は2030年までに全作読破。英語原著はできるだけ原文で読みたいけれど英語以外でも可。ルールはこれだけ。さらにせっかく読むのだから、読む前と読んだあとで自分の思考がどう変わったかをメモしておくと最高。

以下、選出された100タイトル。「ドン・キホーテ」が最高傑作であることを除けばとくに順番は定めていないらしいので、ウェブサイトで公開された順番そのまま。メモがないものは未読。

 

Chinua Achebe (b. 1930)
Things Fall Apart (Nigeria)(邦題《崩れゆく絆》)
ブログ記事参照。わたしたちが生まれ育ち、あたりまえだと信じている地域社会のありかたが、いかに簡単に崩れゆくか、なぜ崩れゆくか、植民地化前後のナイジェリアでの出来事を通して、考えさせずにはいられない傑作。わたしたちのやり方を、ほかの社会との相対的視点から見る必要があることを、いつでも思い起こさせてくれる名著。
ナイジェリアとイギリスの価値観が出会うとき〜チアヌ・アチェべ《崩れゆく絆》 - コーヒータイム -Learning Optimism-

Hans Christian Andersen (1805-1875)
Fairy Tales and Stories (Denmark)(邦題《アンデルセン童話集》)
子供の頃、最初に買ってもらったシリーズものがアンデルセン童話全集。全16冊。有名な人魚姫などの物語は1冊目にまとめてあったため、1冊目だけよく読んでボロボロになった。2冊目以降は大人向けの話が増えてきて、『雪の女王』『パンを踏んだ娘』『世界一の美しいバラの花』『食料品屋の小人の妖精』は何度も読み返した。子供の頃は意味がよくわからなかった。けれどいまならわかる。ある程度人生経験を積んでからわかるようになるのが、アンデルセン童話の魅力だと思う。

Jane Austen (1775-1817)
Pride and Prejudice (England) (邦題《高慢と偏見》)
ジェーン・オースティンの傑作恋愛小説。学生時代に読んだときには、娘たちに金持ちの夫をあてがってやろうと目の色変える主人公エリザベスの母親のあさましさにドン引きしたが、主人公一家が所属するジェントリ階級の女性は働くことができず、ほとんど財産も相続できず、裕福な男性に嫁がなければ生活が立ちゆかなくなる時代背景を知るにつれ、逆に資産家であるダーシーを拒むエリザベスこそがある意味変人だったのかもしれないと考えるようになった。頭の回転が速く、はっきりと物を言い、己の間違いから目をそむけないエリザベスは、わたしが想像する「いい女」のイメージにかなり影響を与えている。

Honoré de Balzac (1799-1850)
Old Goriot (France)(邦題《ゴリオ爺さん》)
初読時は主人公である没落貴族の末裔ラスティニャックが、ゴリオ爺さんの娘のひとり、ニュシンゲン夫人にあからさまに取り入るさまにドン引きした。しかし、当時のパリでは貴婦人たちがお気に入りの若者ーー美貌で聡明、野心あふれる者達ーーを恋人扱いし、見返りに出世を支援することがよくあったと知り、カルチャーショックを受けた。病死したゴリオ爺さんの墓前でラスティニャックが「成り上がってやる、勝負だ」などと独白したその足で、ニュシンゲン夫人との晩餐会に出かけるというラストシーンがなんとも気味悪く、貧乏で才気煥発な若者が、父親を金蔓としか思わず、金が尽きれば病死するにまかせるような女におべっかを使わなければ出世できない皮肉が忘れられなかった。社会の現実というものを考えるいいきっかけになったと思う。

 

 

Samuel Beckett (1906-1989)
Trilogy: Molloy, Malone Dies, The Unnamable (Ireland) (邦題: 三部作《モロイ》《マロウンは死ぬ》《名付けえぬもの》)

 

 

Giovanni Boccaccio (1313-1375)
Decameron (Italy)(邦題《デカメロン》)
 

 

Jorge Luis Borges (1899-1986)
Collected Fictions (Argentina)(邦題《伝奇集》)
 

 

Emily Brontë (1818-1848)
Wuthering Heights (England) (邦題《嵐が丘》)
エミリー・ブロンテの《嵐が丘》は英国文学史上最高傑作だと名高いけれど、初読時は異様にねちっこい性格の主人公ヒースクリフも、彼が執着する(あれを愛情とは思えなかった)キャサリンも狂気じみているとしか思えなかった。姉のシャーロット・ブロンテの名著《ジェイン・エア》初読時も、自分を世話する大人にいい顔すれば食べものをもらえるのにそうせず、変なプライドで意地張っているようにしか見えないジェインが好きになれなかった。ブロンテ姉妹の作品は、わたしにとって、喉に刺さった小骨のように不快感を残すけれど、なぜか忘れられない。ジェインやキャサリンのようになりたくないという意味で、思考に影響しているとは思う。

 

 

Albert Camus (1913-1960)
The Stranger (France)(邦題《異邦人》)
 

 

Paul Celan (1920-1970)
Poems (Romania/France)
 

 

Louis-Ferdinand Céline (1894-1961)
Journey to the End of the Night (France)(邦題《夜の果てへの旅》)
 

 

Miguel de Cervantes Saavedra (1547-1616)
Don Quixote (Spain)(邦題《ドン・キホーテ》)
 

 

Geoffrey Chaucer (1340-1400)
Canterbury Tales (England) (邦題《カンタベリー物語》)
 

 

Joseph Conrad (1857-1924)
Nostromo (England)(邦題《ノストローモ》)
 

 

Dante Alighieri (1265-1321)
The Divine Comedy (Italy)(邦題《神曲》)
 

 

Charles Dickens (1812-1870)
Great Expectations (England)(邦題《大いなる遺産》)

ブログ記事参照。ある程度人生経験を重ねてから読めばどんどん先に進まずにはいられなくなる。若いころに大切にしていたもの、軽んじていたものが、実は真逆であったと気づいたときには、たいていすでに取返しがつかない。《大いなる遺産》はこのことをこれ以上なく鮮烈に見せつける悲喜劇である。

<英語読書チャレンジ 3/100> Charles Dickens “Great Expectations”(邦題《大いなる遺産》) - コーヒータイム -Learning Optimism-

 

 

Denis Diderot (1713-1784)
Jacques the Fatalist and His Master (France)(邦題《運命論者ジャックとその主人》)
 

 

Alfred Döblin (1878-1957)
Berlin Alexanderplatz (Germany)(邦題《ベルリン・アレクサンダー広場》)
 

 

Fyodor M. Dostoyevsky (1821-1881)
Crime and Punishment (Russia) (邦題《罪と罰》)

 

 

The Idiot (Russia)(邦題《白痴》)

 

 

The Possesed (Russia) 邦題《悪霊》)

 

 

The Brothers Karamazov (Russia) (邦題《カラマーゾフの兄弟》)
ブログ記事参照。第一部でこれなのだから、作者の死により書かれなかった、アレクセイが主人公だという第二部はどれほどの傑作になりえただろう。

【おすすめ】読まずに死ねない〜ドストエフスキー《カラマーゾフの兄弟》 - コーヒータイム -Learning Optimism-

George Eliot (1819-1880)
Middlemarch (England)(邦題《ミドルマーチ》)
ブログ記事参照。副題のとおり、小説というより研究文献というべき作品。

<英語読書チャレンジ 44 / 365> G.Eliot “Middlemarch”(邦題《ミドルマーチ》) - コーヒータイム -Learning Optimism-

 

 

Ralph Ellison (1914-1994)
Invisible Man (USA)(邦題《見えない人間》)
 

 

Euripides(ca. 480-406 BC)
Medea (Greece)(邦題《メディア》)
中野京子著「怖い絵」シリーズでメディアの絵が紹介されたことをきっかけに知った。夫であるイアーソーンに裏切られたメディアが、滾る怒りのままにイアーソーンが結婚しようとしていた王女とその父親である国王を焼き殺し、さらにイアーソーンとの間にもうけた子供二人までみずからの手で殺して、駆けつけたイアーソーンを「おまえのせいだ!」と痛罵して去る、という物語は、いざとなればここまでする女の怖さを凝縮して顔面めがけてたたきつけられるようで、鳥肌が立った。

 

 

William Faulkner (1897-1962)
Absalom, Absalom! (USA)(邦題《アブサロム、アブサロム!》)
 


The Sound and the Fury  (USA)(邦題《響きと怒り》)
 

 

Gustave Flaubert (1821-1880)
Madame Bovary (France)(邦題《ボヴァリー夫人》)

 

 

A sentimental Education (France)(邦題《感情教育》)
 

 

Federico García Lorca (1898-1936)
Gypsy Ballads (Spain)(邦題《ジプシー歌集》)
 

 

Gabriel García Márquez (b. 1928)
One Hundred Years of Solitude (Colombia)(邦題《百年の孤独》)
ブログ記事参照。要約不可能、全文読むべし。

要約はできない。全文読むべし《百年の孤独》 - コーヒータイム -Learning Optimism-

 

 

Love in the Time of Cholera (Colombia)(邦題《コレラの時代の愛》)
 

 

Gilgamesh (ca. 1800 BC)
Mesopotamia(邦題《ギルガメシュ叙事詩》)
 

 

Johann Wolfgang von Goethe (1749-1832)
Faust (Germany) (邦題《ファウスト》)
ブログ記事参照。初読時はグレートヒェンを妊娠させて不幸のどん底に落としておきながらのうのうと魔女の夜会に参加するファウストのことを最低野郎だと思っていたが、彼が選んだ「時よ止まれ、お前は美しい」という場面があまりに衝撃的で、ファウストが生きることをどう思っていたのか考えずにはいられなかったが、わたしにはまだわからない。

ゲーテ《ファウスト 第1部》 - コーヒータイム -Learning Optimism-

ゲーテ《ファウスト 第2部》 - コーヒータイム -Learning Optimism-

 

 

Nikolaj Gogol (1809-1852)

Dead Souls (Russia)(邦題《死せる魂》)
 

 

Günter Grass (b. 1927)
The Tin Drum (Germany)(邦題《ブリキの太鼓》)
 

 

João Guimarães Rosa (1880-1967)
The Devil to Pay in the Backlands (Brasil)
 

 

Knut Hamsun (1859-1952)
Hunger (Norway)(邦題《飢え》)
 

 

Ernest Hemingway (1899-1961)
The Old Man and the Sea (USA)(邦題《老人と海》)
老漁師の目に映る海の描写がすばらしくて、海に近いところで生まれ育った思い出がよみがえって泣きそうになる。貧困にあえぐ老漁師はある日、これまでにないほど大きい、漁船よりもまだ体長があるカジキに餌を食わせることに成功するが、なお体力衰えないカジキを相手に、老漁師の孤独な闘いが始まる。少年は涙を流し、疲労の極致にいたった老漁師は眠る。人は自然の摂理のなかにあり、老いること、力弱ること、奮いたつこともまた自然の摂理であるということを思い出させ、恐れることではないという気持ちにさせてくれる作品。

Homer (ca. 700 BC)
The Iliad (Greece)(邦題《イーリアス》)
大学時代にひまをもてあまして図書館で読んだ。トロイア戦争終盤、ある事件をきっかけにギリシャ勢の勇士アキレウス(アキレス腱の語源)と総大将アガメムノーンが喧嘩し、アキレウスが戦場放棄してテントにこもってしまうという、3000年近く前に書かれたとは思えないほど人間臭く共感しやすい物語。ギリシアの神々が各陣営にわかれて人間の戦争に肩入れするのが面白い。アガメムノーンとアキレウスの喧嘩場面は現代にもそのままありそうで、何千年経過しても人間変わらねーなーと心底思ったことを覚えている。

The Odyssey (Greece)(邦題《オデュッセイア》)
子どもの頃、児童向け文学全集で読んだ。オデュッセウスが航海中、部下6人を怪物に食わせるか、船ごと破壊されるかという残酷な二択を迫られ、嘆きながらも部下6人の犠牲を選んだところ。ここが一番衝撃的だった。子どもの頃は、オデュッセウスが下した選択のせいで部下が死ななければならないのかと理不尽に思ったものの、大人になってからは、「効率良く味方を殺す」ことができなければ全滅するしかないときもあるのだと知った。早々に現実の冷酷さを思い知らされたといえる。

 

 

Henrik Ibsen (1828-1906)
A Doll's House (Norway)(邦題《人形の家》)
 

 

The Book of Job (600-400 BC) (Israel)(邦題《ヨブ記》)
 

 

James Joyce (1882-1941)
Ulysses (Ireland)(邦題《ユリシーズ》)
 

 

Franz Kafka (1883-1924)
The Complete Stories (Bohemia)

 

 

The Trial (Bohemia)(邦題《審判》)

[NEW!] ブログ記事参照。《訴訟》というタイトルの新訳。

カフカの描く認知の歪み〜フランツ・カフカ《訴訟》 - コーヒータイム -Learning Optimism-

The Castle (Bohemia)(邦題《城》)
[NEW!] ブログ記事参照。不条理文学といわれているが、現代の地方転勤者あるあるにも思える。

現代サラリーマンあるある!?〜フランツ・カフカ《城》 - コーヒータイム -Learning Optimism-

 

 

Kalidasa (ca. 400)
The Recognition of Sakuntala (India)(邦題《シャクンタラー》)
 

 

Yasunari Kawabata (1899-1972)
The Sound of the Mountain (Japan)(《山の音》)
ブログ記事参照。日本人読者の心に沁みるおだやかな短編小説連作集。

流れゆく時からふと汲みあげた小説〜川端康成《山の音》 - コーヒータイム -Learning Optimism-

 

 

Nikos Kazantzakis (1883-1957)

Zorba the Greek (Greece)(邦題《その男ゾルバ》)
 

 

D.H. Lawrence (1885-1930)
Sons and Lovers (England)(邦題《息子と恋人》)
 

 

Halldór K. Laxness (1902-1998)
Independent People (Iceland)
 

 

Giacomo Leopardi (1798-1837)
Complete Poems (Italy)
 

 

Doris Lessing (b. 1919)
The Golden Notebook (England)(邦題《黄金のノート》)
 

 

Astrid Lindgren (1907-2002)
Pippi Longstocking (Sweden)(邦題《長くつしたのピッピ》)
 

 

Lu Xun (1881-1936)
Diary of a Madman and Other Stories (China)(邦題《狂人日記》他)
ブログ記事参照。激動の時代に放たれた怒りと告発の叫びは、さまざまに政治利用されながら、今なお力強い。
家畜の安寧に甘んじるなという叫び〜魯迅《小説集・呐喊》 - コーヒータイム -Learning Optimism-

 

 

Mahabharata (ca. 500 BC) (India)(邦題《マハーバーラタ》)

 

 

Naguib Mahfouz (b. 1911)
Children of Gebelawi (Egypt)
 

 

Thomas Mann (1875-1955)
Buddenbrooks (Germany)(邦題《ブッデンブローク家の人々》)

 


The Magic Mountain (Germany)(邦題《魔の山》)
 

 

Herman Melville (1819-1891)
Moby Dick (USA)(邦題《白鯨》)
 

 

Michel de Montaigne (1533-1592)
Essays (France)
 

 

Elsa Morante (1918-1985)
History (Italy)(邦題《イーダの長い夜 ― ラ・ストーリア》)
 

 

Toni Morrison (b. 1931)
Beloved (USA)(邦題《ビラヴド》)
 

 

Shikibu Murasaki
The Tale of Genji (Japan)(《源氏物語》)
日本人なら説明不要の超有名古典だけれど、通読できた人はそれほどいないと思う。わたしもあらすじはわかるけれど読み通せたのはほんのわずか。けれど、《源氏物語》をきっかけに王朝文化に興味をもつようになったのだから、影響ははかりしれない。

あなたの知らない平安時代へようこそ〜山本淳子『平安人の心で「源氏物語」を読む』 - コーヒータイム -Learning Optimism-

 

 

Robert Musil (1880-1942)

The Man without Qualities (Austria)(邦題《特性のない男》)
 

 

Vladimir Nabokov (1899-1977)
Lolita (Russia/USA)(邦題《ロリータ》)
 

 

Njals saga (ca. 1300)  (Iceland)
 

 

George Orwell (1903-1950)
1984 (England)
ブログ記事参照。不快極まりないディストピア。これ以上説明する気にもなれない。けれど私はこの本を忘れることができないだろう。目を背けたい真実を突きつけられるからこそ不快極まりないのだから。

身震いするほどの不快感〜ジョージ・オーウェル《1984》 - コーヒータイム -Learning Optimism-

Ovid (43 BC-17 e.Kr.)

Metamorfoses (Italy)(邦題《変身物語》)

ブログ記事参照。ギリシャ神話の原典にして原点。

ギリシャ神話の元ネタはこの一冊〜オウィディウス《変身物語》 - コーヒータイム -Learning Optimism-
 

 

Fernando Pessoa (1888-1935)
The Book of Disquiet (Portugal)
 

 

Edgar Allan Poe (1809-1849)
The Complete Tales (USA)
ブログ記事参照。現代探偵小説の基礎を築いた点ではどれほど感謝してもしきれない。

さまざまなジャンルの小説の原型を打ち立てた傑作たち〜エドガー・アラン・ポー《全集》 - コーヒータイム -Learning Optimism-

 

 

Marcel Proust (1871-1922)

Remembrance of Things Past (France)(邦題《失われた時を求めて》)
 

 

François Rabelais (1495-1553)
Gargantua and Pantagruel (France)(邦題《ガルガンチュワとパンタグリュエル》)
 

 

Juan Rulfo (1918-1986)
Pedro Páramo (Mexico)(邦題《ペドロ・パラモ》)


 

Jalal ad-din Rumi (1207-1273)
Mathnawi (Iran)
 

 

Salman Rushdie (b. 1947)
Midnight's Children (India/England)(邦題《真夜中の子供たち》)
 

 

Sheikh Musharrif ud-din Sadi (ca. 1200-1292)
The Orchard (Iran)
 

 

Tayeb Salih (b. 1929)
Season of Migration to the North (Sudan)(邦題《北へ還りゆく時》)
ブログ記事参照。伝統と異文化のはざまのあがき。

20世紀アラブ文学の最高傑作〜サーレフ《北へ遷りゆく時》 - コーヒータイム -Learning Optimism-

 

 

José Saramago (b. 1922)
Blindness (Portugal)(邦題《白の闇》)
 

 

William Shakespeare (1564-1616)
Hamlet (England)(邦題《ハムレット》)
"Frailty, thy name is woman." "To be or not to be, that is the question."などの名台詞がとても多い、シェークスピア最高傑作のひとつ。復讐者ハムレットが、結局は自分自身が殺したポローニアスの娘、愛するオフィーリアを自殺で失い、息子レアティーズの復讐によって死亡するという連鎖的結末がひどく皮肉。なんともいえない後味悪さ。

King Lear (England)(邦題《リア王》)
あどけない子供時代にはじめて触れた「善人が報われない」お話が《リア王》だった。読んだ当時は言葉にできなかったけれど、「理不尽」「不条理」ということを感じたのは《リア王》が人生最初だった。とはいえ、たかだか末娘コーディリアが父親リア王への愛情を美辞麗句で飾り立てなかったくらいのことで、激怒して絶縁宣言するリア王がその後受ける仕打ちは、自業自得だといまでも思う。

Othello (England)(邦題《オセロー》)
恐怖。オセローが狡賢いイアーゴーの作り話に騙されて、新妻デズデモーナが浮気したのではないかと疑い始める瞬間がとてつもなく怖い。オセローがムーア人(北西アフリカのイスラム教徒のこと。とはいえオセロー自身はキリスト教に改宗している)で肌黒く、年配であることから、ヴェネツィア出身の若く美しい白人女性であるデズデモーナが本気で愛してくれているのか自信をもてなかったことが、彼女の浮気を疑った根本的原因である。そこを容赦無くえぐる悪魔のごときイアーゴーのやり口は、人間に疑いの心を起こさせ、操り、間違いをおかさせるのがいかに簡単かを見せつけているよう。恐怖にわななきながら一気読みした。

Sofokles (496-406 BC)
Oedipus the King (Greece)(邦題《オイディプス王》)
父親を殺し、母親を娶り、そのことが発覚してみずからの両眼を突いて失明したオイディプス王の衝撃もさることながら、フロイトが「父殺しは人がもつ根源的欲望である」などと説明したおかげで、空恐ろしいほどの影響をもつようになってしまった。スター・ウォーズからエヴァンゲリオンシリーズまで、息子が父親を越えようと悪戦苦闘する物語は星の数ほどあるけれど、オイディプス王はこれらの物語に〈核〉を与えたのだろう。

 

 

Stendhal (1783-1842)
The Red and the Black (France)(邦題《赤と黒》)
 

 

Laurence Sterne (1713-1768)
The Life and Opinions of Tristram Shandy (Ireland)(邦題《トリストラム・シャンディ》)
 

 

Italo Svevo (1861-1928)
Confessions of Zeno (Italy)
 

 

Jonathan Swift (1667-1745)
Gulliver's Travels (Ireland)(邦題《ガリヴァー旅行記》)
子どもの頃、児童向け文学全集で読んだ。「一本の麦、一本の草しか生えぬ荒れた地に、二本の麦、二本の草を生やすことができる人物……そういう人物こそ、つまらぬ政治の書物を何十冊も読んだ者よりも王にふさわしい」という巨人国の国王の言葉がひどく印象的で、それがわたしの読書経験の根底にあると思う。読書は必要だ、だが実践に勝てるものではない、と。

Lev Tolstoj (1828-1910)
War and Peace (Russia)(邦題《戦争と平和》)
ブログ記事参照。これは長編小説ではなく、ナポレオンのロシア侵攻という歴史事件を、分解し、解析し、歴史をつくるのは英雄ではなく無数の意志をもつ無数の人々であるという視点から再構築するという挑戦そのもの。主人公のひとりピエールがヘタレすぎるが、流されやすく、思いこみが激しく、常に自分の代わりにものごとを決めてくれる人を探しているようなピエールのふるまいは、わたしにも身に覚えがあることばかりでいたたまれなくなる。

歴史に人々が流されるか、人々が歴史をつくるか〜トルストイ《戦争と平和》 - コーヒータイム -Learning Optimism-

Anna Karenina (Russia)(邦題《アンナ・カレーニナ》)
ブログ記事参照。愚かな女の悲劇と切り捨てるのはたやすいけれど、アンナがこれほど魅力的なのは、彼女が苦悩しながら、女性に課せられたさまざまなしがらみを身にまといながら、望むままに生きようとしたためかもしれない。

男と女の視線がからみあうとき《アンナ・カレーニナ》 - コーヒータイム -Learning Optimism-

The Death of Ivan Ilyich and Other Stories (Russia)(邦題《イワン・イリイチの死》)

ブログ記事参照。中年以降ではめちゃくちゃ刺さる。この点では《タタール人の砂漠》も必読。

【おすすめ】最後まで読むには勇気がいる〜トルストイ《イワン・イリイチの死》 - コーヒータイム -Learning Optimism-

Anton P. Tsjekhov (1860-1904)

Selected Stories (Russia)
ブログ記事参照。さまざまな短編小説と戯曲の多くは「ここではないどこか」「いまの生活ではないなにか」を求める人々の苦難と葛藤を描写している。中年過ぎればめちゃくちゃ刺さる。「いま、ここを離れればきっとなにもかもうまくいく」という夢が、家庭、子供、仕事……などにとりこまれてしだいに消え失せ、ついには何者にもなれないまま、いまの境遇を受け入れざるを得なくなるから。
ここではないどこか、いまの生活ではないなにか〜アントン・チェーホフ《チェーホフ全集》 - コーヒータイム -Learning Optimism-

Thousand and One Nights (700-1500) (India/Iran/Iraq/Egypt) (邦題《千夜一夜物語》または《アラビアン・ナイト》)

子どもの頃、「イスラム教」という言葉すら知らないときに児童向け文学全集で読んだ。私がはっきり覚えているのは海の信心深い人魚アブドーラと陸の信心深い人間アブドーラの物語。人魚アブドーラは、人間アブドーラの信心深さを好ましく思い、友情を育むが、人間アブドーラが、人間たちは葬式で泣くのだと語ることで人魚は激怒する。うろ覚えだがこんな言い分だったと思う。

「死ぬことは神さまに生命をお返しすることですよ!海ではみんな死ぬことを喜ぶのです。お葬式は、お祭りですよ!神さまに生命をお返しすることを悲しむなんて、それでよく信心深いと言えたものですね!おおいやだ!おまえさんとは、もう、これっきり!」

かんかんに怒って海に帰ってしまう人魚の言い分が、子どものころの私には全然理解出来なかった。いまでも理解出来るとは言いがたい。ただ、〈千夜一夜物語〉に繰返し出てきて、あこかれをもって語られる繁栄都市バグダッドを、幼い日の私は記憶にとどめた。

Mark Twain (1835-1910) 

The Adventures of Huckleberry Finn (USA)(邦題《ハックルベリー・フィンの冒険》)
ブログ記事参照。黒人奴隷と交流すること自体が恥ずべきことだと考えられていた南北戦争前後、白人少年ハックルベリー・フィンが逃亡奴隷のジムとしだいに心を通わせながらも宗教的良心に苦しむところは、いかにその時代の価値観から逃れることが困難であるのかをわたしたちに見せつける。無自覚にすりこまれる価値観だからこそ恐ろしい。そのことを自覚させてくれるすばらしい物語。

黒人として、友達として〜マーク・トウェイン《ハックルベリー・フィンの冒険》 - コーヒータイム -Learning Optimism-

 

 

Valmiki (ca. 300 BC)
Ramayana (India)(邦題《ラーマーヤナ》)
 

 

Vergil (70-19 BC)
The Aeneid (Italy)(邦題《アエネーイス》)

ブログ記事参照。ローマ帝国建国神話。ローマ帝国建国神話〜ウェルギリウス《アエネーイス》 - コーヒータイム -Learning Optimism-

 

 

Walt Whitman (1819-1892)
Leaves of Grass (USA)(邦題《草の葉》)

 

 

Virginia Woolf (1882-1941)
Mrs. Dalloway (England)(邦題《ダロウェイ夫人》)
ブログ記事参照。ある女性の心象風景を描く。「意識の流れ」という新手法〜ヴァージニア・ウルフ《ダロウェイ夫人》 - コーヒータイム -Learning Optimism-

 

 

To the Lighthouse (England)(邦題《灯台へ》)

 

 

Marguerite Yourcenar (1903-1987)
Memoirs of Hadrian (France)(邦題《ハドリアヌス帝の回想》)

<英語読書チャレンジ 95-96 / 365> “What is History?” / “A Millions Year in a Day: A Curious History of Daily Life”

英語の本365冊読破にチャレンジ。原則としてページ数は最低50頁程度、ジャンルはなんでもOK、最後まできちんと読み通すのがルール。期限は2027年10月。20,000単語以上(現地大卒程度)の語彙獲得と文章力獲得をめざします。

むさぼるように読んだ。歴史について、その役割について、現代史を学ぶ意味について、貴重極まりないさまざまな示唆、わたしがずっともやもやしながら言語化出来ずにいたいろいろな叙述を、この本は惜しげもなく与えてくれた。
まず〈歴史とはなにか?〉についてわたしの考え。

過去のあらゆる人々が生きたあらゆる人生のうちに起こったできごとを、❶書き言葉を操ることができる知識階級が、❷なんらかの信念と目的意識のもと、❸取捨選択して、❹時には意味付けをしたうえで記録した。すべてが現代まで残されているわけではなく、戦乱だの焚書だの言論統制だので散逸した記録も多い。現代の歴史家は残されたもののうち❺信憑性が高いと判断されるものを、❻なんらかの信念と目的意識のもと、❼取捨選択し、❽歴史家が生きるその時代、その社会の一員として育まれた価値観や目的意識から、❾過去と現在をつなぐなんらかの文脈の中に位置付けて解釈したものが、いま、わたしたちが読む歴史書である。❶〜❾までめちゃくちゃ人間の主観が入っているのがよくわかる。

で、〈歴史とはなにか?〉について専門家がガチ語りしたのが、本書、わたしが尊敬するスゴ本ブログも紹介している E.H.カーの『歴史とは何か』。

新訳で劇的に面白くなった名著『新版 歴史とは何か』(E.H.カー): わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる

My first answer therefore to the question, What is History?, is that it is a continuous process of interaction between the historian and his facts, an unending dialogue between the present and the past.

歴史家は「史実」(それ自体が記録者の思想、認知、取捨選択などに左右される)の奴隷ではないし、「史実」が歴史家に隷属するのでもない。歴史とは、歴史家と「史実」とのあいだにつづく相互作用であり、現在と過去との間の尽きることなき対話である。これがカーの結論。

カーは本書でさまざまな歴史観を批判している。歴史とは公的記録の切り貼り寄せ集めではないし、歴史家自身の考えに沿う解釈ができるものを恣意的にピックアップする活動でもない、という具合。後者については「○○歴史書によれば△△は古来よりわが国固有の領土である」系の主張を聞き慣れているわれわれからすればうなずける部分が多々あり、わたしとしてはこの部分に多くの学びがあった。人間社会をシステムの観点からとらえなおすという考え方が出てきたのがたかだか18世紀終わりだということは衝撃的。これを土台としたさまざまな政治思想や政策は、今日ではあたりまえのように存在する。

In my first lecture I said: Before you study the history, study the historian. Now I would add: Before you study the historian, study his historical and social environment.

Well, just look around you. Every single aspect of your life is the by-product of history, thousands of years in the making.

現代のある土曜日、わたしたちがどう過ごすかを話のとっかかりにして、わたしたちが日常的に使用しているものがどのような歴史をたどって今ある姿になったのかを説明していく。これがおんもしろい!

わたしたちは朝目覚めるだろう。スマホ画面を見て、起きる時間だとわかるーーちょっとまった!【時間の数え方はどうして今のように24時間制になった? (*1) 】を考えてみよう。

眠い目をこすりながらトイレに立つーースッキリする間に【トイレができたのはいつ?(*2) 】を振り返るのも悪くない。なにを食べようか考えながらコーンフレークとミルク、ベーコンとハーブソーセージ、缶入りベイクドビーンズを出してくるーー【人類が牛乳を飲むようになったのはそれほど昔のことではないが、豚はそれよりも古くから食用とされ、保存食としてもすぐれていた (*3)(*4) 】【しかし缶詰の発明はまさに革命的であった (*5) 】のだ。

(*1) 古代ローマ人が昼と夜をそれぞれ12の時刻に分割したのが始まりとされる。より正確に言えば、24時間制は古代エジプトで生まれ、ユリウス・カエサルがローマに持ち帰りユリウス暦として広めたという。初期は昼と夜の長さが季節により違うことから「1時間」の長さもまちまち。14世紀にシリアの天文学者イブン・シャーティルが初めて1時間の長さを60分に統一したとされる。

(*2) トイレの起源は数千年前に遡り、インダス川沿いにある青銅器時代ハラッパー遺跡では、座って用を足すタイプのトイレや、汚物を流し去る下水システムの原型がみられるという。

(*3) 牛乳が飲まれるようになったのはたかだか7500年程度前からといわれている。乳糖を分解できるラクターゼという酵素をつくる遺伝子が発現し、牛乳を消化できるようになったためである。

(*4) 豚の家畜化が始められたのはおおよそ9000年前の中東とされる。古代エジプト人は豚肉を使った保存食のつくり方をすでに心得ていた。著者は「まあ古代エジプト人はご存知の通りミイラ作りにかけてば経験豊富だからね」とジョークを飛ばしている。

(*5) ナポレオン・ボナパルトが、優れた陸軍糧食作製方法を募集したのが、缶詰誕生のきっかけになった話は有名。当時応募してきたフランスの菓子職人ニコラ・アペールはガラス瓶に食品を密封して加熱するやり方を提案した。彼の発明にヒントをえたPhillipe de Girardというフランス人がブリキ缶を利用する方法を思いついたが、フランスでは起業が難しく、当時ナポレオン戦争の敵対国であったイギリスのピーター・デュランにアイデアを売りこみ、ブリキ缶詰が英海軍糧食に採用されたといわれる。なお、細菌が発見されたのはここからさらに50年程後である。

 

日常生活で見るものの歴史を紹介するという試みはとても面白いけれど、大切な対象が抜けているーー日常生活を営む人間自身だ。これについては著者は最終章で述べているにとどめる。歴史を、日々の営みを繰り返すのは、その中に生きる人々である。

 

<英語読書チャレンジ93-94 / 365> “Best American Science and Nature Writing” 2013 / 2014

英語の本365冊読破にチャレンジ。原則としてページ数は最低50頁程度、ジャンルはなんでもOK、最後まできちんと読み通すのがルール。期限は2027年10月。20,000単語以上(現地大卒程度)の語彙獲得と文章力獲得をめざします。

 

Best American Science and Nature Writing 2013

2013年に公表された科学に関係するエッセイのうち、珠玉の27篇を収録。前書きではガリレオ・ガリレイの故事 (*1) を引き、本書に収録された文章は、人々が見たいものではなく、見えるものを見るのを手助けすると説く。

この観点から選ばれたエッセイはどれも十二分に好奇心をかきたてる。わたしたちがいつのまにか身につけた思いこみーーありのままの自然 (*2) 、人間のみがもつ言葉 (*3) 、などなどーーに気付かされる。わたしが読み入ったのはマールブルグ病について書かれた "Out of the Wild". 奇しくも2024/10/1にルワンダで初めてマールブルグ病が流行していることが報道され、SNSではルワンダ帰りの感染者が軽率にも公共交通機関で移動したために駅構内が封鎖されたというポストがみられた。このエッセイは熱帯雨林の奥深くから人間社会に姿を現したマールブルグウイルスを通して、変異を続けるウイルスと人類とのたたかいを活写する。

(*1)  ガリレイは1610年に出版した "Sidereus Nuncius" (Starry Messenger, 邦訳『星界の報告』) で、望遠鏡で彼が見たものをまとめ、月には山と谷があること、木星には4つの衛星があることを公表した。しかし、カトリック的宇宙観ーー天体は凸凹などない完璧なものであり、すべての天体は地球を中心に公転するーーに凝り固まった人々は望遠鏡をのぞけば見えたはずのものを見ようとせず、ガリレイをやみくもに批判した。

(*2) 間接的影響まで入れれば、人間活動に影響されていないいわゆる「手付かずの自然」はほぼ存在しないといっていい。わたしたちがイメージする森や谷やそこに棲息する野生動物たちは、ある意味では、飼い慣らされ、穏やかになったあとの姿である。

(*3) 旧約聖書の価値観では、人間は「生きとし生けるものの主たるために」創造された。このため【人間をほかの動物と区別するものはなにか】という問いはきわめて重要な意味をもつ。言葉、思考能力、自己認識能力などがよく挙げられるが、本書では、チンパンジーやイルカにもこれらの萌芽があることを紹介する。

Best American Science and Nature Writing 2014

2014年に公表された科学に関係するエッセイのうち、珠玉の26篇を収録。本年度の前書きのテーマはずばり気候変動。産業革命に伴う大規模な温室効果ガスの放出により、気温が上昇し、ハリケーンをはじめさまざまな影響が生じはじめているーーそれでも人類が反省しないのであれば、本書に収録されたエッセイが彼らの目を覚めさせるのに一役買うであろう、というわけ (*4)

本書に収録されたエッセイのうち、わたしのお気に入りは "The Great Forgetting" (*5)。航空機事故をサンプルに、自動化に頼りきるあまりに人間が犯しがちなミスーー注意力散漫になること、システムデータを盲信すること、いざシステムが役立たなくなったときに危機対応する能力が退化すること、などなどーーを皮肉な調子で説明する。ようするに、他人であろうがコンピュータであろうが、だれかが代わりにやっていると思えば、人間、サボるのである。「メールのスペルチェック機能があると思えば、自分が書いているものにさほど気を遣わなくなる」。秀逸な例えだ。

(*4) 2022年に国連が出した報告書 "The Closing Window"によれば、温室効果ガス排出量において上位7国・地域は、上から順に中国、アメリカ、インド、EU27ヶ国、インドネシア、ロシア、ブラジル。この7ヶ国プラス国家間輸送で、実に全世界の55%の温室効果ガスが排出されている。

(*5) このタイトルを見てわたしがまず連想したのはディケンズの《大いなる遺産》(原題 "Great Expectations")。さしずめ本エッセイのタイトルは「大いなる忘却」か。