コーヒータイム -Learning Optimism-

18歳のわが子に読書をすすめるために、まずわたしが多読乱読しながらおすすめを探しています。英語書や中国語書もときどき。

<英語読書チャレンジ 6/100> Patrica Foster “Python Programming for Beginners: A Kid’s Guide to Coding Fundamentals”

思いつきで英語の本100冊読破にチャレンジ。ページ数100以上、ジャンルはなんでもOK、最後まできちんと読み通すのがルール。期限は2023年3月末まで。

 

なぜこの本を読むことにしたか

なぜわたしはこの本を読むために時間を使うのか。

①世界の見方を根底からひっくり返す書物、

②世界の見方の解像度をあげる書物、

③好きだから読む書物

この本は②。最近気になる投資分野として、IT関連技術についての初心者向け解説書を手当たり次第に読んで勉強している。ちなみにほかに気になるのはエネルギー、化学産業(とくに医薬品)、食品、あとは不動産。プログラミングは大学時代にちょこっとかじっただけだから、まずは入門書の中でも基礎から説明してくれる児童向け解説書を読んでみた。

 

本書の位置付け

本書は10歳〜14歳のプログラミング未経験者を想定して、大人の監督者のもとで学習することを前提としている。Python言語のダウンロードの仕方から始まり、プログラミングの基礎、用語、考え方などについてやさしい説明を与えたあと、テーマごとに演習問題に取組ませることで、読者が段階的にPythonに習熟出来るようつくられている。たとえばプログラミングは①入力 (Input) 、②出力 (Output)、③演算 (Math)、④条件付き実行 (Conditional execution)、⑤反復 (Repetition) を必ず含むということや、Pythonに標準搭載されている統合開発環境 (Integrated DeveLopment Environment, IDLE) の利用の仕方、などから説明している。

 

本書で述べていること

Pythonプログラミング言語としてシンプルな構造をもち、初心者がプログラミングを始めるにあたりPythonを選択するのはすばらしいことである。

たとえば、Pythonでは変数が整数 (Integer) なのか、あるいは浮動小数 (Floating point numbers) なのか、コンピュータが入力値を参照して判別してくれるし、変数は特定のデータタイプをもたせないことができる(すなわち、整数としたある変数に、後から文字列も格納できる)。ほかのプログラミング言語ではプログラマー自身が定義しなければならない。

基本的な事項を学んだあとは、Pythonに標準装備されているモジュール "Turtle" でカメのお絵描きを楽しむ。カメの歩みで図形を描いてみたり、カメの色を変えてみたり、さまざまな視覚表現を楽しむ。いわば、Windowsに標準装備されているお絵描きソフト・ペイントブラシのPython版体験であろう。

 

感想いろいろ

海外の児童向けプログラミング本を読むのは初めてだけれど、子どもが面白がってくれるようよく工夫されていて、たとえ話(「変数とはいわばコンテナみたいなもので、中身を変えることができるんだ」「繰返しループはきみたちがゲームをするときによく見るものだ。同じバトルを何度か繰返すことがあるだろう?」)、遊び心満載のプログラミング例がたくさんあるから、大人が読んでも勉強になる。

 

あわせて読みたい

プログラミングのみならず、アルゴリズムを学ぶには『Pythonで学ぶアルゴリズムの教科書』が良い。高校数学程度のベクトルや行列の知識があればなおわかりやすいが、なくても読み進められる。

本書ではデータ構造や探索方法をはじめ、さまざまなアルゴリズムをプログラミング例題とともに学ぶことができる。たとえばデータ構造としては以下のものがあるが、「木」のデータ構造(および木探索)はディープラーニングでよく使用される。

  • スタック(最後の入力データを最初に取り出す)
  • キュー(最初の入力データを最初に取り出す)
  • リスト(データの前後のつながりとデータそのものがセットになる構造)
  • 木(データが枝分かれして伸びていく形式)
  • グラフ(複数のノードが線で結ばれた形式)

著者はアルゴリズムについてこう述べている。

もちろんアルゴリズムは高速に越したことはないですが、高速な処理ほど高度な内容になり、実装に時間がかかる傾向にあります。複数のアルゴリズムを学び、色々な知識を身につけ、開発するソフトウェアの内容やハードのスペックに応じてアルゴリズムを使い分けられるようになれば、一流のプログラマーと言えるでしょう。

コンピュータの基礎教養としてパターソン&ヘネシーの教科書は外せない。参考までに私が読んだときの感想をおいておく。

【おすすめ】コンピュータサイエンス専攻必携の教科書〜パターソン&ヘネシー『コンピュータの構成と設計(第5版)』 - コーヒータイム -Learning Optimism-

 

Pythonはよく機械学習向きのコンピュータ言語として紹介されるけれど、機械学習人工知能についての必読書として『人工知能は人間を超えるか?』がある。参考までに感想をおいておく。

【おすすめ】『人工知能は人間を超えるか ディープラーニングの先にあるもの』(松尾豊著) - コーヒータイム -Learning Optimism-

<英語読書チャレンジ 5/100> Glendy Vanderah “Where the Forest Meets the Stars”

思いつきで英語の本100冊読破にチャレンジ。ページ数100以上、ジャンルはなんでもOK、最後まできちんと読み通すのがルール。期限は2023年3月末まで。

表紙も内容もとても素敵な小説。英語表現が平易ですらすら読めるし、日常会話がウィットに富んでいるためとても楽しい。

私の一番のお気に入りはジョーの親友タビー。ジョーが乳がんのため乳房切除術を受けた2日後に生きた子羊(!!)を病室に差し入れ(!?)、ジョーに哺乳瓶を手渡して「おっぱいなんている? ミルクをやりたきゃほかにもやり方はあるわよ(意訳)」と言い放ったエピソード、最高にクレイジーで好き。

 

ジョー(ジョアンナ)は野鳥を研究している博士課程学生。2年前にがんで母親を亡くし、自身もがんにむしばまれて乳房切除術と卵巣摘出術を受けた。まわりのなんともいえない視線に傷ついたジョーはがむしゃらに研究に打ちこみ、人のまばらな田舎町や人里離れたところでの野鳥観察に勤しんでいた。

ある夏、研究のため夏の間借りているコテージに、9歳くらいの裸足の女の子が現れる。女の子は自分をおおぐま座の風車銀河(※ M101のこと。おおぐま座にある大きな渦巻銀河)から来た地球外生命体であると名乗り、教育訓練の一環として、地球上で5つの奇跡を目撃するまで帰れないと話す。

ジョーは女の子の訴えを妄想と片付け、裸足であることから近隣住民だろうとあたりをつけて家を聞き出そうとしたり、女の子を知る人を見つけようとしたり、保安官に連絡したりと悪戦苦闘するが、どうしても女の子の家を見つけられない。仕方なく同行させた野鳥観察のフィールドワークで、卵から孵ったばかりのひな鳥を見た女の子は大興奮して「これは奇跡よ!」と言う。田舎町に住んでいてひな鳥を見たことがないなどありえるのだろうか? ジョーはどうしても納得出来ないまま、しかし女の子をほうっておくことはもうできなかったーー

 

自分をイレギュラーな存在だと主人公に名乗る女の子は、『魔女ジェニファとわたし』のシチュエーションに似ているし、偏屈な性格の人と一緒に星空をながめながら人間関係をあたためるのは、『真夜中のピクニック』で少年ゲントがおじいちゃんとともに経験したことそのもの。どちらも児童文学ながらなかなかの傑作。

"Where the Forest Meets the Stars" は、もっと緩やかに、時間をかけて、心のまわりを幾重にも覆った秘密のベールを一枚一枚脱がせていき、素直な気持ちを明らかにしていく。ジョーは「おおぐまちゃん」と呼ぶようになった女の子のことをコテージの隣人(といってもアメリカの田舎町のことだから車で移動する距離である)であるガブ(ガブリエル)に相談する。交流を深めるにつれて、彼女のがんと乳房切除術のことがガブに知られてしまい、さらにガブがうつ病で大学を中退したこと、彼の精神疾患の根本的原因が家族にあることを知る。

おぐまちゃんのことで協力関係になったりすれ違ったりしながら、ジョーとガブはお互いの孤独にこわごわとふれてゆく。あたかも二匹のハリネズミが暖を取るために身を寄せあおうとしながら、相手を針で傷つけないよう慎重に距離を測るように。

ふたりのすぐそばにはいつも、人間社会から身を隠すことができる自然風景が広がる。野鳥観察。森林の中での水浴び。夏の嵐。花咲き乱れる庭のある一軒家。満天の星空。コテージのそばの焚き火。人間社会に疲れたふたりは、人間がほとんどいないところでお互いの孤独を抱きしめるようにすごす。いつか人間社会に戻らなければならないことをーーいつまでも逃げ続けるわけにはいかないことをーー心のどこかで知りながら、この時間がこのまま続けば良いと願い、現実逃避をつづける。

 

いずれジョーとガブは現実にもどらざるをえない。本人たちも読者側もよくわかっている。夢には終わりがあるのだから。

ジョーがガブとともにイリノイ大学を訪れる場面は痛みをともなうけれど、みごとな場面でもある。ジョーはガブを叱咤激励して現実に目を向けさせようとしながら、自分自身には愛情の名のもとに筋の通らないふるまいを許し、それをがん患者であるからと言いわけするさまは、悲しくもあるし、コメディのようでもある。結局「愛があれば無理が通る」式のハッピーエンドにおさまるのがやや不満だけれど、それ以外はとても面白い。

アーサー王と円卓の騎士たちの騎士物語と悲恋物語〜ブルフィンチ『アーサー王物語』

 

アーサー王物語はただの伝説ではない。イギリス文化に溶けこみ、空気や水のように、普段意識することはないけれど、あるのがあたりまえであり、深層水のように意識の底流の一部をなす。

およそヨーロッパの物語や戯曲や詩歌などといった創作物が、ギリシャ神話やホメーロスや聖書を抜きには語れないように、アーサー王物語(と、もちろんシェイクスピア)抜きではどんなイギリス文学を語るのも難しい。日本人であれば、《古事記》を読んだことがなくともイザナギやアマテラスやヤマタノオロチの名前は誰もがどこかで耳にする。同じように、アーサー王物語自体は知らずとも、数多くの文学作品はその影響を知らず受けており、読み手にもそれを伝えるーーそういうものだ。たとえば《ハリー・ポッター》シリーズにはマーリン勲章というものが登場するが、イギリス人ならすぐに、アーサー王物語の大魔術師マーリンを思い浮かべることだろう。マーリンはアーサー王の父親ウーゼル王が人妻イグレーヌに横恋慕したとき、魔法でウーゼル王を彼女の夫であるティンタジェル(コーンウォール)公ゴロイスの姿に変え、逢引を手助けしたというから、21世紀の価値観からするとちょっとどうなのかと思わなくもないが……。

 

本書はアーサー王物語を読みやすい語り口でまとめたもの。数百年語り継がれてきた伝説によくあることだが、アーサー王物語にもさまざまな分岐があり、本書はたぶんそのうちもっとも有名なものを採用していると思われる。

ウーゼル王とイグレーヌの間に生まれたアーサーは、十五歳で父を亡くしたあと、奇蹟の剣エクスカリバーを抜いたことでブリテン島の王と認められる。かの円卓の騎士たちのための円卓は、大魔術師マーリンがアーサー王のために用意した。

マーリンはつぎにカーライルへ行って円卓を準備しました。それはブリテンの立派な貴族たちがこぞって座れるように作られたものです。この名誉ある席に列なることを許された貴族たちは、みな誓いをたててつぎのような義務を負いました。つまり、たがいに自分の生命を賭してたすけあうこと。それぞれ最も危険な冒険を試みること。必要なときには修道士のような孤独な生活をたえしのぶこと。召集を受けた場合はただちに駆けつけ戦闘の用意をすること。戦闘にあたっては、夜の訪れによって引き分けとならぬ限り、敵を撃ち破るまで絶対に戦闘から身をひかぬこと、などでした。

円卓の騎士のうちかなりの人数はアーサー王と親戚関係にあったらしい。最も有名な騎士のひとりガウェインは、イグレーヌと前夫ゴロイスの娘でありアーサー王の異父姉にあたるモルゴースの息子。彼の3人の弟たちも円卓の騎士に名を連ねている。さらに、勇猛な騎士でありながらアーサー王を裏切り、王妃ギネヴィアと不倫関係を結んだモルドレッドも、モルゴースの妹であり魔女のモルガン・ル・フェイを母に持つため、アーサー王の甥にあたる。(モルドレッドはモルガンとアーサー王の不義の子という説もあり、またモルゴースとモルガン・ル・フェイは同一人物扱いされることも。ややこしい)

 

アーサー王物語の騎士道精神と中世冒険物語には大いにわくわくさせられるが、恋愛関係は一転してかなり込み入った後ろめたいものが多い。

王妃ギネヴィアは恋多き女性だったようで(一説にはアーサー王を嫌った魔女モルガン・ル・フェイの呪いにより次々不義を重ねたとか)、モルドレッドのほかに、比類なき気高い騎士であるランスロットとも恋愛関係を結んでいるし、もう1人の円卓の騎士、バグデメイガス王の息子マレアガンスからは片思いされたあげく誘拐沙汰になる。

ランスロットは王妃一筋であったものの、ペレス王の娘であるカーボネックのエレインとの間に、後に円卓の騎士として聖杯探索に成功するガラハッドをもうけている(エレインはランスロットに薬を盛り、ギネヴィアだと錯覚させて関係をもったというから恐れ入る)。また女性から好意を寄せられることも少なくなく、それに王妃が嫉妬心を露わにするものだから痴話喧嘩も絶えない。

ランスロットと肩を並べる誉高き騎士トリスタンは、やはりランスロットと同じく報われない恋ーー伯父コーンウォール王マルクの妻である美しいイゾルデへの恋ーーを抱えていた(しかし美しいイゾルデとトリスタンがもともと想いあっていたのをむりやり横取りしたマルクの自業自得でもある)。トリスタンは紆余曲折を経てブルゴーニュのホウエル王の娘、白い手のイゾルデを娶り、聖杯探求の旅に出るが、志半ばで斃れる。ちなみに彼の最期にかかわる白い帆と黒い帆の問答はギリシャ神話由来。

騎士物語と悲恋物語がからみあい、アーサー王と円卓の騎士たちの悲劇は完成する。さまざまな創作物にインスピレーションを与え続けるアーサー王物語の入門書として、本書はこの上なくふさわしい。

<英語読書チャレンジ 4/100> Karen McQuestion “The Moonlight Child”

思いつきで英語の本100冊読破にチャレンジ。ページ数100以上、ジャンルはなんでもOK、最後まできちんと読み通すのがルール。期限は2023年3月末まで。

Karen McQuestionはアメリカの人気小説家だけれど、彼女の作品を読むのはこれが初めて。Amazonで高評価であり、満月に照らされた煙突のある家が描かれた表紙がとても美しいので興味を抱いた。

読んでみるとなかなか面白い。英語表現はわかりやすくて日常会話表現がたくさんあり(“Heading out now.” =「いってきます」、“Thanks, but no thanks.” =「けっこうね、でも結構よ」)、場面描写はしっかりしてイメージしやすい。虐待や薬物乱用などの社会問題をとりあげながら、説明しすぎずほのめかす程度にとどめ(しかし分かる人にはゾッとする)、小説としての面白さと両立させているバランス感覚も見事。おそらく小中学生がメインの読者層だと思うが、全体的に勧善懲悪の物語であり、善とされるものと悪とされるものとが、わかりやすく対照的に描写される。

 

小説は18歳で失踪した娘モーガンの帰りを3年間待ち続ける母親の描写から始まる。ここから一転、主人公シャロンの視点にうつることで、これから始まる物語がモーガンの失踪と関連することを示唆する。

シャロンは善良で親切、おっとりした性格のシングルマザー。定年退職後、アメリカ中部、五大湖に面するウィスコンシンの高級住宅街で一人暮らしをしている。シャロン自身はそれほど裕福ではなく、家はもともと来客用コテージであったものでさほど広くないが、彼女はここでの生活に満足している。シャロンの裏庭はシュゼットとマシュー・フレミングの家に面している。働きざかりで10代のの一人息子をもつフレミング家との交流はあまりないが、変わったところのないごく普通の家庭に思えた。

月食を見るために遅くまで起きていた冬の寒い夜、シャロンはフレミング家のキッチンで5、6歳の女の子が洗い物をしているのを窓越しに見る。翌日、企業関連法規専門の弁護士をしている40代の娘エイミーから連絡があり、CASA(Court Appointed Special Advocates。ボランティア団体であり、メンバーは定められた研修を受け、虐待や育児放棄で傷ついた子どもたちの保護観察などを行う)対象となっているニキータという少女をしばらく預かってほしいと依頼される。シャロンニキータに自分が見たものを相談し、二人はフレミング家の秘密を探りはじめるーー。

 

この小説は章ごとに視点が切り替わる。それぞれの登場人物の過去、考え方、行動、現状をどう見ているかを重ねることで、ひとつの出来事をさまざまな面から立体的にながめる。これはバージニア・ウルフが《ダロウェイ夫人》で試みた「人物の主観的心情描写をひたすら重ね合わせることで物語を浮かび上がらせる」手法に似ている。

読み進めていくと、アメリカらしい価値観がこれでもかと詰めこまれているのがわかる。シャロンは愛情深いながら芯が強く、ほんとうの祖母のように、若者らしい迷いをみせるニキータを導く。ニキータは逆境から這い上がり、勇気ある行動により彼女を支援してくれる人々を勝ち取り、自立への一歩を踏み出す。フレミング家の息子ヤコブは太っちょのいじめられっ子ながら、親切心と正義感をもち、弱きものを救うために力を尽くす。フレミング家に隠されていた少女ミアは無垢で従順な存在として、ついにほんとうの家族にめぐり合う。エイミーをはじめとする専門家たちは親切で思いやりがあり、ニキータやミア、さらにはヤコブのあるべき権利が侵害されないよう全力でサポートする。一方、冷酷で無慈悲な人々には、それ相応の報いが与えられる。読後感はさわやかだ。

……ひねくれ者の私は、つい、似たようなテーマでも読後感最悪といわれる『隣の家の少女』を読みたくなってしまうが、後悔しない自信がないため、心に余裕があるときに読む用にとっておくつもり。

ブロックチェーンとはなんだろう?〜杉井靖典『いちばんやさしいブロックチェーンの教本』

なぜこの本を読むことにしたか

なぜわたしはこの本を読むために時間を使うのか。

①世界の見方を根底からひっくり返す書物、

②世界の見方の解像度をあげる書物、

③好きだから読む書物

この本は②。最近気になる投資分野として、IT関連技術についての初心者向け解説書を読んで勉強している。ちなみにほかに気になるのはエネルギー、化学産業(とくに医薬品)、食品。不動産はちょっと性格が異なるけれどこれも気になる。

 

本書の位置付け

さまざまな要素技術がからむ複雑系であるブロックチェーンを過不足なく説明することは簡単ではない。本書はブロックチェーンを技術畑以外の読者にも理解できることに挑戦した、初心者向け解説書。

 

本書で述べていること

広義のブロックチェーンは分散型台帳技術(Distributed Ledger Technology:DLT)の一種。なおブロックチェーンの特徴として、仮想通貨記録でいえば、記録されるのはウォレットアドレス間取引(トランザクションという)履歴だけである。ウォレットアドレスにある仮想通貨の総数は記録されず、取引履歴から都度計算される。

著者はブロックチェーンの特徴をまとめている。

  • データは複数の参加者に確認されルールに従った書式のものだけが記録されること
  • 参加者全員によって合意されたデータだけが有効となる約束で運用されていること
  • 耐改ざん性のあるデータ構造(ハッシュチェーン構造)を持っていること
  • 改ざんしようとすると即時検出され、そのデータが破損していると認識されること
  • 破損データは正常なデータを持つほかの参加者から取り寄せて自動復旧できること
  • 一度書き込まれたデータは変更も削除も誰にもいっさいできないこと
  • システム全体を止めることは誰にも不可能なこと

本書では、これらの特徴をそれぞれ技術面から説明することで、ブロックチェーンの全体像を示そうと試みている。要素技術として、改ざん検出の仕組み(ハッシュ関数)、電子署名の仕組み(文書のハッシュ値秘密鍵で暗号化したもの)、電子証明書の仕組み(公開鍵を本人確認とともに認証機関に提出し、公開鍵に必要情報を加えて認証機関の秘密鍵で暗号化したものを電子証明書として発行)、タイムスタンプの仕組みなどがある。

また、なぜ仮想通貨の登場が必然的であったかも解析している。すべての取引依頼はまず「トランザクションプール」に保管され、 マイニングが成功したマイナーによって承認されて初めてブロックチェーンに取り込まれる。このときある一定の手数料がマイナーに入る仕組みで、手数料がゼロだといつまでたっても承認されない可能性がある。

ブロックチェーンの最大の発明は、分散合意形成に経済インセンティブの概念を付与したことによって、母集団を特定しない不特定多数の参加者による実用的な合意形成を達成したことです。このために副産物として生まれた概念が「仮想通貨」(コイン)なのです。

 

感想いろいろ

少し前に、ドイツ警察がロシアの闇販売サイト “Hydra” の閉鎖及び2,300万€相当の仮想通貨押収に成功したというニュースを目にした。 “Hydra” はロシア語表記の不法物資販売サイト。捜査の末、ドイツのサーバー提供業者がホストであることが判明したという。手法についてはあまりくわしくふれられていないが、ある方法からウォレットアドレスを入手できたのであり、ブロックチェーンそのものの機密性が破られたわけではないらしい。

Hydra: How German police dismantled Russian darknet site - BBC News

ブロックチェーンのような優れた技術が実用化されれば、いうまでもなく、ブロックチェーンのような機密保持技術を破ったり、「自分の秘密は保持するが他人の秘密はのぞき放題」の状態に持ちこもうとしたりするのに情熱をかたむける人々がでてくるものだ。東野圭吾の小説『プラチナデータ』のテーマはこのまんまである。

ブロックチェーン自体を破るの不可能だとしても、ウォレットアドレスを入手できれば仮想通貨を盗むことはできる。仮想通貨取引所がターゲットになりやすいほか、ノードの役割を担うパソコンそのものをハッキングして仮想通貨を盗む事件が実際に起きている。たとえるならば、金庫破りは不可能でも、金庫の鍵を盗んだり、金庫所有者のふりをしたりしてお金を移動させるのはできるということか。

740億円相当の仮想通貨盗まれる、過去最大級の暗号資産ハッキング(Bloomberg) - Yahoo!ニュース

 

あわせて読みたい

ブロックチェーンの技術を語るうえで、もっとも重要な技術といえるのが「一方向ハッシュ関数」で、暗号技術分野で頻出する。『暗号技術のすべて』は外せない。以前読んだときの読書感想はこちら。

秘密を守るために読む本『暗号技術のすべて』 - コーヒータイム -Learning Optimism-

ブロックチェーンでよく使われるのは「楕円曲線暗号」(ECDSA)という公開鍵暗号だが、一般的なの仕組みを、アルゴリズムの面からわかりやすく解説している『世界でもっとも強力な9のアルゴリズム』もあわせて読みたい。読書感想はこちら。

【おすすめ】素晴らしく分かりやすいコンピュータのルールブック『世界でもっとも強力な9のアルゴリズム』 - コーヒータイム -Learning Optimism-

ブロックチェーンのもっとも有名な応用例である仮想通貨ビットコインについての解説書も必読。ビットコインは「マイニング」という計算競争作業(これ自体がブロックチェーン記録内容に関する合意形成アルゴリズムの一部分である)を行い、最初に答えを導き出した勝者に、ビットコインを新規発行し、ブロックを1つ作る権利が与えられる。計算競争であるから、使用されるコンピュータの性能と計算速度に大きく左右される。

私が読んだビットコイン解説書の感想はこちら。

1時間でわかるビットコイン入門 (小田玄紀著) - コーヒータイム -Learning Optimism-

<英語読書チャレンジ 3/100> Charles Dickens “Great Expectations”(邦題《大いなる遺産》)

思いつきで英語の本100冊読破にチャレンジ。ページ数100以上、ジャンルはなんでもOK、最後まできちんと読み通すのがルール。期限は2023年3月末まで。

本書はノルウェー・ブック・クラブが選出した「世界最高の文学100冊」(原題:Bokkulubben World Library)の一冊。

Library of World Literature » Bokklubben

まずは簡単なあらすじを。

物語は主人公ピップが年老いたのち、若かりしころの出来事をふりかえり語る、いわゆる回顧録形式をとり、ピップの一人称ですすむ。

ピップは幼い頃に両親を亡くし、鍛冶屋に嫁いだ姉に引き取られる。姉は癇癪持ちで誰彼構わずつらくあたるが、義兄のジョーは優しく接してくれる。ピップもジョーと友情を育み、いずれジョーのもとで鍛冶屋見習いになると考えていた。

ある日ピップは、両親が眠る教会の墓地で足かせをはめた脱獄囚に会い、脅されて食糧品と足かせを切るためのやすりを盗み出して与えてしまう。脱獄囚はすぐに逮捕されたが、鍛冶屋から食糧品とやすりを盗んだのは自分だとピップをかばう。

数年後、ピップはひょんなことから金持ちのミス・ハヴィシャムの退屈凌ぎの話相手をさせられる。彼女の養女であるエステラという高慢で美しい少女にピップは恋してしまうが、下品で学がないと侮蔑される。自分が今置かれている環境を恥じる気持ちが芽生え、鍛冶屋見習いになりたくない、教養をつけて品の良い紳士(ジェントルマン)になりたい、とピップは願うようになる。

エステラとの出会いからさらに数年後。思いがけず、ピップに巨額の遺産(Great Expectations)がもたらされることがわかり、ピップは鍛冶屋見習いを中断し、紳士修行のためロンドンに向かう。ピップは遺産がミス・ハヴィシャムによるものであり、自分をいずれエステラの結婚相手にするためのものだと信じていたが、実はその遺産には、かつて教会の墓地で助けた脱獄囚が関係していたーー。

 

ピップと脱獄囚の関係、ピップのエステラへの恋慕が物語の両軸をなし、彼の運命を狂わせていく。

少年時代のピップが見聞きしたことや行動したことが物語の中心だけれど、語り手である年老いたピップ自身に必要以上の興奮と自己正当化はなく、醜悪なできごと、悲しいできごとであっても淡々と語り続け、すべてはもはや過去の出来事であり、振りかえることができるものだと語らずとも感じさせる。このあたり、同じく過去を振り返りながら自己正当化にまみれているカズオ・イシグロ日の名残り》とは対照的。

ブリジット・ジョーンズの日記』シリーズの作者ヘレン・フィールディング女史が、古い時代のイギリス女性像としてミス・ハヴィシャムをあげているが、実際に読んでみればかなりの嫌味だとわかる(さすが嫌味と皮肉の本場イギリス)。結婚式当日に婚約者に裏切られるという強烈な体験から、男という男を心底憎んでいるミス・ハヴィシャムは、見た目も性根も魔女同然の存在として語られる。ピップがミス・ハヴィシャムに抱いた第一印象はこう。

In an arm-chair, with an elbow resting on the table and her head leaning on that hand, sat the strangest lady I have ever seen, or shall ever see.

She was dressed in rich materials—satins, and lace, and silks—all of white. Her shoes were white. And she had a long white veil dependent from her hair, and she had bridal flowers in her hair, but her hair was white. Some bright jewels sparkled on her neck and on her hands, and some other jewels lay sparkling on the table.

そう、私がそれまで見たこともなかったような、そしてこれから後も見ることのないような、不思議な女性が肘掛け椅子に座り、片方の肘をテーブルの上に乗せ、頭をその手で支えていた。

彼女はサテン、レース、シルクといった贅沢な素材を身にまとっていたーーすべてが真っ白だった。靴も白かった。長く白いヴェールが頭から垂れ下がり、花嫁がつける花を髪にあしらっていたが、髪の毛は白くなっていた。首と手には宝石がいくつかきらきらと輝いていた。化粧台の上にも別の宝石が輝いていた。

河出文庫版訳)

これには実在のモデル(路上生活者らしい)がいるというからなお驚き。

ディケンズの作品を読むのは初めてだけれど、人物造形が深く、文章に独特のリズムがあるように感じる。上の文にもあるが、意図的に "and...and..." と重ねながらすこしずつずらしていくことで、全体像を描き出すという手法をよく用いている。

"Lord" という単語が、しばしば祈り文句の中で「神様」の意味として使われるという豆知識を得るなど、おもしろい発見も多々あったけれど、全体的に(私がイギリス英語がそれほど得意でないこともあり)読みやすいとはいえず、しばしば邦訳の助けを借りなければ意味を取れなかった。

 

ピップの心理変化は微妙な襞までみごとに描写されているが、河出文庫版解説を読むかぎり、これは回顧録執筆時のピップが、実に深い自己洞察を重ね、若かりしころの失敗を醜悪な部分まで余さず思い起こし、思索と分析を重ねたためだと考えられる。

父親代わりのジョーの後を継いで鍛冶屋になり、気心知れた地元の娘ビディーと結婚すれば、ささやかな幸せを得られるだろう。そう考えながらもピップは高嶺の花のエステラへの恋慕を忘れることができず、ロンドンという大都会に行くチャンスに飛びつく。

手がとどかないとあきらめられれば、ピップが愚かな見果てぬ夢を見ることはなかったかもしれない。けれど彼自身が語るように、欲望に負け、愚かで浅ましく、恩知らずな真似をしでかしてしまうのはピップ自身である。

後味は決して良くないけれど、なぜか目を離すことができないのはきっと、ピップの悩みがどこか私自身のかつての悩みに共通するものがあるからだろう。都会に出るか故郷に残るか。結婚相手には洗練されているが高慢な都会人がいいか、地味ながら気立ての良い地元人がいいか。親(ピップの場合は他人だが)に押しつけられた進路に従うか、自分でこれだと思う道を往くか。若者が抱く葛藤はどの時代でもあまり変わらない。

ピップがある意味不幸だったのは、思いがけない遺産相続の話がころがりこんだことで、エステラに手がとどくかもしれないと夢見てしまったことだろう。脱獄囚と再会したあとの独白が、ピップの悲喜劇のすべてを物語る。

Miss Havisham’s intentions towards me, all a mere dream; Estella not designed for me; I only suffered in Satis House as a convenience, a sting for the greedy relations, a model with a mechanical heart to practise on when no other practice was at hand; those were the first smarts I had. But, sharpest and deepest pain of all—it was for the convict, guilty of I knew not what crimes, and liable to be taken out of those rooms where I sat thinking, and hanged at the Old Bailey door, that I had deserted Joe.

ミス・ハヴィシャムが私のために考えてくれていた計画など、ただの夢に過ぎなかった。エステラと私を結婚させる予定など存在しない。私はサティス・ハウスで欲深い親戚連中をチクチク刺す針として、都合よく利用されていただけだった。それが最初に感じた痛みだった。しかし、もっとも深刻で強烈な痛みは、囚人のためにジョーを見捨てたという意識だったーーそれも、どんな罪を犯したとも知れぬ囚人、おそらくは今私が考え事をしているこの部屋から引っ張り出されて、中央刑事裁判所のドアの前で縛り首にされるだろう囚人のために。

河出文庫版訳)

<英語読書チャレンジ 2/100> G. Deutscher “Through the Language Glass”

思いつきで英語の本100冊読破にチャレンジ。ページ数100以上、ジャンルはなんでもOK、最後まできちんと読み通すのがルール。期限は2023年3月末まで。

なぜこの本を読むことにしたか

なぜわたしはこの本を読むために時間を使うのか。

①世界の見方を根底からひっくり返す書物、

②世界の見方の解像度をあげる書物、

③好きだから読む書物

この本は②。言語のちがいが考え方や感じ方のちがいの原因となるのかどうかという興味深いテーマを論じる。バイリンガルとしては「なる」というのが直感的答えなのだけれど、立証するのはなかなかに大変であるというお話。

 

本書の位置付け

「言語のちがいは考え方や感じ方のちがいを招くだろうか?」という問いかけに対して、専門家たちの間では「ノー」という答えが主流である。しかしこの本の著者は「イエス」の立場をとり、その理由を主に人類学的視点から説明している。

著者が最初に特記しているように、この本はどの言語が、あるいはどの言語の話者の考え方が「優れている」かを論じるものではない。この本は言語、文化、思考がどのように結びついているかを解き明かすための試みであり、あまりにも深いゆえにほとんど意識にのぼることさえない結びつきを見つけるための探究である。

やや専門的内容ではあるが、外国語学習者や、2カ国語以上を操ることができる話者にとっては興味深い話題がたくさんあり、専門家でなくても楽しんで読むことができる。

 

本書で述べていること

言語のちがいについてはさまざまな俗説がある。たとえばユダヤ教聖典タルムードでは「ギリシャ語は歌に、ラテン語は戦に、シリア語は挽歌に、ヘブライ語は日常会話にふさわしい」と書いてある。しかしもう一歩踏みこんで問いかけてみよう。言語のちがいは思考そのものに影響するだろうか? あるいはこうも言い換えられるーー言語はヒトが生まれもつものであろうか、あるいは人間が社会慣習として学ぶものであろうか?

この点についてもっとも活発に議論されているのは色彩であろう。古代ギリシャの偉大な詩人ホメーロスは《イーリアス》《オデュッセイアー》で海を「葡萄酒色の海」と形容している。後にイギリスの首相となるグラッドストンはこのような色彩形容を徹底的に分析し、「ホメロスと同時代人たちは世界を白黒に近いものとして知覚していた。ホメーロスが『葡萄酒色の海』と表現したのは、葡萄酒と海水の明度が似ていたためであり、色彩の赤紫色と青色は区別出来ていなかった」という結論を出して論争を呼んだ。のちに未開地の民族をふくめてさまざまな研究がなされたが、未開地の民族が話す言葉には「青」にあたる単語がなかったり、青いものを見せても緑色のものや黒いものと同じように表現したりすることが観察された。しかし、目の生物学的機能にちがいはなく、実際に青と緑のカードを見せたら、ちがう色であることは認識されていた。(日本語の「青信号」「青りんご」がどう見ても緑色寄りであることものちに例として出てくる)

このように、ある言葉で表現されるものの区分方法は自明ではなく、あきらかにその言葉が属する社会的/文化的慣習の影響を受ける。著者は、これまでの研究では、言語及び知覚におよぼされる文化的影響力が過小評価されてきたと主張する。

では言葉はどのように思考に影響するか。ここからの論理展開はとても慎重に行われている(残念ながらこのテーマが特定言語、ひいては特定社会の優位性を論じるために利用されてきたのはまぎれもない歴史的事実)。

著者が強調しているのは2点。

①ある言葉、たとえば「青色」が存在しないことは、その言葉が表現するものを認識出来ないことを必ずしも意味しない。

②ある文法規則、たとえば未来形がないからといって、その言葉の話者がそれを理解出来ないことはない。未来形がなくとも「未来」という概念は理解出来るし、表現を変えて語ることはできる。

考え方としては、ある言語体系はその話者が「表現出来る」ものではなく「表現しなければならない」ものを規定したと考えるべきであり、もし言語体系が話者の思考に影響するならば、特定事項を表現しなければならないゆえに、それについて考えることを習慣化付けられる点が挙げられる。(たとえば英語では立場が上だろうと下だろうとすべて "I" "You" 呼ばわりだが、日本語では話しかける相手と自分の立場を考慮して「わたし」「ぼく」「おれ」「あなた」「きみ」「おまえ」などを使い分けなければならないようなもの)

 

感想いろいろ

  • 外国文学作品のすこし古い日本語訳で、教会関係が「寺院」「僧侶」と訳出されている。
  • 中国ではDemocracy(民主主義)にあたる言葉がなく、最初は頭文字をとって「ミスターD」という意味の「徳先生」という訳をつけていた。
  • 英語では里芋を熱帯のタロイモと区別せずに "taro" と呼称している。

私が見聞きしただけでもこれだけある。ひとつの言語体系にあるものを、それがない言語体系で表現しようとして四苦八苦する例である。

しかしこの本はこのように表層的で具体的なところに終わらない。もっと一般的、客観的なことを述べようと努めている。複数の言語にまたがる特徴について述べ、なぜこのような特徴が(思いこみではなく)あるといえるのか、とことん掘り下げている。言葉というものはあまりにも身近だけれど、その分、研究においては主観が入りすぎないよう慎重にならなければいけないことを深く印象付けられる。

トリビアだが、「他人」のことをまわりくどく "a complete stranger who doesn’t know you from Adam" 「あなたのことをアダムの時代(=旧約聖書でアダムとイブがつくられた世界の始まり)から知っているわけではないまったくの他人」と表現している箇所が新鮮でおもしろかった。著者はときどきこのようなわざとらしい言いまわしや言葉遊びでくすりと笑わせてくれるから、なお面白い。

 

あわせて読みたい

序章にて、人間の本質的思考は遺伝子に刻みこまれている、人間の考えることは言語によって左右されない、という本書のメインテーマとは逆の学説が登場するけれど、この根拠となりそうなのが『千の顔をもつ英雄』。世界各地の神話や伝説には、ふしぎなことに、ある共通の原型がみられると論じた本。ジョージ・ルーカスがこの本を参照してスター・ウォーズの脚本を完成させたことで有名。

『トルコのもう一つの顔』も必読。日本の言語学者による、トルコの少数言語のフィールドワークの記録。政治的考慮から「トルコは単一民族国家である」と主張するトルコ政府から国外退去処分を受けながら、フィールドワークの結果を論文として発表し、のちにトルコ政府が少数民族の存在を認めざるをえない下地をつくった。

ブログ記事を参考までに。

トルコの建前と本音を解体してみせたすごい本〜小島剛一『トルコのもう一つの顔』 - コーヒータイム -Learning Optimism-

本文中にもでてきたけれど、「言葉がなくなればそれが表すものを語ることもできなくなる」のをやってみたのがオーウェル1984》。検閲や記録訂正を日々させられ、都合悪い言葉を削除したり意味を歪めたりした辞書を編纂させられる人々が登場する。

ブログ記事を参考までに。

身震いするほどの不快感〜ジョージ・オーウェル《1984》 - コーヒータイム -Learning Optimism-