コーヒータイム -Learning Optimism-

本を読むということは、これまで自分のなかになかったものを取りこみ、育ててゆくこと。多読乱読、英語書や中国語書もときどき。

<英語読書チャレンジ 75 / 365> 【おすすめ】 P. Phillipa “The Book You Wish Your Parents Had Read” (邦題『自分の親に読んでほしかった本』)

英語の本365冊読破にチャレンジ。原則としてページ数は最低50頁程度、ジャンルはなんでもOK、最後まできちんと読み通すのがルール。期限は2027年10月。20,000単語以上(現地大卒程度)の語彙獲得と文章力獲得をめざします。
この本はサブタイトルの通りマジでマジでマジで親になる全人類に読んでほしい。とくに子どもを親の所有物扱いする文化が根強いアジア圏。邦訳タイトルは『自分の親に読んでほしかった本 子どもとの関係が変わる』。

 

なぜこの本を読むことにしたか

なぜわたしはこの本を読むために時間を使うのか。

①世界の見方を根底からひっくり返す書物、

②世界の見方の解像度をあげる書物、

③好きだから読む書物

この本は①。人の子であり、人の親となる以上、知らなければならないことは数あれど、この本はそのうちの一端を見せてくれる。

 

本書の位置付け

本書はいわゆる親向けの育児本にあたるのであろうが、内容はどのようにしつけをするかなどのいわゆるハウツー物ではなく「親側」がどうふるまうべきかを徹底的に問いかけて解説するもの。その意味では人の親となる人々に向けたカウンセリング本とも言えるかもしれない。豊富な「あるある」実例と学術的研究成果を盛りこむことで、説得力ある内容となっている。

 

本書で述べていること

最初の章でいきなり「親は子どものすることに反応しているのではなく、無意識のうちに『自分が子どもの頃にされたこと/されなかったこと/親にしてほしかったこと/親にしてほしくなかったこと』に反応している。子どものふるまいは、親の記憶や感情を呼び起こすトリガーにすぎない」という核心をついた話題が出てくる。

This feeling of wanting to push children away, of wanting them to sleep long and to play independently before they are ready so they don’t take up your time, can come about when you’re trying not to feel with your child because they’re such a painful reminder of your childhood. Because of this, you’re unable to surrender to their needs.

ーー子どもを遠ざけたい、親であるあなたの時間をとられないよう、子どもがふさわしい年頃になる前であっても一人で寝てほしいし一人で遊んでほしいという感情は、あなたが子どもに共感しないよう努めているときに生じるかもしれない。そう努めるのは、あなた自身の痛ましい子ども時代を思い起こすからだ。このためにあなたは子どもの要求に屈することができない。

子どもがどのような人間になるかは〈遺伝〉と〈環境〉で決まるけれど、親は〈環境〉の重要な構成要素である。本書は、親が感じることを明らかにし、言語化し、それを子どもに伝えることの重要性を強調する。子どものふるまいの良し悪しを批評するのではなく、あなたが子どものふるまいをどう感じるのか、一人称で話すほうが役立つと説明する。

How we feel about ourselves and how much responsibility we take for how we react to our children are key aspects of parenting that are too often overlooked because it’s much easier to focus instead on our children and their behaviours rather than examining how they affect us and then how we in turn affect them.

ーー私たちが自分自身についてどう感じるか、子どもに対する反応のうちどれくらいについて責任を負うか、これらは親としてふるまうにあたり鍵となる面であるが、見過ごされがちである。なぜなら、子どもが私たちにどのように影響を与え、私たちがお返しにどれほどの影響を子どもに及ぼすかを精査するより、子ども自身や子どものふるまいだけに注目した方がよほど簡単だからだ。

子は親の背中を見て育つというけれど、子のふるまいは親に影響されるーー良いところも悪いところも。親は子のやることにただ反応するのではなく(しかもそれが親自身のトラウマに根付く不適切な反応である可能性もあることはすでに述べた)、子のふるまいをコミュニケーションの一形式ととらえ、そのうちどれくらいが自分自身のコミュニケーション形式に影響されているかを考え、より適切なやり方を子に教える必要がある。

しかしそれは子のやることを無制限に許容することを意味しない。あなたにはあなたの「これ以上は我慢ならない」ラインがあるし、それは子も同じ。愛情と同じほどに限界線をはっきりさせることもまた必要なのだ。だが、それを子に求めるときには「あなたが我慢ならないから」とはっきりさせる必要がある。身体に悪いから、そんなことをするのは悪い子だから、などという言い訳は効果的なコミュニケーションを阻害する。正直に「あなたが親として子どもにこうしてほしくないから」だと話そう。

感想いろいろ

中国の孝行文化について子の視点から分析した秀逸な記事を読んだことがある。リンクはもうみつからないが、スクリーンショットで保存してある。かいつまむと以下のような内容。

  • 庶民に親孝行文化が根付いているのは、小規模農家にとっては生き残るための最善策だから。小規模農家が財産形成しようとするなら、息子と娘をたくさん産み育てるのがもっとも確実である。息子は無料労働者として経済的価値を生むし、娘は結婚を通じてよい姻族関係を結ぶ。
  • しかしもちろん前提は息子や娘が親のいうことを聞いてくれることだ。子どものときは殴ればよいが、成人すると力関係が逆転する。一番確実なのは幼い頃から「子は親の言うことを聞かなければならない」と洗脳しておくことだ。
  • これが親孝行文化の本質である。「子は親の言うことを聞かなければならない」ことを社会的な倫理規範とすることが。その本質は親による子の労働搾取、価値搾取にほかならない。
  • (このようなことがわかれば)親世代がなぜ親孝行にこだわるのか理解できる。この文章を書いたのはそのことに気づいてほしいからだ。子を利益をもたらしてくれる存在ではなく、愛する存在として見てほしいというのが、子としての(作者の)願いだ。そのためには親が伝統的親孝行文化の本質に気づき、親孝行文化のやり方で子を支配しようとすることをやめなければならない。 

この文章の作者は、本書を読めばきっと深く頷くだろう。子どもが幼いころは、子育てもしつけも結局のところ親の都合によるものがほとんどだから。

しかし難しい。

私自身が子どもをもってから数年後に、ようやく気づいたことがある。子育ての苦しみの根源は、自分が与えてもらえなかったものをどうにか我が子にあげたいところにある。自尊感情とか、認めてもらえる安心感とか、私が親世代から受けた〈叱りつけられる育児〉では感じられなかったものを。

それはとても苦しい作業だ。まずやり方がわからないから試行錯誤する。常に「慣れていない」やり方を意識しなければならないからストレスがたまる。うまくいけばいくほど「私もこうやって育てられていれば……」という考えをふり払うのが難しくなる。メンタル不安定になり子に八つ当たりしたことすらあり、本末転倒だと自己嫌悪に陥る。それでも歯を食いしばる価値はあると信じられる成果は、残念ながら目に見える形では現れない。それでもやるのならよほどの覚悟がいる。