この本は弁護士として活躍している著者が、労働事件の実例を取りあげながら、労働法の定める権利について紹介する一冊。
読んだあとの感想は一言でいうと「日本は契約社会にはほど遠いな」だった。
契約上、労働条件は労働契約、就業規則などに明文化される。この本で取りあげられている事件は、会社側が一方的に契約内容を変える、契約を打ち切る(つまり解雇)、などのことをしでかしたのがほとんどだ。それだけ会社にとっては軽く見ているということだろう。
この本にはすき家の例が紹介されている。ある店舗でリニューアルすることになり、従業員も全員「リニューアル」、つまりクビになった。リニューアルには一週間しかかからないにもかかわらず。会社側は本当に「店舗をリニューアルするから従業員も辞めさせた」くらいの軽い考えだった。整理解雇の要件を満たさないこと、従業員の生活に影響すること、そういったことを考えている様子はなかった。
こういうことを読むと怒りを覚えるが、自分も同じような目にあってもおかしくない、という恐怖や危機感をも覚える。もしそうなった時にどんな手を打つことができそうか、予備知識として読んでよかった一冊だ。