コーヒータイム -Learning Optimism-

本を読むということは、これまで自分のなかになかったものを取りこみ、育ててゆくこと。多読乱読、英語書や中国語書もときどき。

お金持ちの教科書 (加谷珪一著)

Kindle が故障してしまった。目に悪そうだが、Kindleが復活する(できるのか?)まではiPhoneアプリと紙媒体の本だけになる。

 

この本の筆者はお金持ちとつきあう中で、お金持ちの人たちに特有の思考パターンや行動原理が存在することがはっきりしてきたという。資産を形成しやすいキャリアがあることにも。なお筆者によると、お金持ちの分岐点は資産ベースだと3億円、年収ベースだと3000万円程度で、そこから先は「思考パターンが変わる」。グルメな人なら好きなレストランに通うのではなく、趣味と実益を兼ねてレストランオーナーになる、という具合だ。

筆者によると、お金持ちを考えるにあたって「年収が多いこと」「資産をたくさん持っていること」「社会的地位が高いこと」を混同しがちだが、これらを満たしているからといって必ずしもお金持ちではないという。日本でよく見かけるのは資産のほとんどを不動産で持っている(いわゆる先祖代々の土地)パターンで、評価額は億単位であっても売却しずらかったり活用出来なかったりすれば、実際の日常生活の豊かさには繋がらない。同じ評価額でも資産を金融商品で持っていれば現金化しやすいため、活用出来る。

お金持ち特有の心理として、筆者は面白い例をいくつか挙げている。

まず、今の資産や立場を失くすことを極端なまでに恐れること。欲しいものをほとんど手に入れられるお金持ちにとって、この恐怖感が唯一のバイタリティになっているケースは案外多いらしい。今ある(遊んで暮らせる程度の)貯金を切り崩さないために、きつい仕事についてでも稼ぐ、という思考回路になることすらある。

次に、時間感覚が違う。一時間あたりお金がいくら入るか自然に考えるようになり、言いかえれば、そのお金を自分の一時間あたりの値段と考えるのだ。こうなるとだらだら飲み会に三時間も付き合うことはなくなる。お金持ちにとって時間は売り買いできるものであり、お金を出して時間を買うことの方に興味がある。お金持ちには友達が少ないといわれるのもこの辺りに理由がある。お金持ちにとって、食事は人脈や経験を得るための投資なのだ。

そして、結果のすべてを自分のせいにできる精神力の強さ。逆にいうと、このメンタリティさえ身につけることができれば 、かなりお金持ちに近づくことができる。お金を失うこと、裏切られること、コネで追い越されることをお金持ちは自分のせいだと認識する。裏切られるのはそうできない仕組みを作らなかったからだし、コネで追い越されるのは、それを前提としたゲームだと自分が認識して手を打たなかったからだ。

筆者の示唆の中で最も興味深かったのは、妬みの感情が大きいと「人と違うこと」ができにくくなり、お金持ちへの道の障害になる、としている点だ。「人を妬むということは、妬む相手と同じ土俵に立っていることを意味している。それは、与えられた競争のルールを無意識に受け入れてしまっているということ」なのだ。