神戸製鋼が揺れている。全世界の製造業を巻きこんだ前代未聞レベルの不祥事に発展しそうで、企業として市場からの退場はもはや時間の問題のように思える。
だが「偽装」された数値がなにで、品質にどのような問題が生じうるのかはなかなか詳細が見えてこない。メディアは不安をあおり、まるで神戸製鋼が出荷した鋼材を使用した製品がいまにも崩れたり解体したりするのではないかという騒ぎだが、納品先企業だって品質検査をしていなかったわけではない。納品先企業が数十年気づかなかったレベルの数値改竄となると、もしかしてそこまで大騒ぎするほどのことではないのでは? という気もする。(世の中には品質をごまかす方法がいくらでもある。神戸製鋼以外の会社が全員清廉潔白なわけはあるまい)
この本では一企業の不祥事が時には業界全体の巨大不祥事に成長することもあることをふまえ、企業の危機対応のまずさ、どうすれば問題を正しく伝えられるかを述べている。不祥事を隠すべきと言っているわけではない。不祥事は公表しなければならないが、誤解されるような公表のしかたはしばしば問題を大きくするから、起こった問題を正しく伝えられるよう努力しなければならない、というのが著者の意見だ。
著者によると、実際の不祥事は、環境が変化しているのに組織がそれに適応できる方向に変われないということと、組織が環境に適応できない方向に変化してしまうこと、これら二つの要因によって起きる。
企業組織は社会との信頼関係の上に組み立てられている。不祥事はその信頼関係が失われかねない有事であり、不祥事への危機対応というのは 、平時から有事への急激な環境変化に企業組織がいかに適応するのかということにほかならない。