この本で紹介されている「6つの帽子メソッド」は、それぞれ特定の「視点」を表す。このメソッドの真髄は、帽子の色を指定することで一度に一つの視点からものごとを考えること、そして考え方を意図的にスイッチできることだ。
名前のとおり帽子(そして視点)は6つの色で区別される。
白:中立色。客観的な事実と数値(データ)。
赤:情熱の色。感情的な視点。
黒:生真面目で思慮深い色。警戒と注意をうながし、考え方の弱点を指摘する。
黄:明るく積極的な色。黒とは反対に、希望、考え方の肯定的な面を指摘する。
緑:草木が芽吹くイメージ。創造性と新しい考えの誕生。
青:冷静さとともに、すべてを包みこむ大空の色。調整、考え方のプロセスを構成し、ほかの帽子の使い方を統制する。
使い方はごく簡単だ。「あなたの白い帽子の意見を聞かせてほしい」「今はあなたの赤い帽子の意見ですね。それを説明する必要はありません、あなたがそう感じているのであればそれで充分です」というように、帽子の色を指定しながら話をすすめていくのだ。
この方法のメリットは、考え方を意図的に変えることができる、という点だ。よくあることだが、会議に出れば楽観的な意見(黄色い帽子)ばかりのべている人もいれば、逆に否定的な意見(黒い帽子)が多い人もいる。そうした人にあえて、わざとらしいくらいに「別の色の帽子をかぶったときのあなたの意見を聞かせてほしい」ということで、その人に違う視点から考えるチャンスを与えることができ、滞っていた話しあいが動き出すきっかけになる。全員が同じ色の帽子をかぶることで、どんな人にも感情的な意見を述べるチャンス、批判的になるチャンス、前向きになるチャンスが生じる。
この本ではあまり詳しくは述べられていないが、「帽子をかぶる」順番をうまく決めることで、考え方のプロセスをうまくたどり、意思決定にたどりつきやすくなる効果がある。ある人が客観的データ(白い帽子)からある提案のメリット・デメリットを述べているのに、別の人がデメリットの方が大きいと決めつけて(赤い帽子)話が進まなくなる、という事態を防ぐのだ。
こういったメソッドにありがちなことだが、メソッドを導入して使いこなすまでが一番難しい。公認トレーナーによる研修があるが、まずは全員に6つの帽子の色と意味を理解してもらうこと、次にある帽子の色に沿う発言をするのに慣れてもらうこと(楽観的で、なんとかなるさ、が口ぐせの人にいきなり「注意すべきことについて意見を出してください」と言っても結構難しい)、そして、ある帽子をかぶっているときにそれに沿わない発言をしたくなるのを抑えてもらうこと。最低でもこれくらいは必要だろう。
また、このメソッドが効果的だということは、会議で出席者それぞれが視点を統一しないまま好きなことを言うせいで、議論がまとまらないことがとても多いということだ。6つの帽子メソッドを使わずとも、「客観的な意見をお願いします」「メリットにまず注目しましょう」というだけでも、会議の進み方が違ってくるかもしれない。これは明日から使える手段だ。
なんだか「6つの帽子メソッドを導入するのがめんどうな人が考えつくこと」そのままの意見になってしまった。私は黒い帽子をよくかぶる。私のような会議出席者にこそ、6つの帽子メソッドが必要なのかもしれない。