コーヒータイム

日々読んだ本の感想。時々日常。

「エンデュアランス -史上最強のリーダー シャクルトンとその仲間はいかにして生還したか」(アルフレッド・ランシング著)を読んだ

この本に書かれていることはすべて真実である。史上稀に見る凄まじいできごとを、それを生き抜いた男たちの姿を、著者はできる限り正確に再現しようとしている。重厚なドキュメンタリーだ。

できるならば夏ではなく、冬の夜、暖房を切った部屋の中で薄い毛布にくるまりながら、仄暗い間接照明のもとで読むと臨場感が出るかもしれない。なにしろこの本に書かれているのは、雪と氷に閉ざされた南極海の極寒地を二年近くさまよいながら、ついに不屈の精神で生還した男たちの物語だから。

 

サー・アーネスト・シャクルトンは、南極大陸横断探検隊の隊長として、1914年12月5日、第一次世界大戦開始直後に、二十七名の隊員とともにエンデュアランス号に乗りこみ、南極大陸を目指した。

だが南極大陸を目前として船は流氷に囲まれて動けなくなり、それどころか海流に乗って南極大陸から離れる方向に流されていってしまった。南極大陸の冬の間、男たちは船の中で過ごすことを余儀なくされた。1915年10月27日、氷盤の圧迫を受けてエンデュアランス号が破壊され、男たちは船を放棄して氷盤上に移らざるを得なくなってしまう。

ここから氷雪との長く苦しい戦いが始まった。流氷から逃れることができない男たちは、流氷に乗ったまま、それが海流に乗って少しでも陸地に近いところまで自分達を運んでくれることを願うしかなかった。南東風や潮流に乗って、流氷は少しずつ南極圏を脱していった…だが、氷のない海が近づくということは、男たちが乗った流氷もまた脆くなることを意味した。流氷が崩れる直前に辛くもボートに移ることに成功した男たちは、五日間近い不眠不休のボート漕ぎの末、やっとのことで小さな島に上陸する。実に一年以上踏むことのなかった陸地だった。だがそこは群島の中の小さな無人島にすぎず、捕鯨船団の港がある島まではさらに過酷な航海が必要だった…。

著者は隊員たちの日記、インタビューなとから、緊張、恐怖、希望、絶望が刻一刻と変わるこの遭難の一部始終を再現している。シャクルトンは不屈の自信をもち、隊員たちの心を沸き立たせ、士気を維持することに心を砕いた。失敗が死につながることを承知している隊員たちの結束は硬く、苛烈な自然に翻弄されながら、精一杯生還のために努力した。

驚くことに、どんな過酷な状況下であっても隊員たちはやがて慣れてしまい、それどころか状況を楽しみ、状況変化を好まなくなる。この本にもはっきりとそれが浮かび上がる。