コーヒータイム

日々読んだ本の感想。時々日常。

『シナリオ・プランニング-未来を描き、創造する』(ウッディー・ウェイド著)を読んだ

シナリオ・プランニングの最大の特徴は計画作成ではない。「行動」を支援することだ。

シナリオ・プランニングによって、起きうる複数の未来を探り出し、それらの未来がもたらすチャンスと脅威に柔軟に対応するための施策を戦略に取り入れることができる。複数の未来シナリオ、それらをもたらす重要な変化要因が頭にあれば、感度が高まり、入ってくる情報が変わり、自ずと行動が変わる。 それを示すのが著者の目的だ。

著者が特に強調するのは、今ある条件だけを考えて未来を予測してはならないということだ。たとえば1980年代に小売業を始めた人がいるとしよう。彼は市場状況、需要、供給、グローバル化まで考えて十年二十年後の商売規模予測を作るかもしれない。しかし、私達はそれが机上の空論で終わることを知っている。なぜなら、その当時普及していなかったインターネットとオンラインショッピングの影響を考慮していないからだ。昨日米企業のトイザラスが破産申請したと報道されたが、破産の主な理由の一つはAmazonなどネット販売に価格競争で押されたからだ。ちなみに、こうした不測な事態は「ブラックスワン」と呼ばれ、シナリオ・プランニングでも別途扱う必要がある。

シナリオ・プランニングはだいたい次の6つのステップに従う。
  1. 課題を設定する。
  2. 情報を収集する。
  3. 未来を動かす「ドライビングフォース」を特定する
  4. 未来を左右する「分かれ道」になるような要因を見つける
  5. シナリオを考える
  6. 骨組みに肉付けし、ストーリーを描く

ここで紹介しているのは、4.で未来を左右する「分かれ道」になるような独立した要因を二つ見つけたら、それらをそれぞれ横軸と縦軸に取り、四つの象限についてそれぞれシナリオやストーリーを考える方法だ。最後にフィクション物語風に仕上げるとよりいっそう面白くなる。組織がその環境下でどのような影響を受けることになるのか具体的に描くのだ。想像力をたくましくすることで、あたかもその未来が本当にやってくるかのように擬似体験できる。

 

一つの例。これからの人生について「会社勤めをするor独立起業する」「子どもをもつorもたない」を組み合わせて、四つのシナリオをつくり、それぞれが家庭という組織に与えるインパクトを描き出すことができる。「独立起業する」&「子どもをもつ」であれば、例えばこんな風になるかもしれないーー

 

"2025年、私はオンラインマッチングサービスを提供する小さな会社を経営していた。ウーバーの人間版といおうか、数時間から数日の空き時間を売りたい人々と、手助けをほしがっている人々とをマッチングさせ、お互いに満足すれば労力提供契約を結ぶ。事務所は自宅の一室にある。在宅勤務だ。子育てしながらできる仕事だ。だが、私の方針は「自宅に招いてもいいと思える人でなければ紹介対象にはしない」だ。希望者を紹介対象として新規登録するかどうかは、自宅事務所で面接してから決める。その間子どもの面倒を見ることはできないので、近距離別居の両親や義両親に頼むか、会社勤めから戻ってきたパートナーに頼む。両親や義両親はこの仕事に理解があるが、パートナーは仕事帰りで疲れている時には負担に感じており、私に仕事をセーブしてほしいと思っているようだ。こまめに話しあい、休日の子育てや家事分担割合を調整することでバランスをとっている。"

 

こうしてストーリーをつくると、未来状況が生き生きと思い浮かぶ。もちろんこれは数ある可能な未来の一つにすぎない。実際には四つのシナリオすべてへの準備が必要になり、そのために現在取るべき行動を考えるのに役立つ。

 

この本にはシナリオ・プランニングの方法とケーススタディが載っている。実際のビジネスシーンに使われるシナリオ・プランニングは数ヶ月の時間と数十人の参加者によるワークショップが必要になるが、例えば人生におけるシナリオ・プランニングを頭の体操がてらやることもできる。物語書きが好きならばやってみるのも面白いだろう。