ビジネス書を何冊か読むと、大体の特徴が見えてくる。
センセーショナルな題名のものはたいてい字数のわりに内容がたいしたことなく、読んだら忘れる。時にはあからさまに著者のセミナーを紹介していたりして、ますます読む気が失せる。成功者の自伝はかなり良いものがあるが、もちろんスティーブ・ジョブズの自伝を読んだからといってアップルのようなIT時代の寵児となる国際的企業を立ち上げられるわけではない。科学的根拠に基づいて企業のあるべき姿や経済発展の行く先を推察しているような、読み応えのあるビジネス書は数少なく、当たるのは運任せだ。これまで手にとってきた中では、読み応えがあったものは10冊に1冊あればいい方。
わたしは自分の読書経験からなんとなくこんなことを思っていたが、本書『キャリアポルノは人生の無駄』を読んだとき、もやもやしていた思いを言葉にしてまとめてくれていると感じた。
わたしは子どものころから本を読む方だったと思う。図書室や図書館に通うのが大好きだったし、まだ読んでいない本が手元に常にあった。おもしろそうだと思えば、分厚い本でも抵抗なく読んだ。その頃読んでいたのは児童文学や世界名作集といったものだが、知らず知らずのうちに、内容が薄い本を子どもなりに「つまらない」「物足りない」と感じる感覚が身についたのだと思う。
だが、読書習慣がなく、就職前後に初めて著者言うところのキャリアポルノを読み始めるような読者層であれば、おそらくこういった感覚が育っていないのだろう。「成功法則が書かれた本を読んだだけで自分も成功したつもりになる」罠に落ちるのだろう。