コーヒータイム -Learning Optimism-

本を読むということは、これまで自分のなかになかったものを取りこみ、育ててゆくこと。多読乱読、英語書や中国語書もときどき。

中学生になったら読んでみよう〜梅津信幸『あなたはネットワークを理解していますか?』

サイエンス・アイ新書というシリーズを見つけて、面白そうと思い、適当に手に取った一冊。「はじめに」を読んだだけで、きっと正解だと思った。

どのような技術にも、それが生まれた現場にはかならず、不便な現状に思い悩み、寝る間を削って理由を考え、何百回、何千回と試してうまくいく「答え」にたどり着いた人々がいたはずなのです。……

本書はまさにそういう人々の苦労を織りこみながら、どうやってネットワークがつくられて来たのか、なぜつくられて来たのかを、中学生程度にわかるようにやさしく説明している。中学生時代にこの本を読みたかった。

著者によると、ネットワークとは、コミュニケーションをするための現代的手段にすぎない。

コミュニケーションとは、離れた地点で情報を再利用すること

メモリとは、離れた時点で情報を再利用すること

……

この2つのどちらを重要視しているかで、1つのモノがコンピュータと呼ばれたり、ネットワークと呼ばれたりします。つまり、コンピュータとネットワークは表裏一体で、この2つを区別すること自体、原理的には意味がありません。

コミュニケーションの中身としては、写真、音楽、動画、文章、と、数限りなくあるわけだけれど、もともと写真は光が人間の目に入って脳に認識されたものだし、音は空気の振動が人間の耳に入ってやはり脳に理解されるものだ。これらをコンピュータは情報処理する……というのは簡単だが、一歩一歩進むのは実に困難だった。たとえば、

  • 情報を2進数(0と1)で表現する
  • 2進数があればすべての計算ができる
  • 情報量がどれくらいあるかを計算する
  • プログラムをコンピュータの中に保存する
  • パケット方式で情報をやりとりする

これ全部、いまでこそ常識となっているけれど、生み出された当時は画期的な考え方であった。さらに時代をさかのぼるならば、エジソンの蓄音器、ベルの電話、モールスの電気信号……などなど、試行錯誤してきた偉大なる先人たちが遺してくれた創意工夫があるわけで、コミュニケーションの手段としてのネットワークを、歴史的観点から見てみると、なかなか面白い。

中学生程度の知識があればすらすら読めるけれど、もっと調べたくなる面白い話題満載。ちなみに高校生になればブルーバックスシリーズも面白いのでぜひ。