コーヒータイム -Learning Optimism-

本を読むということは、これまで自分のなかになかったものを取りこみ、育ててゆくこと。多読乱読、英語書や中国語書もときどき。

『世界500万人が実践する営業術』(ブライアン・トレーシー著)を読んだ

営業術をテーマとするビジネス書は、日本人作者によるものを何冊か読んだことがあるが、この本と似た内容ながら、書かれている順番が真逆だったのが面白い。

日本人作者の本では、まず相手のニーズをつかむための「聞く力」から書き始めていた。一方、カナダ出身でカリフォルニア州で人材養成ビジネス会社を経営する著者が書いたこの本では、自己概念ーー「自分にはこのレベルのことができる」「自分はこのレベルにいると居心地いい」という自己認識のレベルアップを継続的に行わなければならない、という心理的側面から書き始めている。相手ありきか、まず自分か。日本人とアメリカ人の考え方の違いが出ているのかもしれない。

例えば、年収5万ドル稼げれば満足だと思う人はだいたいその年収で落ち着いてしまう。満足すればそれ以上懸命に努力しようとしなくなるからだ。一方、年収15万ドルほしいと思う人は、それを目指して努力をするから、成功の可能性もあがる。このように、人の自己概念は自分自身の行動をしばしば決めてしまうのだ。

著者は自分の人生が「原因と結果の法則」によって変わったという。どんな結果にも原因があり、成功も失敗も偶発的に起こるのではなく、予測可能だとする考え方だ。このため、成功している人びとと同じことを根気よく行えば必ず同じ成果をあげることができる。セールスの世界では天才である必要はなく、少しだけ秀でていればずば抜けた収入を得ることができるのだ。

稼ぐための4つの鍵は「専門性をもつ」「差別化をはかる」「セグメント化する」「大物に全精力を傾ける」だ。これらを得るためには創造性を刺激することが必要だが、①明確な目標、②押し迫る問題、③具体的な疑問  を活用することで得ることができる。

 

私がこの本を手に取ったのは、実をいうとセールスに興味があるためではない。自分自身を売りこむための方法論に興味があったからだ。社内、社外問わず、自分自身を売りこむための機会はいくらでもある。ビジネスパーソンとしての自分自身の専門性、経験、チームプレイヤーとして円滑な人間関係を築くための能力などを売りこむのだ。そのためのヒントとしてトップセールスの営業術は非常に役立つ。

著者はこの本で創造性を刺激するための方法を紹介している。まず紙に自分の最大の目標、または最大の懸念事項を質問形式で具体的に書き(「○○をするにはどうすればいいか?」)、それに対する答えを、主語を「私」にして、肯定かつ現在形で20個書く。それを見直して、今日から実行するアイデアを選び、今すぐ実行する。こうすることで目標に近づくことができ、しかも、アイデアが次々浮かぶための練習にもなる。

 

この本はオーディオプログラムを書籍の形にしたものであるから非常に読みやすく、著者が壇上にいて語りかけてくるかのように思えるほどだ。見直さなければならないリストや項目整理などはあまりない。最後まで一気に読むことで、著者による講演会を聞き終えた気分にひたってみてはいかがだろうか。