冒頭の方に、「生命保険はご家族への愛情を形にしたもの」といったどこかで聞いた宣伝文句が書かれていたので、「生命保険の素晴らしさをひたすら説く宣伝本か?」とちょっと身構えた。
しかし、読み進めるにつれて、生命保険だけに限らず、著者のこれまでの経験や培われた仕事への姿勢、目指すことなど、どんな仕事につく人でもなんらかの気づきを得られる内容になっていることがわかった。冒頭で読むのをやめなくて正解だった。
この本は、以前読んだ『選ばれるプロフェッショナル クライアントが本当に求めていること』の、生命保険分野における実践版といえる。
著者の小山氏はリクルート勤務を経てプルデンシャル保険に営業職として転職し、素晴らしい成績をあげている。小山氏が手がけているのは個人保険と法人保険だが、保険を使いこなすことだけを仕事範囲とはしていない。ライフプランナーとして、顧客のあらゆる相談に乗っているーー相続税関係の相談があれば税理士を紹介し、経営の資金繰り相談であれば金融に強い弁護士を紹介する、といった具合だ。著者は自分自身の仕事をこうとらえている。
私が常に目指しているのは、お客様が「何かあってもこの人ならきっと助けてくれる」という安心感を抱いてもらえるような存在、困った時には「小山」という名前をハッと思い出してもらえるような存在、「会うだけで前向きな気持ちが湧いてくる」と幸せな気持ちを味わってもらえるような存在です。
著者はとてもシンプルな真理を繰り返しのべている。トップレベルの人々と付きあいたければ、自分を同じレベルに引き上げるのが唯一の方法だ、と。
著者が法人保険の販売相手としてつきあっている経営者はとくにその傾向が強い。リスクをとり会社を経営する方々は、相手が付き合うに値するかどうか、信頼できるかどうか、容赦なく見極めにくる。それが会社利害に直結するからだ。著者の言葉を借りるとこうだ。
経営者の方であるほど、どの方も手元の提案書ではなく私の目や表情を見ていました。こういう方の洞察力は、とても優れているものです。商品云々ではなく、どなたも「どれだけ信頼のおける人間か」「どれだけ志を持って本気でやっているか」を見極めていたのだな、と改めて気付きました。
こういったことを、これまでのお客様との出会い、出来事、かけられた言葉、その中で著者自身が気づいたことなど、さまざまな説得力あるエピソードをふんだんに交えながら、著者は本の中で語る。もし自分が同じ言葉をかけられたらどう思うだろう、そう考えることが、読者の「気づき」のきっかけになる良書。