コーヒータイム -Learning Optimism-

本を読むということは、これまで自分のなかになかったものを取りこみ、育ててゆくこと。多読乱読、英語書や中国語書もときどき。

未来はどういう社会になるかを想像して金儲け〜S.ヘック&M.ロジャーズ『リソース・レボリューションの衝撃』

現在進んでいるIT主導の産業革命は、わたしが身をおくエネルギー業界のゲームルールを根本からひっくり返そうとしている。エネルギー業界にこの先何が起こりそうか、その中でわたしはどのようにキャリアを築けばいいか、ヒントを得るためにさまざまな本を手当たり次第に読んでいく中で、この本に出会った。

アダム・スミスが定義するビジネスへの3つの投入要素、労働力、資本、土地のうち、労働力と資本は機械化や金融制度整備によって効率化が進められてきた。一方、土地ーーとそこから産出される農産物や鉱物などの天然資源ーーの生産性はこれまで効率化が不十分だった。しかしついにそれが始まった。これはビジネスチャンスだ。

ということが本書の核心的メッセージ。この本によれば、MaaS(Mobility as a Service :「マース」)も資源生産性向上の一環にすぎない。本書で掲げるポイントは3つ。マッキンゼーコンサルタントらしく、ところどころで主張をいくつかのポイントに簡潔にまとめていることが本書の特徴。

  • 情報技術、ナノスケールの専門科学、生物学の専門知識を、工業技術やインフラストラクチャと組み合わせることで、大幅な生産性の向上が実現する
  • 新興国で生まれつつある25億の新たな中流層人口の生活を支えるような、高い生産性を背景とした経済成長は、100年に一度の富の創造のチャンスである。
  • このチャンスをものにするには、新たな経営へのアプローチが必要である。

本書によれば、あらゆる領域にはまだまだ無駄がたくさんひそんでいる。身近なところでは駐車場に停めっぱなしのマイカー、渋滞時間よりも空いている時間の方がはるかに長い高速道路、LEDではなく旧来型の白熱電球を使った照明などなど。ITを使ってこれら「遊んでいる」資源を、それを必要とする人々にシェアしたり、テクノロジーの進歩によって無駄を削減することができれば、人口増加によって天然資源が枯渇することなど当分心配しなくてもよいし、それどころか、莫大な富を手にすることができるビジネスチャンスがごろごろしているという。

具体的にどういうビジネスチャンスがあるか、例にはふれているものの細かく書かれてはいない(それはマッキンゼーがお金をとって分析書を出すところだ)。

ビジネス書として、いま世界中で起こっているさまざまな変革を紹介して、将来の可能性を見せてくれるけれど、実際にどうすればよいかは抽象的なポイントにまとめるにとどめるのは、いかにもコンサルタントらしい。1日でさくさく読めるから、将来像を想像してワクワクするには大変良い本。