コーヒータイム -Learning Optimism-

本を読むということは、これまで自分のなかになかったものを取りこみ、育ててゆくこと。多読乱読、英語書や中国語書もときどき。

カンボジアで出会いたい100人 (西村清志郎著)

カンボジアで10年間住んだ著者が、カンボジアでお世話になった在住日本人、出会ったさまざまな魅力的な日本人を紹介した一冊。大雑把にいえば、プノンペン編、シェムリアップ編などに分かれており、首都プノンペンでは大使館・外務省関係者などが政治的背景や歴史にからめて自分自身の経験を語る一方、シェムリアップではもっと気軽にカンボジアの自然・文化に魅せられてやってきた人々が頑張ってきた半生を振り返る、といったところ。職種も経験もカンボジア移住理由も実にさまざまで、なにやら職業紹介図鑑を見ている気さえしてわくわくしてくる。

先進国にある「良いもの」で「カンボジアにはまだないもの」をカンボジアに持ちこみ、ビジネスとして成立させようと試みている人、戦乱の中で失われようとしているカンボジア伝統工芸品を復興させようとしている人、孤児院経営や貧しい農村の起業支援をしている人。カンボジアでの活動はさまざまだ。共通しているのはカンボジアに日本にない可能性を見出していること。カンボジア司法省で法整備プロジェクトに関わっていた方の言葉が深い。

カンボジア人は「できない」のではなく、不幸な歴史により教えられる人がいなくなってしまったために「できるようになる教育を受けてこられなかった」だけであって、我々日本人が持っている知識経験をシェアすれば、自ら学んで成長します。

カンボジアの不幸な歴史は、ポルポト政権、クメールルージュなどのキーワードとして、断片的にではあるが日本でも知られていると思う。この本を読むにあたって少し調べた。ベトナム分断時代、アメリカなどの介入でカンボジアでも内戦が起こり、クーデターにより国王が追放された。内戦は激化し、極端な共産主義を掲げるポルポト書記長をリーダーとするクメールルージュ政権樹立。この時代に数百万人が生命を落としたとされる。何代もの政権が前政権を打倒しては立ち、また倒れ、1993年5月には国際連合の監視下で民主選挙が実施されてようやく、少しずつ落ち着いていった。

この本で、この時代にカンボジアにとどまっていた人は少なく、その時代のことにわずかでもふれている人はもっと少ない。だからこそ、言葉のとてつもない重みがある。