コーヒータイム -Learning Optimism-

本を読むということは、これまで自分のなかになかったものを取りこみ、育ててゆくこと。多読乱読、英語書や中国語書もときどき。

異国にて故郷を想う『二つの祖国を持つ女性たち』

ロサンゼルス在住の著者が、出身国や職業がバラバラな移民一世の女性たちに33の全く同じインタビューをして、その結果をまとめたもの。いわゆる移民あるある苦労話の寄せ集めではなく、客観的であることに努め、女性たちの話に感情的に入りこみすぎないように抑えた内容になっている。逆にそれゆえに読んでいてちょっとつまらなく感じる。最後の日本人女性の章だけは、同じ日本人同士であり、ピアノの先生と生徒同士という関係性もあって、インタビューだけの関係であるほかの女性たちを扱った章より熱が入っているような感じがした。

わたしがこの本を手にとったのは、二つの祖国、二つの文化間で移民女性たちがどのように心理的バランスをとっているのか知りたかったからだが、本書ではあまり深入りしていない。著者の関心があまり向いてなかったせいかもしれないし、アメリカという移民国家ではみんな違うのがあたり前であり、同調圧力が強い日本で暮らす外国人たちほどアイデンティティに悩まなくて済むからかもしれない。

とはいえヒントがないわけではない。インタビューした女性たちの誰もがアメリカを機会と自由に恵まれたすばらしい国だと言う一方で、難民同然に国外脱出した女性であっても、自国の文化習慣は守っていた。これは著者が意図的に10代以降にアメリカ移住した移民一世を選んでいるからだろう。10代を過ぎれば、もといた国の文化習慣はもはや深く根付き、なかなか抜けないものだから(不可能ではないけれど)。