コーヒータイム -Learning Optimism-

本を読むということは、これまで自分のなかになかったものを取りこみ、育ててゆくこと。多読乱読、英語書や中国語書もときどき。

<英語読書チャレンジ 14 / 365> C.S.Lewis “Prince Caspian, The Return to Narnia”(邦題《ナルニア国物語2 カスピアン王子の角笛》)

思いつきで英語の本365冊読破にチャレンジ。ページ数100以上、ジャンルはなんでもOK、最後まできちんと読み通すのがルール。期限は2025年3月20日
本書は映画化された大人気ファンタジーシリーズ《ナルニア国物語》の第2作《カスピアン王子の角笛》。子ども向けであるから英語は非常に読みやすく、英語多読にはもってこい。

物語は前作《ライオンと魔女》の1年後から始まる。

ナルニア国からイングランドに戻ってきたピーター、スーザン、エドマンド、ルーシーの四兄妹は、夏休みを終え、学校に戻るために電車に乗りこんでいた。しかし急に不思議な魔力が働き、気づけば四人は懐かしいナルニア国にいた。四人がそこで見たのは、自分たちが暮らしていたはずの城が、まるで数百年の時間が流れたかのように、深い森に埋もれ、廃墟と成り果てた姿であった。

たまたま助けたドワーフから、四人はナルニア国になにが起きたのかを知る。人間によく似た姿のテルマール人が現れ、古くからナルニア国で暮らしていた森の精、水の精、言葉を話すことができる動物や樹木たち、ドワーフケンタウルスなどの生き物を駆逐して新ナルニア国を建立し、古いナルニア国の住人たちについて語ることを禁じたのだ。現国王は正当な王位継承者であるカスピアン王子の叔父であり、前国王を暗殺して即位したといわれる。カスピアン王子はしばらく生かされていたが、現国王に息子が産まれたため、殺されることを恐れて逃亡し、古いナルニア国の住民たちにかくまわれていたという。しかしカスピアン王子の身に危険が迫り、彼を助けるために、ピーターたち四人は、ふたたびナルニア国に呼び戻されたのだったーー。

 

読み進めるにつれて、前作《ライオンと魔女》からキリスト教の基礎を学ぶことができるなら、今作《カスピアン王子の角笛》で学ぶのはイングランドの歴史と文学だという気がしてきた。征服者が現れて古くからの住民を駆逐するところはノルマンディー公ウィリアムのイングランド征服を思わせるし、物語後半にはさらに古いヴァイキング征服時代の歴史までほのめかされる。正当な王位継承者の叔父が王位を簒奪するのはそのまんまシェイクスピアの《ハムレット》だし、同じシェイクスピアの《マクベス》を思わせる情景もでてくる。

文学的謎解きを楽しむのもさることながら、感動を呼び起こすはなんといってもピーターとスーザンである。とくにピーターは冒険の中でイギリスに古くから伝わる騎士道精神をしだいに身につけてゆき、少年から一人前の男性に成長する。物語終盤、ピーターとスーザンが二度とナルニア国に戻ることはないとほのめかされるが、二人はもうナルニア国で学ぶべきことをすべて終えてしまったのだ。おとぎ話の世界には別れを告げ、イングランドでの現実世界に生きなければならないーーそれは、ピーターパンがネバーランドにとどまるために永遠の少年でいることを選んだのとは正反対の結末だ。