コーヒータイム -Learning Optimism-

本を読むということは、これまで自分のなかになかったものを取りこみ、育ててゆくこと。多読乱読、英語書や中国語書もときどき。

<英語読書チャレンジ 15 / 365> A. Christie “The Mysterious Affair at Styles”(邦題《スタイルズ荘の怪事件》)

思いつきで英語の本365冊読破にチャレンジ。ページ数100以上、ジャンルはなんでもOK、最後まできちんと読み通すのがルール。期限は2025年3月20日
本書はミステリーの女王アガサ・クリスティーの初の長編作品にして、名探偵エルキュール・ポアロシリーズの第1作目《スタイルズ荘の怪事件》。クリスティーの作品は《春にして君を離れ》《そして誰もいなくなった》しか読んだことがなく、エルキュール・ポアロシリーズはまったくノータッチだったため英語多読にちょうど良い。しかもきちんと細部まで英語を読みこなさなければ楽しめないから、気合いが入る。

舞台は第一次世界大戦のさなか。語り手のヘイスティングズは元銀行員から従軍し、物語開始時には負傷により休暇をとっていた。ヘイスティングズはたまたま旧友ジョン・カヴェンディッシュと再会し、彼の実家であるスタイルズ荘に招待される。そこではジョンの継母であるエミリー・イングルソープ夫人が、再婚相手のアルフレッドとともにヘイスティングズを出迎えた。

ジョンと弟ロレンスの実父はすでに亡く、遺産の大部分はエミリー夫人が受け継いでいた。その彼女が再婚すれば遺産問題でこじれるのがわかりきっており、ジョンはアルフレッドが気に入らない。スティルズ荘に長年勤める家政婦のエヴリンは、アルフレッドは遺産目当てで結婚したと言い放ち、エミリー夫人と大喧嘩して出ていってしまう。

ヘイスティングズがスタイルズ荘に滞在しはじめてから2週間ほどたったある日の早朝、エミリー夫人がけいれんの果てに死亡する。状況から毒殺が疑われた。死亡前日に夫人が誰かと激しく言い争っていたのをメイドが聞いている。深まる謎を解き明かすため、ヘイスティングズはジョンの許可を得て、たまたま付近に滞在していた名探偵エルキュール・ポアロに事件捜査を依頼するーー。

処女作である本作は、謎解きのためにわかりやすいヒントをちりばめており、ウォーリーをさがせ!のような楽しみ方ができる。たまにわかりやすすぎるヒントが配置されていてものたりなくなることもあるが、ちゃんとどんでん返しが用意されているのでご安心を。

ろうそく照明、第一次世界大戦時の節約志向、当時の英国法律などのように20世紀前半ならではの時代背景をもつ一方、毒殺トリックについては相当掘り下げているため意外性も抜群。化学系出身者としては、そうきたか!!と膝打ちしたくなることうけあい。