コーヒータイム -Learning Optimism-

本を読むということは、これまで自分のなかになかったものを取りこみ、育ててゆくこと。多読乱読、英語書や中国語書もときどき。

<英語読書チャレンジ 16 / 365> A.Christie “The Murder of Roger Ackroyd”(邦題《アクロイド殺し》)

思いつきで英語の本365冊読破にチャレンジ。ページ数100以上、ジャンルはなんでもOK、最後まできちんと読み通すのがルール。期限は2025年3月20日。本書はミステリーの女王アガサ・クリスティーによる名探偵エルキュール・ポアロシリーズ《アクロイド殺し》。ポアロシリーズの中でも屈指の名作にしてクリスティーの代表作のひとつといわれる。

舞台はどこにでもあるようなイギリスの小さな村キングズ・アボット。娯楽といえば「ゴシップ」の4文字で済んでしまうような田舎村である。物語は地元に住むシェパード医師の一人称ですすむ(ちなみにこれまで語り手だったポアロの友人ヘイスティングズはこのとき南米に滞在している)。

裕福な未亡人フェラーズ夫人が睡眠薬の飲みすぎと思われる状況で死亡した翌日、シェパード医師は地元の名士ロジャー・アクロイドに夕食に招かれる。アクロイドはフェラーズ夫人の再婚相手と噂されていた。その晩シェパード医師は思いもがけない話をアクロイドから聞かされる。フェラーズ夫人は死の前日、彼女の前夫は病死ではなく、彼女が毒殺したのだとアクロイドに告白し、その夜に睡眠薬自殺したという。

その晩、シェパード医師は帰宅後に緊急電話でアクロイド邸に呼び出される。ロジャー・アクロイドが殺されたというのである。シェパード医師が駆けつけたとき、アクロイドは胸を一突きにされて死亡していた。おかしなことに、ロンドンにいるはずのアクロイドの義理息子ーー前妻の連れ子ーーであるラルフがキングズ・アボットで目撃され、アクロイドが殺された夜から姿をくらましていることが明らかになる。アクロイドの姪であり、ラルフの婚約者であるフローラは、ラルフの無実を信じ、引退してシェパード医師の隣人となっていたエルキュール・ポアロに真相を解き明かすよう依頼するーー。

 

わりと序盤でシェパード医師が「信頼できない語り手」であることが明かされるーー彼はアクロイド殺しがあった夜、ラルフの滞在先を訪れたことを意図的に語らずにいた。

ポアロによれば、あの晩アクロイド邸にいた人々はだれもが隠しごとをしていて、だれもが嘘をついている可能性があるという。おかげで、本人以外の登場人物がいないーーすなわち本人以外に立証できる者がいないーー証言全部に疑いをもち、さらにシェパード医師の語ることーーすなわち小説の地の文すべてーーにも神経を尖らせなければならなかった。それでもしっかり騙されて、「騙された!!」と膝打ちしつつすっきりした読後感を抱いたのだからすごい。ちなみに中学生程度の英語読解能力と英和辞書(Google翻訳でもよい)があれば、叙述トリックに気づくことは充分可能だ。