コーヒータイム -Learning Optimism-

18歳のわが子に読書をすすめるために、まずわたしが多読乱読しながらおすすめを探しています。英語書や中国語書もときどき。

<英語読書チャレンジ 23 / 365> P.G. Woodhouse “The Inimitable Jeeves”(邦題《比類なきジーヴス》)

英語の本365冊読破にチャレンジ。ページ数は最低100頁程度、ジャンルはなんでもOK、最後まできちんと読み通すのがルール。期限は2025年3月20日
本書はイギリスで大人気のコメディシリーズ《ジーヴスシリーズ》。邦訳タイトルは『比類なきジーヴス』で、原著タイトルも同じ。

もうね、とにかく笑える。おすすめ。

舞台設定は20世紀初頭のイギリス。物語は主人公バーティ・ウースターの一人称で進む。バーティは伯爵位継承予定の裕福な若者であり、上流階級によくあるようにひまをもて余す世間知らず、ちょっとおまぬけだがお人好しで憎めない人柄。ジーヴスはバーティの執事で、非常に有能であり、バーティいわく彼にとっての「先導者、哲学者、友人」。これにバーティの腐れ縁の学友、しばしばーー主に金銭と恋愛関係でーー度を越したろくでもないことを思いつくビンゴ・リトルを加えた3人が主要登場人物。

本書は18の短編からなる短編小説集であり、いくつかの短編は2つで1つの物語となっている。いくつかあらすじを見てみよう。

 

1話目&2話目

ある気持ちの良い朝、バーティはビンゴ・リトルと顔を合わせる。ビンゴは伯父から潤沢なお小遣いをもらいながらロンドンで気ままに暮らしているが、しょっちゅう誰かに惚れており、その日も可愛いウェイトレスから贈られた(バーティいわく、こんなものを似合うと言ってくる奴がいたらそいつを西洋実桜の幹にたたきつけてやりたくなるような)おかしなネクタイをして、彼女が働く(バーティいわく、暗殺のためにつくられたような食べ物を出す)下町食堂にせっせと通う。ビンゴは恋を成就させるためにジーヴスの助言がほしいと必死に頼み、バーティは断りきれずにジーヴスに伝言する。恋に浮かれたビンゴはやることなすこと全部おかしくてたまらず、ラストでジーヴスが恋破れたビンゴから美味しいところをしたたかにかっさらうのが抱腹絶倒。

 

3話目&4話目

バーティの大の苦手である厳格なアガサ伯母さんから手紙がとどき、彼女が滞在しているフランスの観光地に来るよう命令された。アガサ伯母さんは旅行先で知り合ったアライン・ヘミングウェイ嬢をバーティに紹介し、彼の結婚相手にふさわしいと絶賛する。バーティはジーヴスに助けを求めようとするが、バーティが(まったく似合わない)奇妙奇天烈な腰帯をつけていることが不満でならないジーヴスの態度は冷たい。最初から最後までくだらなく笑えるドタバタ展開で、ジーヴスの名探偵ぶりが光る。

 

5話目&6話目

懲りないアガサ伯母さんはまたもやバーティの結婚相手候補としてオノリア・グロソップという女性を見つけ、彼女を訪ねるようバーティに厳命する。バーティはたまたまジーヴスが自分のことを「賢いとはいえない」と評価するところを立ち聞きしてしまい、意地になってジーヴスの助けを借りずに窮状を乗り切ろうとする。同じく懲りないビンゴがまたまた恋に落ちるが、その相手がまさしくオノリアで、もうしっちゃかめっちゃか。最後の場面でバーティはよくまあビンゴをはり倒さなかったと思う。

 

7話目&8話目

オノリア・グロソップと婚約する羽目になったバーティは、彼女がアガサ伯母さんと息ぴったりで、絵画鑑賞やクラシックコンサートなどの「教養ある」催しに行きたがることに恐怖していた。さらにオノリアとアガサ伯母さんは、結婚後はジーヴスに辞めてもらうようバーティに迫る。オノリアの父親で精神科医のサー・ロデリックと自宅で昼食をともにすることになったバーティは、ギャンブル嫌い、禁酒主義、禁煙主義、素食主義、コーヒー大嫌い、講義のようなもってまわった言い回しを好む彼をもてなそうと四苦八苦する。サー・ロデリックは将来の娘婿が変人でないかどうか見極めに来たというが、彼自身もなかなかの変わり者。そのサー・ロデリックを撃退するためにジーヴスがもくろんだとんでもない策は大爆笑もの。

 

まあこんな感じで毎回抱腹絶倒のドタバタコメディが繰広げられる。ジーヴスは毎回奇想天外な解決方法を思いつくのだが、かなりはた迷惑なやり方も少なくない。たとえばサー・ロデリックが大嫌いな猫(とその他もろもろ)を寝室に仕込んで昼食会を中断させたときなどは、主人であるはずのバーティの面目丸つぶれである。というかいちばんひどい目に遭っているのは間違いなく彼だと思う。

バーティは彼自身がこきおろされることに憤慨したり意地になったりしながら、結局最後はジーヴスの好きにさせているあたり、いかにもなヘタレ金持ちぼっちゃんで、それが面白い。共産主義活動家に恋したビンゴが身分を隠して彼女の活動に加わり、 "同志" リトルと呼ばれるなど、本書が出版された時期(おおよそ第一次世界大戦第二次世界大戦の間)の時事ネタもばっちり。

本書の作者ウッドハウス氏はジーヴスシリーズで大人気作家となるが、第二次世界大戦中にその知名度ナチスに利用され、米英向けラジオ放送に出演させられたことをきっかけにイギリスで激しい批判にさらされ、ついにはアメリカに移住せざるを得なくなる。現在では放送自体がでっちあげだという説が有力であるが、ウッドハウス本人がそれほど政治的思想にこだわりがなかったのもまた確かのようだ。