コーヒータイム -Learning Optimism-

本を読むということは、これまで自分のなかになかったものを取りこみ、育ててゆくこと。多読乱読、英語書や中国語書もときどき。

私がホストに墜ちたワケ ー 愛はお金で買えますか? (さな著)

坂口杏里がホストにはまったあげく恐喝未遂で逮捕された、というニュースが一時期騒がれていた。もし坂口杏里が日記でもつけていたら、この本に似た内容になったかもしれない。ラストは違ったけれど。

プロローグを見た瞬間、「あ、これダメなやつだ」と分かった。

著者はある日突然相思相愛だったはずの彼氏と連絡がとれなくなり、そのまま姿をくらまされてしまった。一方的な別れに心が壊れそうになって、とにかくなにかに縋りたくてふらりとホストクラブサイトにアクセスしたら、好みの顔のホストが見つかった。おまけに著者は摂食障害ときている。ここまで見ればもう著者がホストにはまったのはほぼ必然的だと分かる。

女性は好みの顔や性格の男性に恋する。だがそれだけではなく、疲れてまいっているときに支えてくれそうな男性に、恋愛感情を抱くこともある。縋るものがほしいからだ。後者の場合好みかどうかというより、女性側のコンディションが悪いときにタイミングよく出会うかどうかで、恋に落ちるかが決まることが多い。

著者は摂食障害を抱えている。摂食障害は理想の自分と現実の自分にギャップがあり、しかもそれを受け容れられないという心理問題を抱えている女性がなりやすい。著者も現実の自分に満足していないから自尊心は低く、依存心は強い。しかも彼氏が理由も告げず姿をくらました直後、会って話そうにも連絡がつかない。最悪なコンディションのときに最悪なタイミングでホストに出会ってしまったのだ。

ここから著者がホストに貢ぐためにあらゆる手段で金を稼ぎ、ホストの営業と分かりつつ一喜一憂する壮絶な日々が始まる。貢いだのは軽く一千万はあるだろう。繰り返し、繰り返し、述べられるのは、本当はタイプでもなかったけれど、ホストに必要とされることで生きる意味を見出したかったということ。貢いだお金のおかげでナンバーが上がり、ホストが喜んでくれることが嬉しいし、優越感を覚えたということ。

悲しいくらいに著者は人のために何かをすることでしか存在価値を見出せず、最後にホストと別れられたのも、新たな男性と知りあい、彼に依存対象を乗り換えたからにすぎなかった。そういう意味で著者の心理的問題や依存体質は何一つ改善していない。たまたま運良く次の男性と知りあい、しかも彼が常識的なつきあいができる人だったから、ホストと切れたにすぎないのだ。それがなんともいえず怖い。