本書は「意識的習慣づけ」のための本だ。英語としてはちょっと難しい文章が多かったが、意味が取れないほどではない、という感じ。
「意識的に」ということがキモだ。著者は冒頭でこう述べている。(日本語は意訳)
Through our constant connectivity to each other, we have become increasingly reactive to what comes to us rather than being proactive about what matters most to us.
まわりの人々とお互いとぎれずに影響しあうことで、私達はどんどん自分に起こることに反応してばかりいるようになる。私達にとって一番大切なことにみずから取組むよりも(反応に時間を取られてしまう)。
こうした状況が続くと、毎日習慣的にこなしていることの多くが、実はまわりの環境・状況に反応するためのものにすぎなくなってしまう。
著者らはこうした状態を改め、自分にとって優先順位が高いことをするために毎日の習慣を見直し、集中すべきことを明らかにし、クリエイティブな日々にしよう、と呼びかけ、そのためにすべきことをこの本にまとめている。
本の内容は、数十人ものクリエイティブコンサルタントなどの実績ある人々への取材を通して、彼らがやっているさまざまな方法を紹介していくスタイルだ。一人につき一章。各章は短いためすぐ読み終えることができ、読み終えた時には、成功した人々と成功体験を分かち合うために対話したかのような心地良さを感じる。
「頭が最も冴える時間をメールの返信などにあてるのはもったいない、その時間はクリエイティブな仕事に集中してメールや打ち合わせをしないようにする」「クリエイティブな仕事を始めるときに、決まったこと(お茶を飲むなど)をして、意識を切りかえる」など、それぞれが実践しているコツが紹介されていて面白い。
多くの成功した人々がすすめているのは、会議等の予定を一切入れない空白時間をもち、その間は思考を中断させてしまうメールもSNSもシャットアウトして、創造的活動に集中すること。これを習慣付けること。
考えてみればスマートホンなどのテクノロジーが発達し、いつでもどこでも連絡出来ることになった対価に、一人でいられる時間を奪われてしまった。家族団欒を楽しんでいるはずの夜8時位に、時差のある海外と電話会議しているというのはザラだし、SNSでは24時間世界各地から投稿が流れてくる。
「邪魔されず創作的活動に集中できる時間と環境を確保せよ」
これがなにより難しくなってしまった現代社会を、ふと空恐ろしく思った。