コーヒータイム -Learning Optimism-

本を読むということは、これまで自分のなかになかったものを取りこみ、育ててゆくこと。多読乱読、英語書や中国語書もときどき。

イギリスの幽霊譚でアフタヌーンティーを〜Charles River Editors “Ghost Tales of the United Kingdom: Historic Hauntings and Supernatural Stories from the UK”

幽霊屋敷、呪われた教会、イギリスの「呪われた場所」をカラー写真入りで紹介する本。

私は幽霊や超常現象などはあまり信じていないけれど、たまに息抜きでこういう怪談話を読んでみるのは嫌いではない。ただし『リング』やら『着信アリ』やらの精神的にくるジャパニーズホラーは苦手で、欧米の怪談集が多い。

Having traveled the length and breadth of England, it is hard to go to a single town or village however small where locals did not claim a house was haunted.
ーーイングランドをくまなく旅すると、どんなに小さな街や村であろうと、地元住民に、呪われている、と言われる家がないところはめったにない。

本書で紹介されるイギリスの幽霊物語は、日本の幽霊話と似ているところがある。イギリスでは死後煉獄で苦しめられている者が幽霊となって現れ、生前の過ちを正そうとしたり、自分のためにミサをあげてほしいと頼んだりするが、日本の幽霊談でも死者が地獄の責め苦について話したり、読経をしてほしいと願ったりする。

イギリスの田舎町には、残酷な死にかたをした人が(日本の言い方をすれば「成仏できずに」)幽霊となってさまよう屋敷や教会がある。たとえばある教会では、恋人と駆け落ちをしようとして失敗した修道女が、煉瓦壁の中の空間に覗き穴だけ残した状態で閉じこめられ、彼女の恋人が斬首されるのを見せつけられてから、覗き穴を塞がれて窒息死か餓死させられたという。その修道女がその後、亡霊となってさまよい、教会で数々の怪奇現象を起こしたという噂がまことしやかに立つ。

こういう話を聞くとぞっとしないが、日本とイギリスで似たような幽霊譚が伝えられてきたのは、残酷な死にかたをした人への罪悪感、復讐されるかもしれないという恐怖感、悪いことをすれば地獄に落ちるという教育的意義など、さまざまな思惑が背後にあったからだろう、などと穿った読み方をしてしまう。まあ最近人気の漫画『鬼灯の冷徹』ではないけれど、「地獄は本当にあるかもしれません。現世での行いには充分注意しましょう」だ。