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本を読むということは、これまで自分のなかになかったものを取りこみ、育ててゆくこと。多読乱読、英語書や中国語書もときどき。

[テーマ読書]有価証券報告書を読む(2)三井不動産 /住友不動産 /東急不動産

なんとなく有価証券報告書を読むシリーズ第2弾。有価証券報告書をまともに読むのは初めてなので、解説らしいことはできません。勉強を始めたばかりの投資初心者のメモ書きとお考えください。

今回のテーマは住宅用不動産。

 

企業紹介とビジネスモデル

選んだのは2021年版「不動産売買仲介実績ランキング(2020年4月〜2021年3月)」の上位3社。いずれも新築から中古、一戸建てからマンションまで手広く取り扱う。いずれも大手不動産会社の非上場100%持株子会社であることから、実際には親会社が建設した不動産を売る業務がメインと考えられる。

 

三井不動産リアルティ

非上場。三井不動産株式会社の100%持株子会社。Webで個別賃借対照表と損益計算書などを公開している。「三井のリハウス」というブランド名で一戸建、土地、マンションなどの仲介を行う。1986年度~2019年度の34年連続で全国仲介取扱件数No.1。

親会社の三井不動産は賃貸事業や分譲事業のほか、マネジメント事業、ホテルやリゾート施設、ゴルフ場運営事業なども行う。ちなみに帝国ホテルと東京ドームは三井不動産が管理している。

 

住友不動産販売

非上場。住友不動産株式会社の100%子会社。関西圏では絶対的な集客力がある。

親会社の住友不動産は不動産賃貸、販売、流通(仲介など)、完成工事事業などを行なっている。建替えよりも安価で新築同然にリフォームする「新築そっくりさん」がここ最近話題によく出てくる。

 

東急リバブル

非上場。東急不動産ホールディングスの100%子会社。

親会社の東急不動産ホールディングスは2021年4月以降、都市開発事業、戦略投資事業、管理運営事業、不動産流通事業の4つのセグメントで事業展開している。2021年3月以前は7つのセグメントがあったが、これを4つに集約した。都市開発事業には賃貸オフィス/賃貸商業施設/住宅分譲、戦略投資事業にはインフラ・インダストリーや再生可能エネルギー、管理運営事業にはマンションやビル、ホテル、レジャーなどの管理運営、不動産流通事業には売買仲介などが含まれる。

 

おまけ: 不動産業統計集

不動産業統計集 | 公益財団法人不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター)

公益財団法人不動産流通推進センターが公表している資料。国土交通白書によれば不動産資産額は2018年末で約2,658兆円。財務省の年次別法人企業統計調査によると、2020年度の不動産業売上高は44兆3182億円。ちなみに2020年-2021年の不動産業界の業界規模(主要対象企業146社の売上高の合計)は15兆5,399億円というデータもあるが、不動産流通推進センターの資料によれば、資本金1000万円未満、1000万円〜1億円未満、1億円〜10億円未満、10億円以上の企業でそれぞれ売上高のおおよそ20%、35%、19%、26%(2018年度売上高をもとに概算)なので、いわゆる中小企業が売上高に占める割合は決して低くない。

2021年度売上高ランキングは三井不動産(売上高1兆9,056億4,200万円)がトップ、2位に三菱地所(売上高1兆3,021億9,600万円)が入り、3位住友不動産(売上高1兆135億1,200万円)、4位東急不動産ホールディングス(売上高9,907億3,500万円)が続く。

 

おまけ: 不動産市場動向データ集

https://www.zentaku.or.jp/cms/wp-content/uploads/2021/04/202103.pdf

全国宅地建物取引業協会連合会不動産総合研究所が2021年3月に公表したデータ。2010年を100とした不動産価格指数は戸建=103.2、マンション=158.1で、ここ10年、とくに2012年以降のマンションの値上がりが著しいことを示す。首都圏においては新築マンション供給戸数31,238戸、中古マンション成約件数38,109件。新築戸建成約件数5,872件、中古戸建成約件数13,037件と、マンションのほうが供給も成約件数も圧倒的。

 

不動産の基礎知識

不動産はざっくりいうと「土地」「建物」のこと。不動産についてもっとも基本的な「だれがどこまで所有していて、所有権のほかになにか権利が付与されているか」不動産登記事項証明書をはじめ、公図(地番を確認するために必須)、地積測量図、建物図面、各階平面図、登記事項要約書は登記所で取得できる。不動産の直接売買、売買仲介、賃貸借仲介は宅地建物取引業と呼ぶ。

不動産売買には公簿調査現地調査役所調査(法令上の制限の調査)が必要になり、業者が行う。不動産情報はレインズ(REINS、Real Estate Information Network System=不動産流通標準情報システムの略称で、国土交通大臣から指定を受けた不動産流通機構が運営しているコンピューターネットワークシステム)に登録する義務がある。システムは会員登録制だが、取引情報は一般でも見られる。

不動産取引情報提供サイト(マンション・戸建住宅の売買価格・相場・取引事例の情報公開サイト)

また、国土交通省の土地総合情報システムも。

土地総合情報システム

参考にしたのはこの1冊。2017/11/1時点の法令に基づく。

 

有価証券報告書をまず読んでみる

不動産売買仲介実績上位3位はすべて非上場の100%持株子会社であったため、親会社の有価証券報告書を読んでみることにした。

 

三井不動産株式会社

第一部第2の3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】に概要がまとめられている。売上高は2兆75億円(前期比5.3%増)、営業利益は2,037億円(前期比27.4%減)。

 

住友不動産株式会社

第一部第2の3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】に概要がまとめられている。売上高は9,174億円(前期比9.5%減)、営業利益は2,192億円(同6.4%)。東京都心オフィスを中心とした不動産賃貸事業が住友不動産株式会社の営業利益の7割近くを占める。

 

東急不動産ホールディングス

第一部第2の3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】に概要がまとめられている。売上高9,077億円(前期比5.8%減)、営業利益565億円(28.7%減)。

 

投資指標を参照してみる

事業持株会社である三井不動産株式会社と住友不動産株式会社とは、ホールディングスである東急不動産ホールディングスとは、性質がちがうため一概に投資指標を比較することはできない。

三井不動産株式会社

 自己資本比率= 36.5%

 当期純利益= 1,227億85百万円

 1株当たり当期純利益= 127.39円

 1株当たり配当額= 44.00円

 株価収益率= 19.7%

 売上高経常利益率= 16.5%

 自己資本利益率= 5.8%

 

住友不動産株式会社

 自己資本比率= 28.0%

 当期純利益= 1,403億42百万円

 1株当たり当期純利益= 296.12円

 1株当たり配当額= 40.00円

 株価収益率= 13.19%

 売上高経常利益率= 24.6%

 自己資本利益率= 10.3%

 

東急不動産ホールディングス

 自己資本比率= 20.8%

 当期純利益= 175億86百万円

 1株当たり当期純利益= 24.45円

 1株当たり配当額= 16.00円

 株価収益率= 26.8%

 売上高経常利益率= 58.6%

 自己資本利益率= 5.8%

ちなみに東急リバブルは売上高の連結売上高に占める割合が10%を越えているため、有価証券報告書に個別に売上高等が記載されている。売上高は1,288億97百万円(およそ連結売上高の14%)、当期純利益は8,816百万円。

参考にしたのはこの1冊。

 

家を買うときかかるお金〜消費者視点から〜

家購入については、だいたい自己資金は物件価格の20%程度はあるといいと言われている。諸費用が物件価格の10%程度かかる(中古の一戸建てを業者の仲介で買う場合が一番高くなる)ため、物件価格の30%程度の現金があればまずはそこそこ。

不動産の価格査定は以下の流れによる。国が査定する地価公示価格都道府県が査定する基準地価は市区町村役場で閲覧できる。実勢価格とは一致しないためあくまで目安。

Web版既存住宅価格査定マニュアル ログイン

土地総合情報システム

参考にしたのはこの1冊。資金計画をたてるにあたり、年間返済額100万円あたりの金利別・返還年数別借入可能額早見表がとても参考になる。良くも悪くもお金中心なので、たとえばオープン収納は安上がりだとすすめるけれど欠点である「地震のときの収納物落下」にふれていない、ということもある。なぜか不動産購入の仲介手数料にはあまりふれていない気がする。

また、経営者向けではあるが、お金を銀行から借りるにあたり考えなければならない基本的事項が書かれている1冊も。資金繰予定表や返済計画書は、住宅ローンを借りるにあたっても(銀行に提出するかはともかく)やって損はない。営利組織としての銀行の内部事情ーーつねに新規融資先を探している、信用保証協会の保証付融資枠を使わせたがるなどーーをふまえて、中小企業と銀行とのつき合い方をじっくりくわしく書いているため、『半沢直樹』シリーズを読んだことがある方ならかなり楽しめる。

 

不動産投資にかかるお金〜大家視点から〜

不動産投資が住宅購入と異なるのは、利益を出すのが目的だということ。

2016年時点で中古区分(マンションの一室など)の表面利回りは5〜6%、新築一棟は7〜9%が相場。ただしここから不動産業者の手数料、各種管理費や税金が引かれるから、実質利回りはもっと低い。

また、不動産売却により利益を出す方法も考えられるが、日本人は新築指向が強いので、よほどの人気エリアならともかく、新築は購入した瞬間に1〜1.5割値下がりするのを覚悟しなければならない。耐用年数などにもよるが、だいたい15年で上物(建物)は半額程度になるため要注意。

参考にしたのはこの4冊。読んだときの記事を一緒に載せておく。

不動産投資の基礎知識にこの一冊〜大和不動産鑑定編著『不動産の価格がわかる本』 - コーヒータイム -Learning Optimism-

不動産投資を考えるならば失敗例も知っておきたい〜小林大貴『知らないと取り返しがつかない 不動産投資で陥る55のワナ』 - コーヒータイム -Learning Optimism-

不動産投資もひとつの選択肢、かもしれない〜稲垣浩之『不動産投資専門税理士が明かす 金持ち大家さんが買う物件 買わない物件』 - コーヒータイム -Learning Optimism-

不動産会社社長がすすめる不動産投資〜市川周治『ゼロから始める不動産投資』 - コーヒータイム -Learning Optimism-