コーヒータイム -Learning Optimism-

本を読むということは、これまで自分のなかになかったものを取りこみ、育ててゆくこと。多読乱読、英語書や中国語書もときどき。

小説・エッセイ

シェエラザード(上)(下) (浅田次郎著)

シェエラザード(上) (講談社文庫) 作者: 浅田次郎 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2002/12/13 メディア: 文庫 購入: 6人 クリック: 520回 この商品を含むブログ (67件) を見る シェエラザード(下) (講談社文庫) 作者: 浅田次郎 出版社/メーカー: 講談社 …

千年の黙 異本源氏物語 平安推理絵巻』(森谷明子著)

千年の黙 異本源氏物語 平安推理絵巻 (創元推理文庫) 作者: 森谷明子 出版社/メーカー: 東京創元社 発売日: 2015/07/21 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る 平安時代は、物語の舞台としてとても好きな時代だ。貴族間の恋のかけひき、季節の花に…

陰日向に咲く (劇団ひとり著)

軽いテイストの小説。5人の"陽に当たらない落ちこぼれ"の人生がほんの一点で交差する群像劇を、5篇の短編小説で書いている。あえて時系列をはっきりさせず、ちょっとしたヒントから読み取らせるのが、なぞなぞを解くようで面白い。 1篇目。主人公のサラリ…

君の膵臓をたべたい (住野よる著)

映画にもなった大ヒット青春小説。近所の本屋で、山積みになった文庫本の前でエンドレスにプロモーション映像を流していたため、今でもヒロインの声をはっきりと思い出せる。が……今考えれば「君は嫌がるかもしれないけど、私はやっぱり、君の膵臓をたべたい…

脱・限界集落株式会社 (黒野伸一著)

『限界集落株式会社』の続き。止村経営が軌道に乗り、急激な成長はないものの持続的活況が見えてきたころ、麓に巨大ショッピングモールができる。東京の有名ブランド「マライア」が入り、アミューズメントパークやフードコートなども充実した総合エンターテ…

22年目の告白 ー私が殺人犯ですー (浜口倫太郎著)

藤原竜也、伊藤英明W主演で映画化されたことで、この小説のことを知った。 1995年1月14日から始まる5件の東京連続絞殺事件は、被害者の家族を拘束したうえで目撃者とする残酷極まりないものだった。4月27日の事件を最後に、犯人逮捕が果たされないまま時効を…

道を継ぐ (佐藤友美著)

この本を手に取ったのはタイトルと表紙が美しかったからで、取り上げられている鈴木三枝子さんという美容師のことは、本を開くまで知らなかった。 髪は邪魔にならなければいいやという考えの私であるが、それでも美容院でカットを終え、鏡を見て、髪が美しく…

シェリー《フランケンシュタイン》

「おれはおれをつくったおまえにも嫌われている。だとすれば 、おれに何の恩義もないほかの人間からどんな希望がもらえるというのか?はねつけられて嫌われるだけのことだ。」 哀れで惨めな醜い生き物、主人公フランケンシュタインの手で、納骨堂の骨と動物…

世界文学の名言 (クリストファー・ベルトン著)

著者もふれているように、たいていの文学の名言はその文学物語のストーリーの中で理解されるべきであるけれど、その部分だけでも心に触れてくるものをいくつか書く。 Fear of danger is ten thousand times more terrifying than danger itself. ーー危険へ…

チェーホフ《ワーニャ伯父さん》

ビジネス書が続いたので文学で息抜き。チェーホフの四大戯曲のひとつで、田舎生活の情景と副題が打たれているものだ。 私はロシア文学をあまり読まない。理由は人名が覚えにくすぎること。例えばこの本のタイトルにもなった主人公「ワーニャ伯父さん」のワー…

魯迅 《祝福》

魯迅の小説二作目。『阿Q正传』よりは分かりやすいのだが…読了後の正直な感想は「なぜよりによってこのタイトルにした?」だ。 小説の主人公は旧正月を控えて故郷に戻り、親戚宅に居候している。村全体で旧正月のお祝いに特別なごちそうを用意し、爆竹を鳴ら…

“The Bone Collector" by Jeffery Deaver

A Lincoln Rhyme Novel (9 Book Series) 作者: Jeffery Deaver メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る 初めて読む、ミステリーの大家ジェフリー・ディーヴァーの作品。これまで何度も図書館で見かけたけれど、「ボーン・コレクター」という快楽殺人…

おいしいおしゃべり (阿川佐和子著)

タイトルから料理関係が多いかと思ったが、そんなことはなく、料理、幼き日の思い出、思い入れがある品物、好きな場所などについてとりとめもなく綴ったエッセイを収めたエッセイ集。『おいしいおしゃべり』というタイトルのエッセイもある。内容はアメリカ…

魯迅 《阿Q正传》

魯迅作品の中でも有名な、魯迅唯一の中篇小説だが、初読の感想は「わけわからん」だった。 未荘という村に住む貧乏労働者阿Qは、どこにでもいるような貧民だ。家がなく、着ているものはボロボロで、さびれた寺の建物の中で寝起きし、時折村民のところで短期…

OUT(下) (桐野夏生著)

OUT 下 (講談社文庫 き 32-4) 作者: 桐野夏生 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2002/06/14 メディア: 文庫 購入: 7人 クリック: 29回 この商品を含むブログ (122件) を見る 上巻に続き、物語はどんどん薄暗い方に流れていく。山本弥生の夫健司を殺した容疑…

OUT(上) (桐野夏生著)

OUT 上 (講談社文庫 き 32-3) 作者: 桐野夏生 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2002/06/14 メディア: 文庫 購入: 9人 クリック: 67回 この商品を含むブログ (156件) を見る 読み進めるとひどく息苦しくなってくる小説だ。登場人物が希望を抱くことができな…

悪人(下) (吉田修一著)

悪人(下) (朝日文庫) 作者: 吉田修一 出版社/メーカー: 朝日新聞出版 発売日: 2009/11/06 メディア: 文庫 購入: 14人 クリック: 86回 この商品を含むブログ (169件) を見る 上巻を読んだときは街灯に沈む夜の街、闇の中に沈む峠が作品全体のイメージだったが…

悪人(上) (吉田修一著)

悪人(上) (朝日文庫) 作者: 吉田修一 出版社/メーカー: 朝日新聞出版 発売日: 2009/11/06 メディア: 文庫 購入: 15人 クリック: 181回 この商品を含むブログ (203件) を見る 吉田修一の小説の中で『怒り』と並ぶ代表作品とされる『悪人』だが、上巻を読んだ…

なぜ会社は変われないのか (柴田昌治著)

なぜ会社は変われないのか 危機突破の風土改革ドラマ (日経ビジネス人文庫) 作者: 柴田昌治 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社 発売日: 2003/10/31 メディア: 文庫 購入: 1人 クリック: 33回 この商品を含むブログ (23件) を見る 小説ながら実際の会社再…

天空の蜂 (東野圭吾著)

天空の蜂 新装版 作者: 東野圭吾 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2015/06/24 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 500ページ越えの大作にもかかわらず、息つくひまもなく一気に読ませる小説。すでに映画化されているが、最初と中盤と終盤にそれぞ…

パレード (吉田修一著)

パレード (幻冬舎文庫) 作者: 吉田修一 出版社/メーカー: 幻冬舎 発売日: 2004/04/01 メディア: 文庫 購入: 9人 クリック: 112回 この商品を含むブログ (241件) を見る この小説は解説から読み始めたのだが、「こわい小説だった」と繰り返されていたのが気に…

怒り(下) (吉田修一著)

怒り(下) (中公文庫) 作者: 吉田修一 出版社/メーカー: 中央公論新社 発売日: 2016/01/21 メディア: 文庫 この商品を含むブログ (21件) を見る 下巻を一気に読みきった。読後感は少しの救いと、少しの絶望がまざっている。 山神一也はいた。だが「さよなら渓…

怒り(上) (吉田修一著)

怒り(上) (中公文庫) 作者: 吉田修一 出版社/メーカー: 中央公論新社 発売日: 2016/01/21 メディア: 文庫 この商品を含むブログ (24件) を見る 物語はある夏、八王子のある民家での夫妻殺人事件から幕を開ける。容疑者の山神一也は、被害者宅に「怒」と血文…

さよなら渓谷 (吉田修一著)

さよなら渓谷 (新潮文庫) 作者: 吉田修一 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2010/11/01 メディア: 文庫 クリック: 12回 この商品を含むブログ (37件) を見る 吉田修一は、尊敬する友人が大絶賛している作家だ。これまではあまり手に取らなかったが、ふとした…

貧乏の神様 芥川賞作家困窮生活記 (柳美里著)

初めて柳美里の作品を読んだのはベストセラー「命」を母親が買ってきたときだ。最初の方に、ガンを患った東由多加のためにいわゆる民間療法で高額な食品類を山のように買いこんでいること、常に原稿書きに追われまったく余裕がないこと、妊娠初期なのに妊娠…

ゲーテ《ファウスト 第2部》

第2部は第1部から25年後、ゲーテの死の後に公表された。 第1部は、ファウストとグレートヒェンの恋を中心に現実世界でのできごとを綴っているため読みやすかったが、第2部は現実世界を離れてギリシャ神話やギリシャ史詩の世界に遊び、精霊達、美女ヘレネ…

ゲーテ《ファウスト 第1部》

「時よ止まれ。お前は美しい」 ファウストは読んだことがなかったけれど、作中の有名な言葉は知っていた。まさか、この言葉を口にした瞬間、契約によりファウストの魂が悪魔メフィストのものになることになっているとは思わなかったが。 冒頭「天空のプロロ…

オー!ファーザー (伊坂幸太郎著)

初の伊坂幸太郎小説。高校生の由紀夫に、父親が四人いるというとんでも設定。ギャンブル好きでアンダーグラウンドな知り合いもいる鷹、博識な悟、体育教師で格闘技好きの勲、女性の扱いに長けている葵。彼らは由紀夫の母親である知代に四股をかけられていた…

プラチナデータ (東野圭吾著)

プラチナデータ (幻冬舎文庫) 作者: 東野圭吾 出版社/メーカー: 幻冬舎 発売日: 2012/07/05 メディア: 文庫 購入: 3人 クリック: 45回 この商品を含むブログ (103件) を見る 人は平等ではない。 読みきったあとに浮かんだ強い感慨だ。 物語は、遺伝子情報か…

成田屋の食卓 團十郎が食べてきたもの (堀越希実子著)

この本の初版は2016年10月30日。 校了だ印刷だといろいろあるだろうから、きっとこの日付よりずっと前に希実子さんの原稿が上がっていたはず。それはいつだろう。 「実はこの本を書いたのは、麻央ちゃんに読んでほしかったから」 終わりの方に、ちょっと恥ず…