コーヒータイム -Learning Optimism-

本を読むということは、これまで自分のなかになかったものを取りこみ、育ててゆくこと。多読乱読、英語書や中国語書もときどき。

<英語読書チャレンジ 11 / 365> J. Owen “The Establishment”(邦題『エスタブリッシュメント 彼らはこうして富と権力を独占する』)

思いつきで英語の本365冊読破にチャレンジ。ページ数100以上、ジャンルはなんでもOK、最後まできちんと読み通すのがルール。期限は2025年3月20日

本書は『エスタブリッシュメント 彼らはこうして富と権力を独占する』という邦題で翻訳されている。かなり前からの積読本。

この作者の前作『チャヴ 弱者を敵視する社会』は、イギリスの現在の姿を活写し、日本のこれからの姿を読み取れる本として評判になった。

前作のブログ記事はこちら。
【おすすめ】日本の未来予想図『Chavs: the Demonization of the Working Class』 - コーヒータイム -Learning Optimism-

 

"Establishment"は、オックスフォード辞典によれば "the people in a society or a profession who have influence and power and who usually do not support change" 、すなわち権力と影響力をもちながら変革を望まない集団を意味する。日本語に置きかえるならいわゆる既得権益層にあたるだろうか。

著者は英国国教会を含むイギリス政府内部にはびこる既得権益層を強烈に批判し、「彼らは民主主義国家にあって有権者たちから自分たちの利益を守ろうとしている」「英国国教会の有力者が選挙を経ずに政権運営に参加するのはおかしい」などといったリベラル寄りの意見を展開する。

既得権益側に立ち、上流社会に入るための手段として政治家をめざす人々があまりにも多いし、政界・経済界・宗教界(英国国教会)・メディアは許しがたいほどに癒着しており、貧富格差がどんどん大きくなるイギリス社会をより良くしようとするのではなく、自分たちの既得権益を守ることが目的となっているというのが著者の主張。読んでいてかなり納得できる部分もあるけれど、どこか階級闘争をあおるような内容はなんだか共産主義系の主張がバックグラウンドにあるように思えるので、読む人を選びそう。