コーヒータイム -Learning Optimism-

本を読むということは、これまで自分のなかになかったものを取りこみ、育ててゆくこと。多読乱読、英語書や中国語書もときどき。

2020-01-01から1年間の記事一覧

アフガニスタンの人々に寄り添ったひとりの医師の死を考える〜中村哲『天、共に在り アフガニスタン三十年の闘い』

天、共に在り アフガニスタン三十年の闘い 作者:中村 哲 発売日: 2013/10/24 メディア: 単行本 現地三十年の体験を通して言えることは、私たちが己の分限を知り、誠実である限り、天の恵みと人のまごころは信頼に足るということです。 (「はじめに」より) …

イギリスでの不動産投資の現場から、ユーモアを添えて〜Rob Dix “The Complete Guide to Property Investment”

The Complete Guide to Property Investment: How to survive & thrive in the new world of buy-to-let (English Edition) 作者:Dix, Rob 発売日: 2016/01/18 メディア: Kindle版 Property Investment for Beginners (English Edition) 作者:Dix, Rob 発売…

不動産会社社長がすすめる不動産投資〜市川周治『ゼロから始める不動産投資』

不動産投資、日本編。 著者は岡山県岡山市で不動産売買・賃貸・投資を手がける不動産会社を経営している。みずからも不動産投資の経験を持ち、投資用不動産の仲介も会社業務のひとつ。ゆえに本書はある程度ポジショントークとして読むべきだと思う。 本書は…

投資の世界に入るまえに、これだけはおさえたいこと〜塩見努『これからパンローリングの投資本を読む人へ』

パンローリング社は投資関係書籍の出版に定評がある。その中でも本書は「これからパンローリング社の投資書に手を出そうとする人向けの投資書」というおもしろい位置づけ。 実際読んでみると、パンローリング社のみならず、投資を始めようとするすべての人向…

1000年前に生きた女性だけれど、現代社会にいてもまったく不思議ではない〜田辺聖子『むかし、あけぼの 小説枕草子』

田辺聖子さんの名前を知ったのは、しばらく前に源氏物語「若紫」帖の定家本がみつかったというニュースが駆け巡ったとき。Twitter上で古典愛好者が大盛りあがりをみせ、定家本発見がいかにすごいことか力説する中で、誰かが田辺聖子の名前を出し、古典入門書…

【おすすめ】パフォーマンス評価をうまく使いこなせば改善につながるが、使い方を間違えると機能不全になる〜Jerry Z. Muller 『The Tyranny of Metrics』

The Tyranny of Metrics 作者:Muller, Jerry Z. 発売日: 2018/02/06 メディア: ハードカバー 測りすぎ――なぜパフォーマンス評価は失敗するのか? 作者:ジェリー・Z・ミュラー 発売日: 2019/04/27 メディア: 単行本 【読む前と読んだあとで変わったこと】 「測…

悩み相談で一番大切なのは、相手の答えをさぐること〜幡野広志『なんで僕に聞くんだろう。』

なんで僕に聞くんだろう。 作者:幡野 広志 発売日: 2020/02/06 メディア: 単行本 もし私がだれかに悩み相談をされたら、幡野さんと同じように、相手の話を聞き、相手の答えを探ることをまずは真剣に行いたいと思った。背中を押すかどうかはその後決める。な…

女性読者は心臓を日本刀で刺されたような衝撃を受けるだろう〜チョ・ナムジュ『82年生まれ、キム・ジヨン』

韓国社会で一大ベストセラーになったこの小説を遅ればせながら読んでみた感想。 「これ、女性読者には心臓を日本刀でぶっ刺されたような衝撃を与えそうだけど、男性読者には響くんだろうか」 ストーリーは至極単純だ。主人公キム・ジヨンは夫と1歳になる娘…

アメリカ発、子どもを成功者にするために必要なこと〜Paul Tough “How Children Succeed”

How Children Succeed: Grit Curiosity and the Hidden Power of Character 作者:Paul Tough 発売日: 2012 メディア: ハードカバー 成功する子 失敗する子 ― 何が「その後の人生」を決めるのか 作者:ポール・タフ 出版社/メーカー: 英治出版 発売日: 2014/09…

どこまでがフィクションですか?と聞いてみたい、是非〜有川ひろ『イマジン?』

どこまでがフィクションですか? ーーと、真っ先に原作者の有川ひろさんに聞きたい。是非聞きたい。 内容としては、大ヒットした映画『カメラを止めるな!』に似ている。映像制作会社に勤める主人公とまわりのスタッフが経験するさまざまな撮影現場を通して…

ロシア語通訳として見聞きした世界〜米原万里『心臓に毛が生えている理由』

『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』の著者のエッセイ集。ロシア語通訳として政府高官やメディア取材に同行することがよくある著者ならではの視点から、日本との文化的違いが浮き彫りになるワンシーンを切り取った文章が多い。とくに著者の本業である通訳にか…

冷戦下のソビエト学校から〜米原万里『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』

おそらく、冷戦時代のヨーロッパの共産主義陣営、そこで暮らす共産党員たちの子どもの喜怒哀楽や運命を、同級生の視線からノンフィクションにまとめた本はほかにないのではないだろうか。 著者の米原万里氏は日本共産党の幹部を父親にもち、父親のチェコスロ…

現代日本社会でも役立つ「全体主義」の解説書〜仲正昌樹『悪と全体主義 ハンナ・アーレントから考える』

ハンナ・アーレントという名前を最初から知っていたわけではない。新型コロナウイルスの感染者が乗船していたことで横浜港に留めおかれていた豪華客船ダイヤモンド・プリンセス号、その内部感染管理がメチャクチャだとYouTubeで実名告発した岩田健太郎医師。…

英国貴族の執事たる者の矜持〜カズオ・イシグロ『日の名残り』

ノーベル文学賞を受賞したことで、日本で一躍脚光を浴びたカズオ・イシグロ氏の代表作。 一読してみたところ、日本でいう王朝平安文学のイメージに近い。優美な衣装を身にまとい、雅なあそびに興じる貴族たちに仕える使用人が、筆をふるい、華やかな日々を思…

仕事はしょせん人生の一部、日本はしょせん世界の一部〜谷本真由美『世界のどこでも生きられる!―外籠もりのススメ』

久しぶりに読書時間をとった。 Twitter上でMay_Roma(谷本真由美)をフォローしてからかなり経つが、その中でも本書のもととなったCakesの連載「世界のどこでも生きられる」はとても気に入っている。最近だとハリーとメーガンのイギリス王室脱退事件を解説し…

親との関係を冷静な目で見つめなおすことは、これからの人生で最も役立つ『不幸にする親 人生を奪われる子供』

不幸にする親 人生を奪われる子供 (講談社+α文庫) 作者: ダン・ニューハース,玉置悟 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2012/07/19 メディア: 文庫 購入: 2人 クリック: 4回 この商品を含むブログ (8件) を見る 一切の期待も、希望も、信頼ももたない。 〈母…

母娘関係に悩んでいたら読んでみよう、もしかしたら役に立てるかもしれない『毒親の棄て方: 娘のための自信回復マニュアル』

毒親の棄て方: 娘のための自信回復マニュアル 作者: スーザンフォワード,Susan Forward,羽田詩津子 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2015/10/30 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (1件) を見る Mothers Who Can't Love: A Healing Guide for Daughter…

母娘関係に悩んだときに読んでみた『となりの脅迫者』

となりの脅迫者 (フェニックスシリーズ) 作者: スーザン・フォワード,亀井よし子 出版社/メーカー: パンローリング 発売日: 2012/06/15 メディア: 単行本(ソフトカバー) クリック: 9回 この商品を含むブログ (2件) を見る 『毒になる親』の著者、スーザン…