コーヒータイム -Learning Optimism-

本を読むということは、これまで自分のなかになかったものを取りこみ、育ててゆくこと。多読乱読、英語書や中国語書もときどき。

2019-01-01から1年間の記事一覧

ごった煮な入門書『世界一わかりやすいIT業界の「しくみ」と「ながれ」』

マンガを交えながらIT業界の全体像を説明している本で、それぞれのマンガのキャラクターはとある架空のIT会社の従業員という設定だが、会社の組織図までしっかりつくるこだわりぶり。内容はごった煮気味で、IT業界の歴史あり、企業紹介あり、プロジェクトの…

なぜ中国人は不動産を買わずにはいられないのか?『三日でわかる中国経済』

三天?懂中国??(升?版)(??3版) メディア: ペーパーバック この商品を含むブログを見る つい先日、わたしがよくリンクを貼るAmazonが中国市場から撤退するかもしれないと耳にした。 中国側はこのことを歓迎しているらしい。オンラインショッピングの競争相手が…

なぜ最低賃金が安いままなのか理解するために『マンキュー入門経済学』

マンキュー入門経済学 (第2版) 作者: N.グレゴリーマンキュー,N.Gregory Mankiw,足立英之,石川城太,小川英治,地主敏樹,中馬宏之 出版社/メーカー: 東洋経済新報社 発売日: 2014/02/21 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (4件) を見る めちゃくちゃわか…

はい上がれないということ『東京貧困女子』

東京貧困女子。: 彼女たちはなぜ躓いたのか 作者: 中村淳彦 出版社/メーカー: 東洋経済新報社 発売日: 2019/04/05 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 貧困というキーワードにはむかしからそれなりに関心があった。けれどその時関心があったのは発…

現代の錬金術師『Journey to Data Scientist』

データサイエンティスト。 聞いたことがあるけれど、なにをしているのかよくわからない職業。データのスペシャリストであることはなんとなくわかる。 わたしが今仕事上ぶつかっている問題に役立つかもしれないと思い、本書を読んでみた。 本書は最先端企業で…

異国にて故郷を想う『二つの祖国を持つ女性たち』

ロサンゼルス在住の著者が、出身国や職業がバラバラな移民一世の女性たちに33の全く同じインタビューをして、その結果をまとめたもの。いわゆる移民あるある苦労話の寄せ集めではなく、客観的であることに努め、女性たちの話に感情的に入りこみすぎないよう…

【おすすめ】専門技術よ、大衆のためにあれ『プロフェッショナルの未来』

プロフェッショナルの未来 AI、IoT時代に専門家が生き残る方法 作者: リチャード・サスカインド,ダニエル・サスカインド,小林啓倫 出版社/メーカー: 朝日新聞出版 発売日: 2017/09/20 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 【読む前と読んだあとで変…

優等生が見た世界《車輪の下で》

子どものころ、この本を手に取ったことがある。小学生向けにやさしく書き直された児童文学だった。だが、少し読んだだけでやめてしまった。重苦しい雰囲気が好きになれなかった。 大人になって、最後まで読み通せるようになった。ドイツ文学ならではの抑揚の…

100語で小説を書いてみたらこうなった『100 TINY TALES』

“Drabble” という英語小説形式をご存知だろうか。100単語の短編小説である。ちょうど100単語、多すぎず少なすぎず。100単語で面白い物語を切り出すことはとても面白い挑戦である。 本書はひとりの小説家が100単語のDrabbleを100本書き下したもの。内容は実に…

無邪気な残虐性《君のためなら千回でも》

読め。 と、渋谷交差点のど真ん中にでかでかと極彩色太字で書きたくなる。読まずに死ぬのはもったいない。 同時に、読み終わった本を壁に向かって力一杯投げつけたくなる。ふざけるなこれでてめえらのしたことをわずかなりとも帳消しにしたつもりか! と絶叫…

要約はできない。全文読むべし《百年の孤独》

長い歳月がすぎて銃殺隊の前に立つはめになったとき、おそらくアウレリャーノ・ブエンディーア大佐は、父親に連れられて初めて氷を見にいった、遠い昔のあの午後を思い出したにちがいない。 冒頭から引きこまれる、コロンビアを舞台としたノーベル文学賞受賞…

あなたはこれを読んでなにを思うだろうか?『日本が世界一「貧しい」国である件について』

日本人ならぜひ一度読んでみてほしい。あなたはなにを思うだろうか。反感を抱くだろうか、それとも考えこむだろうか? この本でいう貧しさは物質的貧困ではない。精神的貧困である。 日本人は心が貧しい。これが著者の主張だ。では心が豊かとはどういうこと…

成功者の本を読んでも成功者にはなれない『キャリアポルノは人生の無駄』

ビジネス書を何冊か読むと、大体の特徴が見えてくる。 センセーショナルな題名のものはたいてい字数のわりに内容がたいしたことなく、読んだら忘れる。時にはあからさまに著者のセミナーを紹介していたりして、ますます読む気が失せる。成功者の自伝はかなり…

【おすすめ】景気サイクルを理解するための名著『Big Debt Crisis』

Big Debt Crises (English Edition) 作者: Ray Dalio 出版社/メーカー: Bridgewater 発売日: 2018/09/10 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る 【読む前と読んだあとで変わったこと】 経済ニュースを読むとき、投資について学ぶときなどに、景気サ…

父と娘の介護記録『週末介護』

岸本葉子さんは「やわらかく知的なエッセイを書くひと」といわれるけれど、大賛成である。彼女の本を最初に読んだのは、『はたらくわたし』というエッセイストの仕事日記だったが、肩肘張らない、無駄に力が入っていない、やわらかい雰囲気の文章がとても好…

まる子の人生こんなものさ『さくら日和』

昨年永眠されたさくらももこさんは、代表作『ちびまる子ちゃん』『コジコジ』のほかに、自身が「成長したまる子のお話」という位置付けでエッセイを多数発表している。 『さくら日和』は、さくらももこさんの離婚後初めて発表したエッセイ集で、冒頭に離婚報…

パライバ・トルマリンが欲しくなる『ももこの宝石物語』

さくらももこさんが去年永眠された。 『ちびまる子ちゃん』を読んだのは小学生の頃。まる子が給食の塩もみ野菜をきらって「バッタだってもうすこしいいもの食べてるよ」と言いながら残したところがかわいくてほのぼのしていた。 さくらももこさんはエッセイ…

あなたの可能性、日本で発揮できますか?『日本に殺されず幸せに生きる方法』

独裁国家でもあるまいし、日本に殺されるとはなんぞや? 首をかしげる一方、「保育園落ちた日本死ね」に代表されるように、少子化が叫ばれながら、特に共働き子育て家庭にとって日本社会は決して生きやすくはない。なんだか真綿で首が締められている気もする…

みずからの力で生き残れ『日本人の働き方の9割がヤバい件について』

本書の著者はめいろま(めいろま@May_Roma)の名前でツイッターのご意見番として名を馳せ、バックパッカー、国連職員、国際結婚などの豊富な海外体験をもとに「ここが変わらなければならないよ日本人」についてインターネットで発信し続けている。 わたしが…

食べるラー油ならぬ食べる文章『小林カツ代のお料理入門』

小林カツ代さんの本に出会ったのはかなり昔だ。最初に読んだ本のタイトルももう思い出せない。けれど「小林カツ代さんは美味しい文章を書くひと」ということはずっと記憶にあった。 なんというのか、お料理について書いたエッセイを読んでいると、まるで本当…

国家に潰されるということ『A3』

A3 上 (集英社文庫) 作者: 森達也 出版社/メーカー: 集英社 発売日: 2014/11/07 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る A3 下 (集英社文庫) 作者: 森達也 出版社/メーカー: 集英社 発売日: 2012/12/14 メディア: 文庫 購入: 1人 クリック: 1回 こ…

想像の中のアメリカ留学『英語の授業では教えてくれない自分を変える英語』

本書は15歳の中学生・峰岸陸がアメリカ留学してからハーバード・ビジネス・スクールに入るまでの物語形式で、物語を通して、日本とアメリカの文化的違いを説明しようとしている。ところどころで会話文として英語が登場しており、章末に役に立つ表現をまとめ…

イギリス人だって空気を読みまくる『イギリス英語は落とし穴だらけ』

めちゃくちゃ面白い。イギリス英語がものすごく空気や行間を読む、ある意味日本語に似た言語だとわかる。 たとえばこれ。 (英)I hear what you say. (訳)君の言うことは耳に入れておくよ。 (真の意味)一応礼儀として聞いておくけど、僕の意見は君とは…

フジテレビ買収を決めた信念『生涯投資家』

ライブドアによるフジテレビ買収がニュースになった頃、わたしはまだ経済にも投資にもあまり興味がなく、フジテレビ買収のなにが問題なのか良くわからなかった。それに絡んで村上ファンドの名前が出てきたときも、インサイダー取引があったらしいくらいの認…

ここがおかしいよ日本社会『発達障害の僕が「食える人」に変わったすごい仕事術』

発達障害の僕が「食える人」に変わった すごい仕事術 作者: 借金玉 出版社/メーカー: KADOKAWA 発売日: 2018/05/25 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (2件) を見る わたしがインターネット上で借金玉という名前を知ったのは、ニューアキンドセンターへ…

【おすすめ】IT時代の軍事技術競争に負けるとなにが起こるか『Army of None』

【読む前と読んだあとで変わったこと】 新しい視点を身につけるために読む本。日本ではあまり取り上げられることがない、軍事技術発展という視点からIT技術を見るようになった。 かのビル・ゲイツがブログでAI・機械学習関係の必読書と絶賛していると聞き、…

【おすすめ】日本の未来予想図『Chavs: the Demonization of the Working Class』

Chavs: The Demonization of the Working Class 作者: Owen Jones 出版社/メーカー: Verso 発売日: 2016/04/26 メディア: ペーパーバック この商品を含むブログを見る 【読む前と読んだあとで変わったこと】 イギリスのニュース(主にBBC)、イギリスの福祉…