コーヒータイム -Learning Optimism-

本を読むということは、これまで自分のなかになかったものを取りこみ、育ててゆくこと。多読乱読、英語書や中国語書もときどき。

読書感想

中国に生まれ育った人々の思考や行動を理解するために〜武内義雄『中国思想史』

中国思想史 (講談社学術文庫) 作者:武内義雄,浅野裕一 講談社 Amazon なぜこの本を読むことにしたか なぜわたしはこの本を読むために時間を使うのか。 ①世界の見方を根底からひっくり返す書物、 ②世界の見方の解像度をあげる書物、 ③好きだから読む書物 この…

さまざまなジャンルの小説の原型を打ち立てた傑作たち〜エドガー・アラン・ポー《全集》

アラン・ポー全集(30作品収録) 新海外文学電子大系 作者:エドガー・アラン・ポー,佐々木直次郎,森鴎外 芙蓉出版 Amazon アッシャー家の崩壊/黄金虫 (光文社古典新訳文庫) 作者:ポー 光文社 Amazon 黒猫/モルグ街の殺人 (光文社古典新訳文庫) 作者:ポー …

【おすすめ】新米獣医のあたふた奮闘記〜J. Herriot “All Creatures Great and Small”

All Creatures Great and Small (English Edition) 作者:Herriot, James Open Road Media Amazon ヘリオット先生奮戦記 上 (ハヤカワ文庫 NF 76) 作者:ジェームズ・ヘリオット 早川書房 Amazon ヘリオット先生奮戦記 下 (ハヤカワ文庫 NF 77) 作者:ジェーム…

ウイルスと人間のはるか昔からの関わり〜山内一也『新版 ウイルスと人間』

新版 ウイルスと人間 (岩波科学ライブラリー) 作者:山内 一也 岩波書店 Amazon なぜこの本を読むことにしたか なぜわたしはこの本を読むために時間を使うのか。 ①世界の見方を根底からひっくり返す書物、 ②世界の見方の解像度をあげる書物、 ③好きだから読む…

植物のひみつ〜稲垣栄洋『面白くて眠れなくなる植物学』

面白くて眠れなくなる植物学 作者:稲垣 栄洋 PHP研究所 Amazon なぜこの本を読むことにしたか なぜわたしはこの本を読むために時間を使うのか。 ①世界の見方を根底からひっくり返す書物、 ②世界の見方の解像度をあげる書物、 ③好きだから読む書物 この本は②…

人生を切り開くために〜ハリエット・アン・ジェイコブズ『ある奴隷少女に起こった出来事』

本に出会うこともまた物語だというけれど、この本を買ったのはほんとうに偶然だった。 ふだん行かないスーパーに買い物に行こうと思い立ち、スーパーの横にある個人経営の小さな書店がたまたま目に入り、なんとなくふらりと入って、なんとはなしに何か買わな…

天才女医の診断事件簿〜知念実希人『天久鷹央の推理カルテ』

地域医療を担う、病床数600以上の天医会総合病院。そこには統括診断部という変わった部門があり、所属員は部長である女医・天久鷹央と所属医・小鳥遊優のたったふたり。膨大な知識を有し、超人的な記憶能力、計算能力、知能、好奇心をそなえながら、人付き合…

21世紀の覇者は誰か〜NHKスペシャル取材班『米中ハイテク覇権のゆくえ』

なぜこの本を読むことにしたか なぜわたしはこの本を読むために時間を使うのか。 ①世界の見方を根底からひっくり返す書物、 ②世界の見方の解像度をあげる書物、 ③好きだから読む書物 この本は②。トランプ政権下のアメリカが中国に仕掛けた貿易戦争や、ファー…

ここではないどこか、いまの生活ではないなにか〜アントン・チェーホフ《チェーホフ全集》

ワーニャ伯父さん/三人姉妹 (光文社古典新訳文庫) 作者:チェーホフ 光文社 Amazon 桜の園/プロポーズ/熊 (光文社古典新訳文庫) 作者:チェーホフ 光文社 Amazon チェーホフ全集(28作品収録) 新海外文学電子大系 作者:アントン・チェーホフ,鈴木三重吉 芙…

ファイナンス基礎用語のおさらい〜山澤光太郎『ビジネスマンのためのファイナンス入門ー55のキーワードで基礎からわかる』

ビジネスマンのためのファイナンス入門―55のキーワードで基礎からわかる 作者:山沢 光太郎 東洋経済新報社 Amazon なぜこの本を読むことにしたか なぜわたしはこの本を読むために時間を使うのか。 ①世界の見方を根底からひっくり返す書物、 ②世界の見方の解…

【おすすめ】むきだしの人間の弱さ〜葉真中顕『灼熱』

灼熱 作者:葉真中 顕 新潮社 Amazon いつのことだか、世界情勢についてあれこれ雑談しているとき、ふと思い立ったことを口にした。 ーー核保有国同士では戦争は起こらない。少なくとも核戦争は絶対起こらない。なぜなら核兵器の恐ろしさを知っているから。そ…

バフェット教授の教え〜D. Pecaut & C. Wrenn “University of Berkshire Hathaway”

University of Berkshire Hathaway: 30 Years of Lessons Learned from Warren Buffett & Charlie Munger at the Annual Shareholders Meeting 作者:Pecaut, Daniel,Wrenn, Corey Pecaut and Company Amazon なぜこの本を読むことにしたか なぜわたしはこの…

金融危機を繰返さないためにできること〜M. King “The End of Alchemy”

The End of Alchemy: Money, Banking and the Future of the Global Economy 作者:King, Mervyn Little, Brown Book Group Amazon 錬金術の終わり 貨幣、銀行、世界経済の未来 作者:マーヴィン・キング 日本経済新聞出版 Amazon なぜこの本を読むことにした…

恐れを抱かずにはいられない人間の宿命〜貴志祐介『天使の囀り』

貴志祐介さんの小説を読んだのは〈リング〉シリーズから始まるホラーブームの真っ最中、『ISOLA - 13番めの人格- 』が最初。主人公の賀茂由香里は人の強い感情を読みとることができるエンパスで、長期入院中の多重人格者・森谷千尋に会う。彼女の中には十二…

救命救急の現場にみられる冷徹と人情〜浜辺祐一『救命センター カンファレンス・ノート』

著者の浜辺祐一氏は現役の墨東病院救命救急センター部長で、2021年の東京パラリンピックで組織委員会より重症者受け入れを要請された際、 「救命救急センターは本来、突発、不測の重症患者に備えるものであり、予定された行事のバックアップをするものではな…

日常生活にまぎれた悪夢がむき出しにされる瞬間〜宮部みゆき『希望荘』

宮部みゆきさんの〈杉村三郎シリーズ〉の第4作。4篇の中編小説がおさめられている。〈杉村三郎シリーズ〉を読むのはこれで2冊目で、1冊目『昨日がなければ明日もない』は別のブログ記事に書いた。 日常生活の中に立ちこめる黒雲〜宮部みゆき『昨日がなけ…

日常生活の中に立ちこめる黒雲〜宮部みゆき『昨日がなければ明日もない』

宮部みゆきさんの〈杉村三郎シリーズ〉の第5作。3篇の中編小説がおさめられていて、短いからさくさく読みやすい。 〈杉村三郎シリーズ〉を読むのは実はこれが初めて。シリーズの順番は『誰か』『名もなき毒』『ペテロの葬列』『希望荘』から、この第5作『…

家畜の安寧に甘んじるなという叫び〜魯迅《小説集・呐喊》

ノルウェー・ブック・クラブが選出した「世界最高の文学100冊」(原題:Bokkulubben World Library)の一冊。選出されているのは "Diary of a Madman and Other Stories" だが、"Diary of a Madman"(邦題《狂人日記》)は魯迅の小説集《呐喊》(中国語で「…

新型コロナに関するデマのファクトチェック〜ASIOS他『新型コロナとワクチンの「本当のこと」がわかる本』

新型コロナとワクチンの「本当のこと」がわかる本~【検証】新型コロナ デマ・陰謀論 作者:ASIOS,桑満 おさむ,名取 宏,峰 宗太郎,宮原 篤,森戸 やすみ,安川 康介 彩図社 Amazon なぜこの本を読むことにしたか なぜわたしはこの本を読むために時間を使うのか。…

「意識の流れ」という新手法〜ヴァージニア・ウルフ《ダロウェイ夫人》

Mrs Dalloway 作者:Woolf, Virginia Penguin Classics Amazon ダロウェイ夫人 (光文社古典新訳文庫) 作者:ウルフ 光文社 Amazon 〈怖い絵〉シリーズの著者である中野京子さんは、絵画をありのままに見て感じとるだけではなく、その絵画が制作された時代背景…

わたしたちは正しかったのか常に考えよう〜峰宗太郎、山中浩之『新型コロナとワクチン わたしたちは正しかったのか』

新型コロナとワクチン わたしたちは正しかったのか 作者:峰 宗太郎,山中浩之 日経BP Amazon なぜこの本を読むことにしたか なぜわたしはこの本を読むために時間を使うのか。 ①世界の見方を根底からひっくり返す書物、 ②世界の見方の解像度をあげる書物、 ③好…

ありがとう、と言いたい〜木下喬弘『みんなで知ろう!新型コロナワクチンとHPVワクチンの大切な話』

みんなで知ろう! 新型コロナワクチンとHPVワクチンの大切な話 作者:木下 喬弘 ワニブックス Amazon なぜこの本を読むことにしたか なぜわたしはこの本を読むために時間を使うのか。 ①世界の見方を根底からひっくり返す書物、 ②世界の見方の解像度をあげる書…

黒人として、友達として〜マーク・トウェイン《ハックルベリー・フィンの冒険》

The Adventures of Huckleberry Finn (English Edition) 作者:Twain, Mark Amazon ハックルベリー・フィンの冒険(上) (光文社古典新訳文庫) 作者:トウェイン 光文社 Amazon ハックルベリー・フィンの冒険(下) (光文社古典新訳文庫) 作者:トウェイン 光文…

流れゆく時からふと汲みあげた小説〜川端康成《山の音》

山の音 (角川文庫) 作者:川端 康成 KADOKAWA Amazon 川端康成は《雪国》《伊豆の踊り子》が有名だけれど、この《山の音》については知らなかった。しかし、海外での評価が高く、ノルウェー・ブック・クラブ発表の「史上最高の文学100」に選出されたことを知…

真の読者にはとどかない寓話〜ジョージ・オーウェル《動物牧場》

動物農場 (角川文庫) 作者:ジョージ・オーウェル,高畠 文夫 KADOKAWA Amazon 中篇《動物農場》 本作は《1984》の著者ジョージ・オーウェルのもうひとつの代表作。《1984》の読書感想はこちら。 身震いするほどの不快感〜ジョージ・オーウェル《1984》 - コー…

身震いするほどの不快感〜ジョージ・オーウェル《1984》

1984 (角川文庫) 作者:ジョージ・オーウェル,田内 志文 KADOKAWA Amazon この小説はどこまで想像力による創作物で、どこからが歴史上の事実をなぞらえているのだろう? たぶん世界でもっとも有名なディストピア小説である《1984》を読みつづけてしばらくたっ…

仮想現実をめぐる競争〜白辺陽『メタバース 完全初心者への徹底解説』

メタバース 完全初心者への徹底解説: 2021年 仮想世界を巡る百花繚乱時代 作者:白辺 陽 Amazon なぜこの本を読むことにしたか なぜわたしはこの本を読むために時間を使うのか。 ①世界の見方を根底からひっくり返す書物、 ②世界の見方の解像度をあげる書物、 …

古代中国にタイムスリップした主人公は現地でサバイバルする〜柿沼陽平『古代中国の24時間』

美味しいものはとっておいて後で食べる主義である。この本は読む前から絶対面白いとわかっていたから、ゆっくり読む時間ができるまで楽しみにとっておいた。 古代中国の24時間 秦漢時代の衣食住から性愛まで (中公新書) 作者:柿沼陽平 中央公論新社 Amazon …

食談とその深遠なる意図〜開高健『最後の晩餐』

最後の晩餐 (文春文庫) 作者:開高 健 文藝春秋 Amazon 開高健といえば、朝日新聞社臨時特派員としてベトナム戦争を取材したときの凄絶な体験に基づくノンフィクションと小説が有名だけれど、私はそのうち読みたいと思いつつ、残念ながらまだ読んだことがない…

護ることの重み〜中山七里『護られなかった者たちへ』

……言葉もない。 読み始めれば止まらず、ほぼ徹夜で読み終えた。 私はふだんあまりミステリーを読まないのだが、これは刺さった。葉真中顕『ロスト・ケア』『絶叫』と同系統の社会派ミステリー小説。テーマは生活保護受給者たちの声なき叫び。 あらすじを簡単…